カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
北米線では他社の輸送力を柔軟に活用
――来期の国際貨物事業全体の方針について教えてください。
木藤 今期第3四半期(24年4~12月)までの国際貨物事業は、収入で前年同期比23・3%増、貨物重量で22・1%増と好調に推移しています。来期はこうした流れをさらに強化すべく、様々な施策を打っていきます。
まず、フレイターが3機体制になることで、東アジアでの旺盛な需要を着実に取り込んでいきます。また、欧米の長距離路線では、コードシェアやチャーターなど他社の輸送力を柔軟に活用することで当社として提供できるスペース供給力を高めていく方針です。今期はこの部分における供給力の整備が追い付いていなかったという反省があるので、航空会社と早めに交渉することで安定的な関係構築に向けて動いているところです。とくに最も需要が多い北米線については、もっとキャパシティがあれば販売量を増やせたとの思いがあるので、着実に手を打っていくことで取扱重量と収入を増やしていきたいと考えています。
――北米線での供給力アップがさらなる事業拡大のカギを握っているわけですね。
木藤 やはり航空貨物路線の中で圧倒的に需要があるのがアジア発北米向けの路線であり、ここで十分なサービスをそろえることが事業戦略として肝要です。当社には旅客便はありますが、背の高い半導体製造装置などは搭載できませんし、CAO(CARGO AIRCRAFT ONLY)と呼ばれるフレイターだけに搭載が認められる危険品もあります。つまり、このレーンでフレイターを含めたスペースを提供することにより、お客様からお声がけをいただける機会を増やし、その結果周辺にある商機にもアプローチすることができると考えています。
戦略商品のサービス拡充を推進
――収入を増やしていくためには、単価を維持・拡大するため取り組みも必要です。
木藤 運賃単価はマーケットの状況に左右される要素が強いわけですが、そうした中でも私たちが「戦略品目」と呼んでいる高付加価値貨物の比率を増やすことで、単価を維持していく方針です。具体的には医薬品、日本発の生鮮品、エクスプレス貨物、ケミカル(危険品)などを主なターゲットにしていきます。こうした貨物は高い安全性や輸送品質が求められるため、地上業務を含めたJAL CARGOとしての高いサービス品質という強みがより活かせる領域だと考えています。ケミカルについては成田国際空港が主催するコミュニティに参画し、今年2月に「CEIV Lithium Batteries」の認証を取得しました。さらに耐火性器材の導入も推進していきます。
――どのあたりにJAL CARGOとして強みがあるとお考えでしょうか。
木藤 日本発着については、成田にJALカーゴサービスとJALカーゴハンドリング、関空に日航関西エアカーゴ・システムといったグループ直営の上屋会社やハンドリング会社があることで、お客様の様々な要望に対応したクオリティの高いオペレーションを提供することができます。また、当社が乗り入れしているすべての海外拠点においても、業務委託先を管理・監督する自社社員を配置しているため、お客様からの問い合わせなどにタイムリーにお応えできる体制が整っています。
――戦略商品のひとつである医薬品については、温度管理機能を備えた倉庫機能も備えています。
木藤 22年10月に成田空港内で「JAL MEDI PORT」、23年2月に関西空港に「Pharma5」、同念6月に「JALKASロジスティクスセンターりんくう」という医薬品専用の定温庫を開設しました。また、23年4月には成田でIATAの国際品質認証である「CEIV Pharma」を取得したほか、成田、羽田、関空をつなぐトラック輸送についてもGDP(医薬品適正流通基準)に準拠した体制を構築しています。それによって、陸上輸送から倉庫保管、航空輸送に至る工程で国際基準に則ったサービスを提供することができるようになりました。そうしたこともあり、医薬品の取扱量は順調に増えています。
――日本発の生鮮品の輸出促進では、JALカーゴサービスが成田市場において輸出植物検疫の登録検査機関に認定されました。物流企業では初の認定と聞いています。
木藤 イチゴなどの果物や生野菜を輸出する場合、これまでは植物検疫官が検疫検査に訪れるのを待っていたため、検査を受けるまでの待機時間が発生していました。しかし今回、JALカーゴサービスが認定を受けたことで、有資格社員による柔軟な検査対応が可能になり、よりスピーディーな航空輸送が実現できるようになりました。これからも高速・高鮮度な輸送サービスの提供を通じて、日本の優れた農水産物の輸出拡大に寄与していきたいと考えています。
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