カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号

インタビュー
フレイター事業好調、来期3機体制に増強
日本航空 執行役員貨物郵便本部長
木藤祐一郎 氏

欧米線での供給力アップにも注力

2025/03/12 17:00
インタビュー 航空 グローバル物流
地上業務での高い品質が強み

成田の貨物施設での自動化を検討

 

 ――「2024年問題」もあり、成田・貨物地区での機能向上も大きなテーマです。

 

 木藤 成田・貨物地区内での当社の施設はいちばん古く、第1貨物ビルは築40年以上が経過しています。NAA(成田空港会社)は「新しい成田空港」構想で新貨物地区を整備する方針を打ち出していますが、2030年代という供用時期までまだ10年程度あり、それまで何もしないわけにはいきません。現状の施設の中で生産性向上や自動化を可能な限り進めていきたいと考えており、そのための投資も計画しています。現在、実証実験による自動機器の効果検証に取り組んでいるところです。

 

 ただ、大きな課題となっているのが、グループの上屋施設が貨物地区内の6ヵ所に分散していることです。今後、自動化設備を導入していく場合でも、拠点が分かれていると効果が限定的になりますし、人手不足が進む中で6ヵ所すべてに人員を配置することは非効率です。この点については、NAAとも相談しなから少しでも集約できる方向で考えていきたいと思います。

 

 また、貨物地区全体でトラックによる荷待ちが常態化しているため、「2024年問題」への対応という観点からも、さらなる工夫が必要です。NAAも昨年から「トラックドックマネジメントシステム」を導入していますが、当社としても上屋から出される貨物をスムーズにトラックに積載できる仕組みなどを検討していきたいと考えています。

 

 ――羽田空港に発着する国際航空貨物も増えています。

 

 木藤 近年、羽田についても主要な国際路線が整備され、貨物量が増えています。しかし、長らく貨物の中心が成田だったこともあり、羽田に到着した貨物を成田までトラックで転送し、成田で引き渡す場合が多くなっています。これは「2024年問題」の観点からも非効率ですし、CO2削減という面からもサステナブルではありません。トランジット貨物などを除き、羽田だけで完結できるよう、東京国際エアカーゴターミナル(TIACT)と連携し検討していきたいと考えています。

 

ヤマトグループとのシナジーにも期待

 

 ――国内では、今期からグループのスプリング・ジャパンがヤマトホールディングスのフレイター運航を受託しました。

 

 木藤 4月からスタートしましたが、上期は安定運航に向けた慣熟期間と位置づけ、双方でスムーズなオペレーションの確立に取り組んできました。ヤマトさんもこれまでフォワーダーという立場から航空貨物に関わってきましたが、今回の取り組みは初めての経験であり、運用に軌道に乗せるには一定の時間が必要だったと思います。下期以降、うまく回り始めましたので、来期はさらにパフォーマンスを上げていくことができると思います。

 

 ――JALグループとして、ヤマトHDと組むことでどのようなシナジーが期待できるでしょうか。

 

 木藤 ヤマトさんの強みは、何と言っても全国各地の営業所で地元との強いつながりを持っていることです。当社の国内貨物事業は、どうしても代理店との付き合いが中心で、どのような商材が航空輸送としての可能性を持っているのか、詳細なマーケットニーズをつかみ切れていない部分があります。ヤマトさんとフレイター事業を通じた連携を深めることによって、新たなヒット商品を発掘できる可能性が高まったことは大きなシナジーにつながると感じています。例えば、ヤマトさんがフレイター事業で隠れた地元産品の国内販路拡大に貢献し、その次の段階として当社が国際線を使ってアジアなどにさらに販路を広げることも可能です。

 

 ――昨年秋に国土交通省が打ち出した「新モーダルシフト」政策では、トラック輸送からのシフト先のひとつとして国内航空輸送も挙げられました。とくに昼間帯のベリースペースを有効活用すべきとの声があります。

 

 木藤 当社も「新モーダルシフト」には大きな期待を持っています。トラックから国内航空にシフトする際に、最大のネックとなるのは保安検査です。そこで、この業務を当社が代行するためのトライアルを昨年秋に実施しました。大事なことは、まずはトラック事業者や荷主に航空輸送という手段があることを認知してもらうことです。現状では、航空輸送が選択肢に入っていない荷主が大半です。運賃面でも、スペースに余裕がある昼間便についてはかなり弾力的な対応が可能であり、スピード輸送という付加価値を含め、魅力的なご提案ができると考えています。まずは、国内航空輸送をもっと身近に感じてもらえる取り組みに力を入れていきたいと考えています。

                 

 

木藤 祐一郎(きとう・ゆういちろう)1989年日本航空入社。貨物本部に所属。2012年上場準備室長、ジャルカード取締役、15年財務部部長などを経て、23年4月から現職。東京大学卒、57歳

 

成田・貨物地区の第1貨物ビル
1 2 3
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。