カーゴニュース 2025年6月26日 第5350号
人手不足背景に自動化投資は引き続き旺盛
前期(2024年12月期)の当社グループの業績は、決算期変更に伴い国内が9ヵ月の変則決算でしたが、前々期の連結会計期間を調整した数値と比較すると、受注高、売上高、営業利益ともに前々期を上回るなど好調でした。このうち、一般製造業・流通業向けのイントラロジスティクス(IL)事業についても、引き続き人手不足を背景にした自動化投資が継続したことで、好調に推移しました。
国内のeコマース関連では、拠点投資総額が50億円を超えるような超大型の案件こそ減ってきているものの、中規模クラスの倉庫・配送センターへの投資は引き続き堅調で、市場の裾野の広がりを感じます。また、過去に手がけた案件のリニューアル需要も増えており、保守・点検や部品交換などのアフターサービスの収入も順調に拡大しました。
今期(25年12月期)に入っても旺盛な需要が続いており、IL事業についても期初の計画通り推移しています。建築コストが高騰する中で、お客様の一部で物流センターの投資を先送りする動きがある一方、人手不足が待ったなしで進んでいることから、積極的な自動化投資に踏み切る企業も多く、全体の需要は底堅くなっています。
国内を伸ばし、海外をさらに伸ばす
IL事業部門では現在、海外での生産能力の拡充に取り組んでいます。米国では2019年にインディアナ州で新工場が稼働し、コンベヤ系を中心に現地生産比率を高めました。さらなる需要拡大に対応するため、自動倉庫系設備の製造も視野に入れ、今年10月には同工場を拡張し、生産能力を増強していきます。部品調達を含めた現地生産比率を高めることで、生産コストの削減を図っていきます。米国の関税政策の行方が注目されていますが、当社グループでは米国内でも「地産地消」を進めてきたため、影響は限定的なものにとどまると考えています。
また、インドでは今年4月にIL事業の新工場が稼働し、生産スペースを従来の約4倍に増強しました。インドにおけるマテハン市場はこれからという部分もありますが、人口増加を背景とした成長性は非常に高いものがあります。調達品の内製化などコスト競争力を強化するとともに、お客様への短納期化、サービス体制の拡充により、インド市場での事業拡大を図っていきます。
現時点での注力市場はやはり北米とインドですが、このほか東南アジアなどでも需要開拓に取り組んでいきます。当社グループ全体での海外売上高比率は7割を超えていますが、IL事業では4割にとどまっています。これを中期経営計画の最終年度となる27年12月期までに5割まで高めたいと考えています。国内事業が拡大する中で比率を高めることは困難ではあるものの、社内では「国内を伸ばし、海外をさらに伸ばす」という方針を掲げています。
海外での生産能力を拡充する一方、国内ではマザー工場の滋賀事業所で、IL事業の新たな工場棟となる「M棟」を今年7月に稼働します。これにより、生産能力の増強とともにサービスパーツを中心とした部品物流の効率化も図ります。また、当社自身の物流業務における車両積載効率の向上や稼働車両台数の削減によるCO2排出削減にも取り組んでいます。
半導体後工程、二次電池市場に注力していく
今後、IL事業部門として注目している分野のひとつが半導体関連です。半導体工場内のクリーンルームにおける搬送システムは当社のクリーンルーム事業部門が担当していますが、半導体製造の後工程の非クリーン分野でも自動化が推進されてきており、成長性があると捉えています。クリーンルーム事業部門と連携を取りながら、積極的に提案を行っていきます。
また、EVバッテリー向けの二次電池についても、自動車メーカーのEV生産が本格化していく中で国内でのバッテリー製造の動きが徐々に加速していくと見ており、製造工程における自動化ニーズがさらに高まると考えています。このほか、冷凍・冷蔵倉庫でのマテハンシステムの導入も活発になっています。冷凍・冷蔵倉庫内での作業環境は厳しい面があるため、今後も労働環境改善や人手不足対策の面から自動化に対する需要は継続していくものと思います。
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