カーゴニュース 2026年3月26日 第5422号

インタビュー
安全の再確立に向けた取り組みを強化していく
JR貨物労組 中央執行委員長
村上貴史 氏

2026/03/26 06:00
全文公開記事 貨物鉄道・通運 人材・働き方・賃金 インタビュー

 「2024年問題」の追い風を受けながらも、相次ぐ輸送障害などで輸送量を伸ばし切れない現状にあるJR貨物。その足元には、鉄道事業を営むうえでの基盤となる安全体制の再強化など様々な課題が横たわる。日本貨物鉄道労働組合(JR貨物労組)の中央執行委員長である村上貴史氏に、JR貨物を巡る諸課題について、労働組合の立場からの考えを聞いた。

(インタビュアー/西村旦)

 

JR貨物の経営状況は非常に厳しい

 

 ――JR貨物の足元の経営状況についてどのように見ていらっしゃいますか。

 

 村上 JR貨物の2025年度の事業計画は、3ヵ年の中期経営計画の2年目となるものです。その中期経営計画では「全国のグループ社員の力を結集して、安全を基盤とした物流のプロとして『なくてはならない存在』へと進化し、鉄道×物流の総合力によって日本を、地域を、社会を支えていきます」を指針として掲げ、これに基づいて5つの基本方針が示されています。

 

 これらを前提として現在のJR貨物の経営状況を見ると、非常に厳しい状況にあると受け止めています。例えば、JR貨物単体での鉄道事業部門の営業収益は年初計画で1539億円としていましたが、第3四半期業績を踏まえた1月期改定計画では、1483億円と56億円の下方修正となっています。また、経常利益についても当初の55億円から5億円まで引き下げられています。主力であるコンテナ輸送の品目別輸送量を見ると、異常気象や天候不順の影響から農産品・青果物が不作となり、輸送量が大幅に減少しているほか、経済の先行き不透明感などを反映して、化学工業品や食料工業品などの主要品目も低調に推移しています。年度累計では対前年比でなんとかプラスを維持しているものの、とくに下期に入って厳しい状況が続いています。

 

 さらに、1月20日から2月10日の約20日間にかけて、北日本の広範囲で大雪による大規模な輸送障害が発生しました。JR貨物発足以来、最大の雪害となるもので、1月単月だけでも10億円を超える災害減収が見込まれるなど、収入悪化に追い打ちをかけている状況にあります。

 とはいえ、悲観ばかりしていても何も始まりませんので、経営陣には年度末需要に対応しながら、修正計画を達成できるよう責任を持って経営に当たっていただきたいと考えています。

 

 ――「2024年問題」の追い風が貨物鉄道輸送に吹くことが期待されていましたが…。

 

 村上 率直にもの足りなさを感じています。会社側も「24年問題」のフォローの風は落ち着きつつあるとの説明でした。トラックドライバー不足という構造的な課題は引き続きあるものの、その影響が鉄道に直接的に反映したかと言うと、決してそうではなく、船舶輸送などにも流れていると理解しています。

 

 ただ、追い風がまったくないということではなく、31‌ftコンテナなど大型コンテナへのシフトは、幅広い業種で広がっていることも事実です。その意味では、鉄道貨物輸送に対する認知は徐々にではあるものの広がっていると受け止めていますが、それが大きなうねりになるまでには至っていないのが現状だと思います。

 

 ――現中計の主要施策のひとつである総合物流事業の拡大では、昨年4月にJR貨物ロジ・ソリューションズが誕生するなど新たな動きが出ています。

 

 村上 まだスタートしたばかりということもあり、大きな動きには至っていませんが、私自身は大きな期待を持っています。JR貨物ロジ・ソリューションズが元請けの立場から鉄道だけでなく物流全体をコーディネートしていくという、これまでになかった発想による思い切った施策だと思います。これがさらに大きな取り組みにつながっていってほしいと願っています。

 

安全の再確立に向け〝常識〟を疑う姿勢も

 

 ――鉄道事業の根幹をなす安全問題についてうかがいます。このところ安全に支障する事案が増えており、先般も残念ながら大きな事故が発生してしまいました。

 

 村上 1月27日に南長岡駅構内で貨車の入換作業中の組合員が、何らかの理由で貨車から転落・触車して、両足を切断するという痛ましい事故が起きてしまいました。ご本人とご家族に対し、あらためてお詫びを申し上げたいと思います。

 

 この間、安全に対する取り組みに力を入れてきたつもりでしたが、結果として不十分であったことを真摯に反省し、あらためて働く者の立場から原因究明と再発防止に向けた取り組みを行っていく所存です。ご本人は年齢が21歳と若く、組合としても回復と今後の生活に対して全力で支援していきます。

 

 なぜこのような事故が発生したかということですが、親御様からは、これだけ技術が発達した現代において、はたして貨車や機関車に人が添乗する必要があるのかという率直な疑問を投げかけられました。私たちは貨物鉄道事業に長く従事してきた者として、入換作業で人が添乗するのは当たり前だと考えてきましたが、一般の感覚からすると理解できないと映ることがあるわけです。「JRの常識が、一般の非常識」という言い方がありますが、そのことをあらためて痛感させられました。そうした〝常識〟を疑っていく姿勢が、安全の再確立に向けた取り組みの出発点として大事になると強く認識しました。

機関車・貨車の入換作業
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