店舗は全国に160拠点以上を展開

カーゴニュース 2025年4月15日 第5331号

FOCUS
カクヤス
配達DX推進で自社物流モデル強化へ

オプティマインドと連携、自動配車など導入

2025/04/14 17:00
FOCUS 荷主・物流子会社 DX・システム・新技術

 都内を中心に酒類などの販売・配達事業を手がけるカクヤス(本社・東京都北区、佐藤順一社長)は、ビール1本からの無料配送など顧客の利便性を重視した独自の配送モデルを展開している。その中で、配送効率化に向けて、オプティマインド(本社・名古屋市中区、松下健社長)と連携し、自動配車システムなどを活用したDXによる配達業務のサポートに着手。今後の本格運用を視野に入れ、同社の配達サービスのキャッチコピーである「いつでも」「どこへでも」「どれだけでも」を実現する配送モデルの構築を目指す。

 

独自の配達体制「カクヤスモデル」が強み

小型出荷倉庫の「サテライト・ステーション(SS)」

 カクヤスは現在、実売店舗である「なんでも酒やカクヤス」を全国166店舗に展開しており、配送拠点となる17ヵ所の「大型配送センター」や64ヵ所の「小型出荷倉庫」(サテライト・ステーション〈SS〉)と合わせ、2024年3月末時点で関東(東京・神奈川・埼玉・千葉)224拠点、関西17拠点、九州13拠点の計254拠点を設けている。

 

 同社の主な事業は、店舗での販売事業と注文客への配達事業だ。このうち、配達事業には「飲食店向け販売」と「家庭向け販売」の2種類があり、飲食店向けにはおもに大型トラックによるルート配送を行い、家庭向けには店舗などからクイックデリバリーを行う。約1200台の配達車両を保有しており、年間の配達量は約31万t、年間配達件数は約1163万件に及ぶ。同社の売上の内訳を見ると、事業別では配達事業が約86%と太宗を占め、そのうち約69%が飲食店向け、約17%が家庭向けとなるなど、配達はカクヤスにとって事業の核となっている。

 

 カクヤスの物流における強みは、自社物流によって構築された「カクヤスモデル」と呼ばれるきめ細やかな配達体制にある。配達時間帯を1時間ごとに設定しており、東京23区など大都市圏の一部ではビール1本から送料無料で配達可能。一部エリアでは外部のクイックコマースを活用して商品を配達する「カクヤスEXPRESS」も展開する。また、飲食店向けには繁華街などを対象に深夜帯の配達にも対応する。

 

 他方、ドライバーの時間外労働の上限規制により、輸送力不足が懸念される「2024年問題」への対応として、飲食店向け配達で大型免許を必要としない配達ツールへのシフトを推進している。従来の大型配送センターからのトラックによるルート配送の一部で、SSからの軽バンやリヤカー、自転車を使ったクイックデリバリーへ移行するもの。これにより、より多様な人材が配達業務で活躍できる環境を整えることで人材不足に対応する。

配送にはトラックや軽バンなどを利用

 このほか、23年6月からは飲食店向けに販売する樽詰商品の小容量化にも取り組んでいる。従来、樽詰商品は20リットル規格が一般的だが、半分の10リットル規格に切り替え、女性や高齢者でも取り扱えるようにしたことで、配達業務でのさらなる負荷軽減につなげたほか、フードロス削減の観点からも効果があるという。

 

「自動化・非属人化・可視化」へ配達業務のDX推進

配送効率化に「Loogia」を活用

 さらに同社が力を入れているのが、配達事業におけるDXの推進だ。昨年10月、社内DXのサポートを担う部門「デジタルイノベーションセンター」を新たに設立。同センターは「DX推進グループ」と「データ分析推進グループ」で構成され、配達・販売情報の分析から、施策の検証・実行までを一気通貫で担当する。社内のデータ利活用により、需要予測に基づく在庫管理や配送業務の最適化につなげていく。

 

 同センターの活動の一環として同年12月、ラストワンマイル配送のルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」を提供するオプティマインドと連携し、配送業務の効率化を目的とした新たな配送モデルの構築プロジェクトを開始した。データ活用推進部の中島宏部長は「店舗からの配送では従来、注文情報に基づき、店長などの責任者がドライバーへの配送指示といった配車業務を行っており、業務が属人化していた。非属人化しつつ配送効率を上げるため、紙場検証を通じて改善の余地を探った」と説明。さらに、システム企画開発部の小野淳部長は「新たな配送モデル構築に向けて、キーワードとして『自動化』『非属人化』『可視化』の3つを掲げた」と語る。

 

 今回の取り組みでは「Loogia」を活用することで、注文情報や車両情報などに応じた最適な配車計画策定を自動化する。さらに、ベテランドライバーによる配達業務の属人化解消にも着手。従来、新人ドライバーが1人前のドライバーになるには、最適な配送ルートの判断や配送先でのルール把握の習得などに時間を要しており、平均5ヵ月程度かかっていたという。今回、ドライバーに対しスマートフォン型の専用端末を通じて、最適なルート案内や配送先ルールの確認などを行うことで、ドライバーの育成にかかる時間の約2~3割の短縮につなげる。加えて、店舗での配送車両の動態確認も可能としたことで、次の配送計画の策定をスムーズに行えるようにする。

 

 この配送効率化の取り組みによって、配車担当やドライバーの負荷軽減を実現するだけでなく、配達件数を現在より約5%増加できると見込む。また、配送データを活用し、配送効率化によるCO2排出削減量を算出するなど、環境負荷低減にも寄与したい考えだ。

 

6月から本格導入開始、都内を皮切りに運用拡大へ

 

 プロジェクト開始にあたり、両社は2月から、繁華街や住宅街など、都内5店舗での実証実験を開始した。良好な結果を得られたことから、今後は6月頃をメドに都内の店舗を対象に本格導入を進め、各店舗に対しオペレーションについて理解を得ながら、段階的に導入拠点を増やしていく計画だ。

 

 運用における今後の課題として小野氏は「配送先によって配送上のルールに様々なパターンが存在するため、システムが取り込みやすくなるようデータを整備する必要がある。また、予定の配送時間を遵守するため、最適なルートを検索する際、交通状況の変化などに柔軟に対応できる設計にしなければならない」と述べる。そのうえで、車両の動態情報を参考にしたドライバーへのリアルタイムでの配送ルート指示も、検討の余地があるとしている。

左からマーケティング部荒川友希氏、小野氏、中島氏
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