カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
トラックドライバーへの時間外労働上限規制が適用され、まもなく1年が経過する。国際物流のラストワンマイルを担う海上コンテナドレージでは大きな混乱は見られず、一般のトラックに比べ運賃値上げの遅れも指摘される。一見、静かに始まったかに思われる海コンドレージの「2024年問題」だが、運行稼働台数の減少やドライバーの高齢化の進行により、将来的に車両の確保が困難になる不安はぬぐえない。
「標準的運賃」割増規定に基づく値上げは苦戦?
「規制が始まって以降、忙しくなった。新しい仕事を取る余裕がない」――。海コン業者からはこんな声が聞かれる。輸出入の荷動きに活気がないため、数年前に起きたような「ドレージがまったく取れない」というほどのひっ迫感はないが、「ドレージを確保しにくい」状況は各所で発生している。
国土交通省が告示した「標準的運賃」では海上コンテナ車両について「トレーラ(20tクラス)の4割増し」という「割増運賃」が定められているが、ドレージの値上げは一般のトラックに比べて進んでいない。海コン業者は多くの場合、海貨業者を経由して仕事を受注しており、元請けである海貨業者が真荷主への値上げ交渉に苦慮しているとも言われる。
海コン業者にとって頭の痛い問題が、コンテナターミナルゲート前の渋滞だ。一時期と比べると京浜港のゲート混雑は改善しているものの、特定のターミナルでは日によって未だに3~4時間、ひどい時には6~7時間の待機が発生。渋滞にはまると時間外労働上限規制や改善基準告示に抵触してしまう。
国交省では、コンテナターミナルの待機時間についても「荷待ち」に該当し、「待機料」が適用されるとともに、待機時間を発生させているターミナルは「トラック・物流Gメン」の「是正指導の対象」となるとの見解を示している。ただ、ターミナルでの待機に対する海コン業者の待機料の収受は進んでいない。
10年前と比べ1600台減少、60歳台が2割
将来的に海コンドレージの確保が困難になることが予測される調査結果がある。東京都トラック協会海上コンテナ専門部会が毎年行っている調査によると、2024年3月時点の運行稼働台数は3万2698台で、調査を開始した11年と比較し、約6480台が減少し、10年前の14年と比べても約1600台が減っていた。
ドライバーの高齢化も深刻化している。関東トラック協会海上コンテナ部会の調査によると、23年度時点で調査対象店社に在籍する海コンドライバーの平均年齢は52・6歳となり、年々高齢化が進行。60歳台が2割を占めており、最高齢は78歳で70歳以上のドライバーの割合は年々上昇している。
地方港、インランドデポ活用、モーダルシフトも
こうした中、「2024年問題」対応や将来的なドレージ不足を見据えた物流網の再構築も始まっている。ドレージ距離を短くするために京浜港や阪神港から、最寄りの地方港での荷揚げに切り替えたり、インランドデポを中継拠点とし、長距離ドレージを「2分割」して運ぶ取り組みもみられる。
大手物流会社は海コンの「モーダルシフト」の提案にも力を入れ始めた。日本通運では京浜港で荷揚げされた海上コンテナを内航輸送に切り替えて運ぶサービスを開始。郵船ロジスティクスも海コンの国内輸送で内航船を利用したサービスを始めるなど、陸送依存度を減らす動きも出てきている。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。