カーゴニュース 2025年5月29日 第5342号
リチウムイオン電池や半導体材料などの保管需要やコンプライアンス遵守の潮流を見越し、デベロッパー各社が賃貸用危険物倉庫の開発に乗り出している。ドライ倉庫が供給過剰気味にある中で、デベロッパーが新たに狙いをつけているのが、ドライ倉庫よりも高付加価値で高い賃料が見込まれる冷蔵倉庫や危険物倉庫。中でも危険物倉庫は、消防法の制約により土地の利用効率は悪いものの、小面積で平屋建てが基本であることから開発コストを抑制できるメリットがある。ただ、旺盛な需要を見込んでいた車載用リチウムイオン電池の荷動きは想定よりも活況がみられず、また、保管にかかわるさらなる規制緩和の動きも出てきた。半導体材料も需要エリアがある程度限られており、賃貸用危険物倉庫の需要と供給のバランスには不透明感も漂う。
プロロジスは古河で全29棟を開発
大手デベロッパーの中でもプロロジスはHAZMAT(危険物)倉庫の大規模な開発を展開している。茨城県古河市で進む物流施設開発計画「プロロジス古河プロジェクト」では、「フェーズ1」「フェーズ2」の2期に分けて開発を進め、危険物倉庫を次々と竣工。今年3月の会見で同社の山田御酒会長兼社長は、「危険物倉庫は面積が限られており、ビジネスとして大きなものにはならないが、顧客が必要としてくれる施設を提供していくことが当社の姿勢だ」と説明する。
「フェーズ1」(総敷地面積約10万6000㎡)では、ロジスティードケミカル(旧日立物流ファインネクスト)と共同開発した「プロロジスパーク古河2」(延床面積約2万1937㎡)に8棟、センコー専用施設の「プロロジスパーク古河3」(約3万1265㎡)に2棟の危険物倉庫を併設し、計10棟を開発した。
さらに「フェーズ2」(総敷地面積約17万7000㎡)では、危険物倉庫(約999㎡)を併設した「プロロジスパーク古河4」(約12万3266㎡)を23年5月に竣工。24年12月には危険物倉庫8棟で構成される「プロロジスパーク古河6」(約7800㎡)を竣工した。加えて、今年2月には危険物倉庫10棟で構成される「プロロジスパーク古河7」(約1万1500㎡)を着工し、26年2月竣工を予定。「フェーズ2」における危険物倉庫は計19棟、プロジェクト全体では全29棟となる。
「併設」型や「増設」対応も目立つ
プロロジスのように大規模な賃貸用危険物倉庫を開発している例は少ない。日鉄興和不動産が24年6月に埼玉県越谷市で竣工した「LOGI FRONT」シリーズで初となる危険物倉庫「LOGI FRONT越谷Ⅲ」(約1454㎡)は数少ない危険物倉庫特化型のプロジェクトで、4棟全棟を東武運輸が利用する。
多くの大手デベロッパーが危険物倉庫の開発を手掛けるのは危険物倉庫の「併設」によって、ドライ倉庫に付加価値をつける狙いからだ。オリックス不動産は24年4月に神奈川県愛川町で竣工した「厚木Ⅲロジスティクスセンター」(約18万1613㎡)の敷地内に危険物倉庫を併設している。
実際に、テナントがドライ倉庫と危険物倉庫の両方を必要とするケースもある。シーアールイー(CRE)は24年7月、福岡地所との共同開発により福岡県小郡市で「ロジシティ小郡」(約2万8364㎡)を竣工。普通倉庫と危険物倉庫1棟ずつで構成されており、ロジスティード九州のBTS型施設として開発した。
東京建物が神奈川県厚木市に開発を進める「T―LOGI厚木(仮)」(約2万3239㎡)は5階建てのドライ倉庫1棟と危険物倉庫2棟で構成され、27年春の竣工を予定している。
将来的に危険物倉庫の増設を見据えた開発計画も目立つ。三菱地所が24年11月に神奈川県厚木市に竣工したボックス型の「ロジクロス厚木Ⅲ」(約5万2900㎡)では、敷地内に危険物倉庫の増設を予定。今夏の竣工を目指している。
東急不動産は神戸市長田区にマルチテナント型施設「LOGI,Q神戸新長田」(約5万6437㎡)の開発を予定。敷地内には危険物倉庫の設置も計画しており、26年8月末の竣工を計画する。
近年、賃貸用冷凍冷蔵自動倉庫の開発を拡大している霞ヶ関キャピタルの動きも注目される。神奈川県内で、同社初となる賃貸用のHAZMAT倉庫(約5000㎡)の開発を計画しており、同社のノウハウを活かした自動倉庫化も検討している。26年春着工、27年夏竣工を予定しており、自動倉庫型の賃貸用危険物倉庫が実現すれば、新たなビジネスモデルが登場することになる。
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