カーゴニュース 2025年5月29日 第5342号
小口混載(LCL)サービスの老舗である信永海運(本社・東京都港区、長島啓浩社長)は、全国12ヵ所の港にCFS(コンテナ・フレイト・ステーション)を構えており、危険物混載サービスでは、横浜、神戸、名古屋、門司のCFSから21の仕向地に向けて直行便サービスを提供している。酸性とアルカリ性の危険品は本来、貨物の特性上積み合わせができないが、同社ではコンテナを分けて同一本船で受託することが、ほとんどの仕向地において可能。プノンペン、ラッカバン、ペナン、ドバイ、アンバルリ(イスタンブール)など他社があまり手掛けていない港をカバーしていることも特長で、特にアジア域内向けの取扱量は国内随一となる。
2024年の荷動きは安定的に推移し、23年と比較して取扱量は微増を確保した。23年に新たな仕向地としてサービス対象地域に追加したトルコ・イスタンブールやイタリア・ジェノバの取扱量は、サービス全体の割合としては小さいものの、24年のうちに数倍に増加するエリアも出るなど堅調に需要を確保。今後の市場成長が見込まれるUAE(アラブ首長国連邦)・ドバイについても、スエズ運河の渡航制限などの地政学的リスクがありつつも、取扱量を徐々に増やしつつある。
他方、半導体関連の需要が旺盛な台湾向けは、危険物混載サービスにおいてタイなどと並び高い割合を占める仕向地だが、現地の都合により一部都市向けのサービスが停止中。営業部の安部川敦司部長補佐は「サービス品質の維持につなげられるよう、なるべく早期にサービスを再開できるよう尽力していく」としている。
荷量増加に向けた今後の戦略として、引き続きイスタンブールやドバイなどの中東エリアやイタリアでのさらなる需要獲得に向けて営業力強化を進めていきたい考え。加えて、新たな仕向地の候補として挙げるフィリピンのセブ島についても、サービス開始につなげるため需要の掘り起こしに注力していく。
輸送の安全面にも力を入れており、20年から海上災害防止センターと契約し、横浜・東京・神戸港において危険物を含む化学品の漏えいや火災などの事故発生に備え、防災活動の出動を依頼できる体制を構築。こうした取り組みは海上混載サービスを提供するNVOCCでは希少な例だという。加えて、1事故30億円まで補償する損害賠償保険に加入することで、万一の危険物事故に備えている。なお、これまでに適用された事例はない。
このほか、同社ではかねてよりブッキング業務のDX(デジタルトランスフォーメ―ション)を推進している。公式Webサイトではブッキングシステムによるスケジュール検索や見積もり取得などに対応。見やすさや迅速なレスポンスにこだわったユーザーフレンドリーな設計・運営により、ブッキングにかかる手続きを省力化・迅速化することで、顧客へのパフォーマンス向上につなげている。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。