カーゴニュース 2025年5月29日 第5342号
鹿島タンクターミナル(本社・茨城県神栖市、野﨑薰正社長)は将来構想として、タンクの増設とともにISOタンクコンテナのデポ機能の拡張を検討していく。タンクの建造コストが高騰している中、鹿島臨海工業地帯石油化学コンビナート地区唯一の営業用パブリックタンクターミナルとして収益性を高める設備投資を見極めていく考えだ。
同社は丸全昭和運輸および鹿島地区のメーカーの出資により2010年に設立され、11年に開業。1万5000DWT級の外航タンカーが接岸可能な桟橋を有し、現在は危険物タンク8基、指定可燃物タンク4基の12基体制。指定可燃物タンクの一部を除き全基稼働している。
敷地内にタンクを増設することが可能だが、石油コンビナート等特別防災区域の「第2種事業所」の範疇ではこれ以上の危険物タンクを建てることができない。このため、危険物以外の貯蔵タンクを想定しており、メーカーの原料および製造副産物を保管する毒劇物タンクを建設する構想もある。
ただ、課題となりそうなのが、ISOタンクコンテナのデポ機能との併存だ。鹿島タンクターミナルではタンクターミナル構内でISOタンクコンテナのデポ機能を持ち、リーチスタッカーを配備し、一般化学品、指定可燃物など200基超、危険物で24基の保管が可能。加温作業にも対応している。
コンビナート地区で、大容量のストレージタンクと、多品種小ロット貨物に適したISOタンクコンテナによる保管の両方のニーズに対応できるのが同社の強みとなっているが、タンクを増設すると、既存のISOタンクコンテナのデポのスペースを縮小しなければならないというジレンマがある。
建設にかかわる人件費の上昇などによりタンクの建造コストが高騰し、投資の回収期間がこれまでより長期になることが予想される。そこで会社全体の収益力を高めるため、タンクの増設と並行し、コンスタントなニーズがあり、利益貢献度も高いISOタンクコンテナのデポの機能の拡張を検討していく方針。
首都圏のISOタンクコンテナのデポは京浜港に集中しており、コンビナート地区では希少。メーカーの定修(プラントや工場の設備の点検、交換、洗浄、改造などの定期修理)時の保管に加え、「2024年問題」対策として、エンドユーザー最寄りのデポで保管し、輸送距離を短縮したいというニーズも見込まれる。
今後の事業拡大では、ISOタンクコンテナの洗浄サービスも検討。現在、大手メーカー向けにISOタンクコンテナの洗浄作業を丸全昭和運輸鹿島支店が行っているが、製品のグレード切り替え時などに洗浄需要が見込まれることから、設備更新を見据え、鹿島タンクターミナル構内に洗浄サービスを移管することも視野に入れている。
総合物流・3PL事業を展開する丸全昭和運輸と一体となった営業も推進する。一部の顧客について契約窓口を丸全昭和運輸に切り替えるなど、タンクターミナルだけでなく、丸全昭和運輸の多岐にわたる物流サービスをセットにした提案が可能で、鹿島タンクターミナル独自の顧客ネットワークも活かし、グループのシナジー創出を目指す。
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