カーゴニュース 2026年9月8日 第5465号
春を待つ商人犬を愛しけれ 普羅
元日本経済新聞社のH君からメールが入った。H君は学習院の田島義博ゼミの出身、僕は流通経済研究所で田島先生の教えを受けたいわば従兄弟子である。「ぜひ、会ってもらいたい人がいる」とH君は言う。ある猛暑の日、霞が関の「記者クラブ」でランチミーティングをした。元日本経済新聞社の記者で、ずっと東南アジアへ特派員として赴任し、そこでインドシナ半島国家の専門記者として活躍した人で「小牧利寿さん」という。年齢は70歳代後半。現在は「ヌサンタラ総合研究所」という会社の社長さんである。ヌサンタラはインドネシア語で「友好」という意味らしいが、とくにインドネシアには10年以上も住み、スカルノに始まるこれまでの歴代大統領や政府要人と親しい関係を持った(ジャーナリストと政治家の関係は微妙である。昨年亡くなった読売新聞のナベツネと政治家の関係を見るとよい)。この関係は今でも生きており、定年退職した後、「日本とインドネシアの懸け橋となる」ということで現在の会社を作った。そこで公式か非公式はわからないがインドネシア政府の依頼で、現在の日本におけるインドネシア人労働力について調査をしているという。
小牧さんに言わせると「インドネシアは世界一の親日国だ」そうだ。国民気質は穏やかで、結構勤勉で民度も高いという。インドネシアは世界最大のイスラム国家(ムスリムが90%か)であるが、中東とは違ってかなりルーズなもの(アジア的イスラム)らしい。ただ、政治的な面から見ていくとインドシナ半島国家は常にアメリカと中国との関係で綱渡りをしている。最近、インドネシアは中国との間で一種の軍事協定のようなものを結んだり、日本の新幹線を導入するはずだったが急に中国のものを導入し、今では経営が難しくなって多大な債務を背負ったりとよくわからないが、それは東南アジアの実情だろう。どうも、これらの国はアメリカ、中国、インド、日本との難しい関係があり、「サーカス・オフェンス」をせざるを得ないのが現実である。そういうなかで経済発展を推し進めている。ただ、国民感情としては東南アジア全体がそうだが「中国嫌い」で「日本好き」だそうだ。先の大戦時、日本軍はインドシナ半島に進出した。高齢層は別として中間層を構成する人々の大半は客観的に歴史をとらえ、日本軍がやってきた期間は短く、結果として400年間、植民地として支配をしてきたオランダを追い出し、戦後戻っては来ても、もう独立を阻止する力はなかった、ということで日本のお陰であると思っているようであり、政治的感覚とは異なる。
さて、小牧さんが聞きたいというのは物流関係、特にドライバーを日本に送りたいがその実情についてどう考えたらよいだろうか、ということである。すでに日本の流通物流でいうと外国人労働力は深く入り込んでいるがドライバーはどうなのだろうか。日本企業がインドネシアに自動車学校を作り、日本でのドライバー養成に入っているそうだが、小牧さんに言わせるとドライバーに一番向いているのはインドネシア人だそうだ。穏やかな国民性で、興奮することが少ないのだとか。多分、運転技量からいうと日本人並みか、それ以上だそうだ。もっとも、ジャカルタなどでの運転は結構いい加減らしいが。インドネシア人も日本でのドライバーを望むものは多いという。ただ、問題は日本でドライバーをした場合、事故が起こったときにマスコミ(特に社会部)の対応が心配だとジャーナリストらしいことを言う。事故率は多分、日本人ドライバーより低いと思われるが、大きく新聞・テレビで大事件として取り上げられるに違いないという心配がある。小牧さんから資料もいただいたが、僕はもう隠居だから、それを未練がましくいまだ現役だというH君に渡した。僕はトラック協会や物流企業の人事担当者を数人上げて、「会ってごらんなさい」と言って記者クラブを後にした。帰宅して昼寝をするつもりだった。
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