カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号

新春特別インタビュー
目指すべき最終ゴールは 持続的な物流の発展
日本物流団体連合会 会長 真貝康一 氏

CLO制度は大きな物流革新を促す可能性がある

2025/01/06 17:00
インタビュー 団体

新モーダルシフトはモーダルコンビネーションそのもの

 

 ――国の取り組みという点では、国交省が昨秋に「新たなモーダルシフト」として、これまでの内航海運や貨物鉄道に加えて、ダブル連結トラックや航空輸送をシフトの対象に加える考えを示しました。その狙いや意味するところを真貝会長はどのように考えていらっしゃいますか。

 

 真貝 結論を先に申し上げれば、物流の革新に資する真っ当な考えだと捉えています。物流の持続可能性を追求していけば、すべての輸送モードが持つ輸送力を総動員していくという考え方に当然のように帰結するはずです。荷物にはそれぞれ特性や性質に違いがあり、その性質に見合った最適な輸送モードがあります。内航や鉄道に見合った荷物もあれば、リードタイムや輸送距離によっては航空やダブル連結トラックで運ばれるべき荷物もあります。そうした観点に立って、輸送モード間で荷物を奪い合うというよりも、輸送モード全体の中で持続可能な物流体系をつくり上げていくという考え方が重要です。

 

 航空輸送で言えば、昼間の旅客定期便の貨物室スペースをフル活用できていないのはいかにももったいないと思います。航空輸送ではSAF(持続可能な航空燃料)によるCO2排出量削減の取り組みも進んでいます。人流も含めた交通インフラ全体の輸送力を活用して物流を維持していくという考え方や取り組みも大事になると考えています。

 

 ――全体最適の観点から輸送モードの分担の最適解を目指すという考えは、真貝会長が常々提唱している「モーダルコンビネーション」そのものでもあります。

 

 真貝 これからはモード縦割り的な部分最適の考え方から脱して、いかに全体最適を追求していけるかが重要です。モーダルコンビネーションはモーダルシフトを否定するものではありません。モーダルコンビネーションを追求していけば、結果的にモーダルシフトの動きにつながることも当然あるわけです。

 

既存インフラをいかに活かしていくかが課題

 

 ――とはいえ、モーダルシフトの観点では内航や鉄道へのシフトが引き続き重要なテーマでもあります。国は一昨年に「今後10年程度で内航と鉄道の輸送量や輸送分担率を倍増させる」という目標を掲げましたが、その実現のためにはインフラ整備の強化が不可欠になります。

 

 真貝 社会インフラである物流インフラの将来像について、持続可能性を維持する観点からグランドデザインを描いていく必要性を感じています。これまでの国や地方自治体のインフラ整備は、モードごとの部分最適が優先され、やや硬直化している面が見受けられます。また、予算面でも新規のインフラ整備に重点配分される傾向があります。全体最適を志向する中で、柔軟は発送転換があってもいいと思います。

 

 ――既存インフラの維持・更新は、物流にとどまらず、国全体の大きな課題でもあります。

 

 真貝 高度成長期の1950年代につくられたインフラは、70年が経過して老朽化が目立っています。DXやGXはもちろん重要なのですが、既存インフラをどのように活かしていくかという視点は持続可能性を維持する上で非常に重要であり、その部分に対する施策面での対応は不可欠です。

 

 私はJR貨物に入社する以前は、長らく銀行に勤めており、数多くのインフラへの融資を担当しましたが、インフラ投資の収支は通常30~40年期間であり、その時間軸の中でキャッシュフローを計算していました。しかし、その期間が終了した後もインフラ維持にはコストがかかりますし、建て替えする場合には莫大な撤去費が発生します。当時はそこまで考えが至りませんでしたが、物流の持続可能性を考えていく際には、そうした点を含めた計画づくりが必要になると思います。

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