カーゴニュース 2026年3月26日 第5422号
今月14日から新たなダイヤがスタートしたJR貨物(本社・東京都港区、犬飼新社長)。今回のダイヤ改正では、大動脈である東京→大阪間で新たなコンテナ列車を新設するなど、ブロックトレイン(専用列車)を除いた輸送力としては、2009年以来、17年ぶりとなる増強を実現した。ダイヤは鉄道会社にとって唯一無二の「商品」。多くの制約要因をくぐり抜けながら、魅力ある商品をつくり上げる――そのプロセスの裏側にある知恵と工夫を紐解いてみた。
「ニーズに何とか応えたい」が出発点
JR貨物の鉄道コンテナ輸送量は、「2024年問題」に象徴されるトラックドライバー不足の追い風を受けながら、着実な増加基調を続けている。そのため、一部の区間では既存列車の輸送枠に余力がなく、荷主や運送事業者からの依頼を断るケースが徐々に増えてきた。そうした状態を何とか改善したいというのが、今回のダイヤ改正の出発点だったという。鉄道ロジスティクス本部営業部の酒井洋一担当部長は「ニーズに応え切れない状況が長く続いてきたが、今回の改正では列車の新設・増発を積極的に考えていく方向に大きく舵を切った」と振り返る。
鉄道ロジスティクス本部運輸部輸送グループの皆川治グループリーダーも「ここ数年はブロックトレインの新設が中心となっていたが、今回は一般貨物を対象に鉄道利用の〝間口〟を広げていくことを基本コンセプトに据えた」と説明する。
とはいえ、貨物列車を新設・増発することはそう簡単なことではない。JR貨物は、旅客各社が保有する線路を借りて営業運転を行う第二種鉄道の立場にあり、新たな列車を走らせるにも、旅客列車の隙間を縫うようにダイヤを設定する必要がある。また、機関車や貨車などの機材繰りや貨物駅のキャパシティ、運転士や作業員の配置など多くの要素が複雑に絡み、どれひとつ欠けても実現することはできない。さらには貨物駅ごとに利用運送事業者の集配戦力を考慮する必要もある。「輸送力を増やしたいという営業サイドの思いと、コスト面を含めた運用効率という両輪のバランスをとりながら〝答え〟を探すことが難しい」(酒井氏)、「多くの制約要因のなかで考えていかなければならず、どうしてもスクラップ&ビルド的な要素は残ってしまう」(皆川氏)と吐露する。
「蜃気楼ダイヤ」で東京→大阪間を増強
そうしたなかにあって、今回のダイヤ改正では、1日あたりのコンテナ輸送力を改正前の2万650個(12ftコンテナ換算)から約2%増となる2万1045個に増やすことに成功した。
最大の目玉となったのが、大動脈である東京→大阪間での輸送力増強だ。酒井氏は「同区間はここ数年、平日積載率が9割を超える日が増えるなど、新たな貨物を増やすことがほとんどできない状態だった。お客様や利用運送事業者がまず最初に利用したいと考えるメイン区間でこうした状況が続くことは、将来の発展のためにも良くないという強い思いがあった」と強調する。
しかし、旅客列車が頻繁に行き交い、ダイヤ密度がもっとも高い同区間で輸送力を増やすことは容易ではない。そこで編み出したのが、観光列車などで使われる「蜃気楼ダイヤ」のアイデアを借りることだった。蜃気楼ダイヤとは1編成の列車を折り返しで複数回往復させる列車運用の愛称で、同じ方向から同じ列車が何度も現れる様子から名付けられた。
今回の改正では、まず、東京→福岡間を運行する「5073」列車を、東京→大阪間の「5063」列車に改編。さらに、大阪から名古屋まで引き返し、そこから福岡まで運行するダイヤに組み換えた。つまり、名古屋~大阪間を1日に2回通過することが「蜃気楼」だというわけだ。この改編により、東京を19時14分に出発し、大阪に早朝5時46分に到着するという利便性の高いダイヤを新設するとともに、東京→大阪間の輸送力を改正前の1日340個から135個増の475個に増強した。
さらに名古屋→福岡間の列車では、中京地区から出荷される自動車部品の旺盛な需要を取り込むことが可能になった。
皆川氏は「このようなダイヤの組み方は、おそらくJR貨物として初めてのこと。大阪から名古屋までの引き返しがムダのように見えるが、それ以上に得られる効果が大きい」と語る。
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