カーゴニュース 2025年4月10日 第5330号

FOCUS
国交省
Gメン勧告企業の改善状況を公表、実効性確保へ

改善計画フォローアップのサイクル確立

2025/04/09 17:00
FOCUS 行政 トラック輸送

 悪質な荷主・元請事業者への是正指導などを行う「トラック・物流Gメン」の〝実効性〟に注目が集まっている。Gメンによる指導は最も軽いものから順に「働きかけ」「要請」「勧告・公表」とあるが、このうち要請してもなお改善が見られない企業に対して出される「勧告・公表」は、制度創設の2023年7月から現在までに4件行われている。当該企業は改善計画を策定し、国土交通省がそれを確認したうえで公表。Gメンに寄せられた情報をもとに是正要請から実際の改善までをフォローアップしていくサイクルが確立されつつある。

 

「勧告・公表」は4件、改善計画の提出を指示

 

 「トラック・物流Gメン」は23年6月2日に「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき、発荷主企業のみならず、着荷主企業も含め、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業・元請事業者の監視を強化するために創設された。24年11月には倉庫業等からも聞き取り調査ができるよう「トラック・物流Gメン」に改組された。

 

 11月と12月を、「トラック・物流Gメン」の集中監視月間と位置づけ、プッシュ型の情報収集等を実施。適正な取引を阻害する疑いのある悪質な荷主等に対する監視を強化している。24年12月末時点で、「働きかけ」は1378件(荷主942件、元請399件、その他37件)、「要請」は183件(荷主94件、元請83件、その他6件)、最も重い「勧告・公表」は4件(荷主2件、元請1件、その他1件)発出されている。

 

 「勧告・公表」は24年1月に王子マテリア、ヤマト運輸、25年1月にNX・NPロジスティクス、吉野工業所の4社に対し行われた。いずれもトラック事業者に対する長時間の荷待ちが問題になり、「要請」後も改善がみられないとして「勧告・公表」に踏み切った。その後、国交省は早急な是正を促すとともに、改善計画の提出を指示。このうち一定の改善が確認されたとして、王子マテリアの改善状況をこのほど公表した。

約1年以上かけて同社の改善の進捗をレビュー

 

 王子マテリアの「勧告・公表」に至った経緯を見ていくと、違反原因行為は長時間の荷待ちだった。国交省はトラック事業者からの情報を受け、22年8月に同社に是正を「要請」した。その後、同社は改善計画を提出し、一定の改善成果がみられたが、翌年には各地区で、相当数のトラック事業者から依然として長時間の荷待ちが解消されていない実態を把握したため、「勧告・公表」し、改善計画書の提出を再度指示した。

 

 その後、王子マテリアは国交省に対し直ちに物流業務体制を見直すと報告し、24年3月に新たな改善計画書を提出。その後、物流部門の担当者が1~2ヵ月に1回の頻度で国交省に改善の進捗状況を報告していた。このほど一定の改善成果がまとまったことを受け、国交省は同社の改善状況を公表したもの。国交省は「勧告・公表」から約1年以上かけて同社の改善の進捗をレビューしていたことになる。

 

 新たな改善計画では、同年9月末までに原則として荷待ち・荷役作業等の時間を2時間以内とし、トラック事業者とドライバーへのヒアリング活動を定期的に実施し、輸送業務に関わる労働環境改善につなげるとした。具体的な取り組みでは、トラック予約システムを導入したほか、出荷口の増設や荷捌き場の新設、旧倉庫の活用によるトラックの滞留・混雑対策を実施する。

 

 そのほか、物流センターで利用するハンディターミナルの更新、無線機の導入、カメラの設置、外部倉庫への出荷システムを拡充するなど入出荷業務の時短に寄与する対策を実施。グループの王子物流と協力し、運送会社とトラックドライバーへの定期的なヒアリングを実施し、意見を反映。滞在時間短縮のほか複数積みの削減、バース予約ができる時間帯拡大に対する意見・要望について対応した。

 

 さらに、デリバリー体制の一元管理を図り、23年7月に業務改善やDX推進などの課題を解決する部署として「セールスストラテジーセンター」を新設し、製品の種類や部門を超えた調整を実施。王子マテリアは今後も改善状態を継続できる体制を整えたことを国交省に報告し、「引き続き、運送事業者をはじめ物流関係者との緊密なコミュニケーションのもと、関係者からの信頼回復に努めていく」としている。

 

 現在までのところ、改善状況が公表されたのはまだ王子マテリア1社のみ。「トラック・物流Gメン」に寄せられた情報をもとに国交省は荷主や元請事業者に対する「働きかけ」「要請」「勧告・公表」において改善が見られるかを監視し、「勧告・公表」後も、改善の進捗を定期的に確認するなど、同制度において「社名公表」という社会的制裁以上に、物流改善の実効性に重きを置いていることがうかがえる。

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