カーゴニュース 2026年9月8日 第5465号
「営業倉庫」の意義に注目! オペレーションに宿る“魂”
倉庫の建て替えに高い壁が立ちはだかっている。用地不足や建築費の高騰により、投資回収期間が長期化。コストの上昇に保管料・作業料の価格転嫁が追い付かず、建て替えたくても採算が合わず、投資を先送りせざるを得ないケースが増えている。上場企業に対しROE(自己資本利益率)・ROIC(投下資本利益率)を重視する資本効率経営の圧力が強まっていることや、足元での金利の上昇傾向も投資の制約となる。
建築費は10年前と比べ1・8倍、価格転嫁追い付かず
倉庫の建て替えが進まない大きな要因が、建築費の高騰だ。建設専門のポータルサイト「アーキブック」よると、倉庫の建築費は2022年に坪あたり46・3万円だったのが、25年には70・3万円と過去最高で、10年前の約1・8倍。国土交通省が発表している、着工建築物用途別・使途別床面積の推移(民間建築主)を見ると、営業倉庫も含まれる倉庫の着工棟数・床面積は25年には約902万㎡と4年連続減少し、ピークだった21年の約1325万㎡の7割となった。
投資回収期間が長期化していることも投資に踏み切れない要因とされる。建設物価指数は右肩上がりの上昇を続けるのに対し、保管料の上昇ペースは鈍い。帝国データバンクの調査によると、26年7月時点の「運輸・倉庫」の価格転嫁率は28・4%と3割以下の水準で、全産業平均と比べても低い。ある倉庫経営者は今後の倉庫への投資について「建築費は約2倍に上がっているのに、保管料・作業料は5%、10%しか上がっていないようでは話にならない」と話す。
さらに、株式市場から資本効率経営への圧力が強まっていることも、倉庫の建て替えの制約になりつつある。“本業”に不可欠な資産であっても、投資額が大きく、回収期間が長期化している倉庫への投資判断のハードルが上がっている。建築費の高騰による初期投資の増加に加え、人手不足による人件費の上昇も利益を押し下げかねない。物流を支える社会インフラでありながら、資本効率の観点からは、倉庫への投資に慎重にならざるを得ないというジレンマが生まれている。
経年化した倉庫、7割が
「そのまま使い続ける」
日本倉庫協会が昨年実施した設備投資アンケートで、倉庫の経年状況を調べたところ、築30年以上の割合は港頭倉庫で65%、港頭倉庫以外は55%だった。経年化した倉庫の今後については、「そのまま使い続ける」が70%と最多。20%が「改修を実施」、10%が「建て替えを行う」と回答した。建て替えを行う予定のない9割のなかには、「改修の必要がない」も約2割含まれているが、建て替えられない理由としては「建築費の高騰」、「代替用地の確保が困難」が多く挙げられた。
建て替えが進まない理由のひとつとされるのが、用地不足だ。倉庫の経年状況からも見てとれるように、とくに深刻なのが昭和60年代に建てられた倉庫の多い港頭地区。倉庫を建て替えるにしても、代替地や建て替え中の貨物の退避スペースの確保が難しく、日倉協では、港湾管理者や自治体による用地整備の必要性を訴える。一方で、経年化した倉庫を「そのまま使い続ける」という判断には、営業倉庫には地域に根差した施設が多く現状でも常に一定の需要が見込まれることから、巨額の投資をして建て替えるというインセンティブが働きにくいことも反映されているようだ。
倉庫の「新設」中心の支援、
「改修」でニーズも
なお、営業倉庫は、元来、堅牢な建物として建築されていることから、減価償却期間を経過した後も、必ずしもその機能が損なわれるものではない。物流効率化法の税制特例では、普通倉庫の耐用年数は概ね「31年」であるがアンケートにおいては、倉庫建設時の使用期間は平均で45年程度使用されることが想定されている。とはいえ、アンケートでも経年化した倉庫について、40%が修繕費の発生や、倉庫内レイアウトがしづらいなどのデメリットを感じていたという事実もある。
40年前に建てられた倉庫は修繕等を行うことにより業務に支障なく使えることもあれば、マテハンなど自動化機器の導入が想定されていないため、生産性向上の制約となっていることもある。倉庫への国の支援策は、物流効率化法の税制特例のほかに、地域未来投資促進税制、中小企業経営強化税制、中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金などもあるが、いずれも「新設」が対象。倉庫の改修は物流の高度化・生産性向上にも深く関わっており、日倉協では、DX機器の導入に際して必要な倉庫の「改修」に対する支援を要望する声も多い。また、近年は熱中症対策として倉庫の内壁等に断熱材を施すことへの支援を日倉協では要望している。
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