カーゴニュース 2025年9月9日 第5369号
日本郵便(本社・東京都千代田区、小池信也社長)の不適切点呼を巡り、国土交通省は3日、軽貨物車両の使用停止などの行政処分案を約100局の郵便局に通知した。日本郵便も同日、行政処分に関する弁明手続についての通知を受領したことを明らかにした。国交省は今後、同社に弁明の機会を与えたうえで、10月初旬にも当該郵便局に車両停止の処分を科す方針。日本郵便ではすでに1t以上のトラックなど約2500台が事業許可の取り消し処分を受けている。それに加えて今回、ラストワンマイル集配の主力を担う軽車両にも処分が及ぶことで、オペレーションの混乱に伴うさらなるコスト増や、混乱を嫌う顧客離れが進む懸念が高まってきた。
最終的には2000局超が行政処分へ
関係者によると、今回、処分案が通知されたのは東京、大阪などにある郵便局約100局。ただ、これは第1弾の処分に過ぎない。日本郵便は、全国3188局の75%にあたる2391局で不適切点呼があったとする社内調査結果を公表している。国交省もこの結果をもとに特別監査を行っており、最終的には2000局を超える郵便局が処分対象となる見通し。今後は処分案が確定した郵便局から順次、毎週100~200局ずつ対象が増えていく見込みだ。
軽車両の車両使用停止は一部の郵便局で最大「160日車」に及ぶ見通し。「日車」とは使用停止日数と対象車両数をかけ合わせた単位。「160日車」の場合、車両10台で16日ずつ、5台の場合は32日ずつとなる。停止車両数は、営業所に所属する車両の5割を超えない台数までと法令で定められているため、処分を受けた郵便局でも半数の軽車両は稼働することができる。
なお、事業許可制が採用されているトラック運送事業(一般貨物自動車運送事業)は許可取り消し処分が可能だが、届出制である貨物軽事業では許可取り消しという罰則がないため、日本郵便の軽貨物事業が取り消されることはない。
綱渡りの戦力配置でオペレーション混乱も
とはいえ、オペレーションの混乱は必至だ。日本郵便が全国で保有する軽バンなどの軽車両は約3万2000台に及び、郵便や荷物の集配などラストワンマイルの中核を担う。日本郵便は車両停止の処分期間中、外部委託や近隣の郵便局からの応援などで集配戦力を補う考え。ただ、都市部であれば対応は可能だが、委託先が限られる地方部では想定通りに進むかは不透明だ。
また、すでに許可が取り消されている大口顧客への集荷業務などでは、約2500台分の輸送力のうち42%を自社の軽車両でカバーしている。関係者からは「今後、戦力配置を再構築する中で、玉突き的な混乱や綱渡りのような弥縫策によって現場のオペレーションは相当混乱するだろう」との悲観的な声も出ている。
委託費の増加やさらなる顧客離反リスクも
さらなる委託費の増加や大口荷主の離反への懸念も高まっている。日本郵便はトラック事業の許可取り消しで2026年3月期の外部委託費が65億円増加するとの見通しをすでに発表しているが、今回の軽車両の使用停止でコストがさらに膨らむことは避けられない。また、持株会社である日本郵政の根岸一行社長は「7月ごろからゆうパックの利用を控えたいとの声が少しずつ出ている」と述べており、今回の行政処分で顧客離れがさらに進むことも考えられる。
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