カーゴニュース 2025年10月16日 第5379号
SUBARU(本社・東京都渋谷区、大崎篤社長)は2025年4月1日付の組織改正で、CLO(Chief Logistics Officer=最高物流責任者)を新設した。サプライチェーンを取り巻く環境変化に迅速かつ柔軟に対応し、「モノづくり革新」の実現を加速させる狙い。併せて、物流諸課題に「全体最適」で対応する体制を構築するため、従来、「モノづくり本部」と各営業部門がそれぞれ有していた物流関連機能を統合し、「物流本部」を新設した。村田眞一執行役員CLO物流本部長にSUBARUが目指す物流のあり方、取り組みの方向性を聞いた。(インタビュアー/石井麻里)
4月の組織改正で「CLO」「物流本部」を新設
――4月の組織改正で物流諸課題への対応姿勢を打ち出しました。まず、物流に関する課題認識からお聞かせください。
村田 国内の人手不足に起因する「物流危機」、トラックドライバーの労働時間規制が強化される「2024年問題」、荷主への規制的措置を含む物流総合効率化法への対応――など物流課題は多岐にわたっています。当社は国内に新工場の建設を公表しており、これからも国内の自動車製造工場を基盤としたモノづくりを続けていくには、それを支える物流、供給網の確立が不可欠であると認識しています。
自動車メーカーの物流には「生産部品物流」と「完成車物流」があります。自動車業界の慣習として、生産に必要な部品を工場に届ける「生産部品物流」はお取引様側の責任範疇とされており、ある意味、自動車メーカーとして十分に把握できていませんでした。仮に、お取引様が物流対応に困難を感じるような状況になれば、部品が届かず、クルマの生産に影響がでます。そうした事態を回避するためには、いまから将来を見据え、物流諸課題に手を打っておかなければなりません。足元ではインフレにより物流コストは上昇傾向にありますが、お取引様に委ねていた部分が多く、物流コストについてまだ見えていない部分があり、そこもしっかりとらえていく必要があります。
――物流に関する組織改正に至った背景、狙いについてお聞かせいただけますか。
村田 社内の各部門で物流課題については長年テーマとされてきましたが、そこにフォーカスし、解決を目指す体制になっていませんでした。生産、販売など各部門の都合を優先する「部門最適」になっていたのです。一例を挙げますと、従来、完成車の営業部門が国内販売部門と海外販売部門で分かれており、どちらかの完成車置き場が足りなくなった時に、お互いに融通することが難しく、新たに置き場を借りる――といった対応がとられていました。「部門最適」はこのように余分なコストを生むケースがあり、「全体最適」で物流をとらえていく必要があるのではないか。各部門で物流費がどのように発生しているのかを十分に把握できていない状況を打開すべきではないか。社内でそうした機運が高まっていたところに、物流総合効率化法が重なりました。同法には荷主への規制的措置が盛り込まれ、2026年4月から、一定以上の規模の荷主には物流にかかわる中長期計画の策定・報告と「CLO(物流統括管理者)」の選任が義務付けられます。そうであれば、しっかり先手を打っていこうということで、当社は今年4月の組織改正で「物流本部」を新設し、各部門に置かれていた物流関連の機能を集約し、同時に「CLO」も選任しました。
――組織改正では、モノづくり部門と国内および海外の営業部門に属する物流関連機能を新設の「物流本部」に移管し、その傘下に「物流企画管理部」「生産部品物流部」「完成車物流部」を設置しました。各部のおもな担当領域についてご紹介ください。
村田 「物流企画管理部」は各部門や全社的な物流コストのとりまとめ、プロセスの可視化、課題の把握などを担当します。「生産部品物流部」はお取引様から工場への部品の納入プロセスの改善や、米国の生産拠点へのKD(ノックダウン)部品供給のコントロール、新工場における物流最適化の検討を行う部署です。「完成車物流部」は従来、国内営業部門と海外営業部門が担当していた工場から国内販売店への輸送、日本の港からの船積み、海上輸送の手配を行います。
また、物流機能子会社であるスバルロジスティクスは、「生産部品物流部」と「完成車物流部」の実務を委託され、海外生産工場に向けた自動車部品の梱包・輸送、国内特約店や輸出船積港への完成車輸送の手配などがおもな事業内容です。
――貴社は米国での販売比率が高く、国際輸送も重要ですね。
村田 ざっくりいうと米国で販売している半分が輸出、半分が現地生産です。現地生産でも日本から送っている部品も多く、海上輸送では、RORO船による完成車輸送と、部品を輸出するためのコンテナ輸送を手配しています。日本発米国向けが大きな割合を占めており、このレーンの供給網をいかにコントロールしていくかは重要なテーマです。
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