カーゴニュース 2025年4月3日 第5328号

貨眺富営304
「情緒不安定の春」
中田信哉
(神奈川大学名誉教授)

2025/04/03 07:00
コラム・寄稿

永き日や欠伸うつして分かれ行く 漱石

 

 欠伸はあくびです。漱石は夏目漱石で正岡子規の親友、俳人としても有名。出世作「我輩は猫である」は高浜虚子が勧めて「ホトトギス」に載せた小説です。今年の僕のテーマは「素人の俳句評論」です。「俳句とは言葉遊びである」と「俳句は一句だけでは商品にならず、部材にすぎない」という話。今、これを私家版の本にしようと思って、鋭意、執筆中です。考えてみると老境になってから年に一冊、本を作ることをしてきました。歴史、骨董、グルメ、旅、動物、NFL、食の歴史などなど年に一冊、書いてきたのです。適当だからモノになったものは一つもない。金がかかるだけで儲けにはならない。今年は物流史研究会で「佐渡の小木港と千石船」の報告をしようと思っています。

 

 というわけで昔と同じことを繰り返すだけ。これは老人の通弊でしょう。気がつけば齢八十を越え、途中、コロナの混乱はあったにしても、不安と停滞の毎日です。実は家の書庫に一杯あった本を整理することにしました。文庫本だけ残して(売れないから)、あとは大学に入っている古書店の五山堂さんに持って行ってもらう。流通物流関係は神奈川大学に移します。書棚の奥から旧い物流の本、雑誌がたくさん出てきました。1970年代から90年代のものです。驚いたことにアメリカ、イギリスの学者や実業家が書いた翻訳本がたくさんありました。この時代は物流を新たに研究しようという研究者や実務家たちはこぞって外書を訳そうとしていたのです。また、実務家の多くが本の執筆をしていました。「新しく物流を研究してみよう」と試みた人がたくさんいたのです。現在はどうでしょうか。物流の本の翻訳などまるで見ない。学者は本を書かず、実務家も書かない。書くのはコンサルタント畑の人ばかり、これは彼らの業務上のマニュアルのようなものです。

 

 こういう話があります。江戸中期から明治時代まで日本海航路(西回り航路)の蝦夷から大坂にいたる海の総合商社の北前船は隆盛を極めました。一航海で数億円を稼ぐ千石船を20隻も持つ豪商もありました。これが衰退したのは明治になってからの蒸気船と鉄道網のためだと10年くらい前までは言われていたのですが、その後の研究で北前船最大の敵となったのは全国レベルの電信網の普及だそうです。確かに蒸気船は北前船商人が導入すればよいし、鉄道は限定されている。北前船は日本海から瀬戸内海の多くの港に寄って販売と仕入れを行って、各地の価格差によって利益を上げるものです。日本全国で商品価格は異なっていたからです。ところが、電信網が整備され、郵便制度も整い、各地の情報が把握でき、地域による価格差がなくなり、買積船の機能が失われた、と言われる様になったのです。

 

 1870年代に電話線の開放でオンライン・リアルタイムが実現され、商物分離が可能となった。そして、20世紀になってインターネットが登場し、大きな変化を齎した。以前の流通論、物流論では情報インフラの発展で流通構造がどう変わるかが研究されました。しかし、今では構造論をかたる人が少なくなり、情報技術ばかり。学者と役人の責任です。

 

 白河の清き流れに魚棲まず、元の田沼の濁り恋しき(うろ覚え)

 

 これは寛政の改革の時に出た狂歌です。白河城主で老中の松平定信の緊縮贅沢禁止政策で火の消えた江戸文化、田沼意次の改革開放政策時代が懐かしいということです。今のアメリカ、欧州、日本ともにこういう状態かもしれません。             

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