カーゴニュース 2026年6月30日 第5447号
独自に開発したWMS(倉庫管理システム)「SANTA」を武器に、EC物流分野で存在感を高めている三協(本社・大阪府東大阪市、山田孝治代表取締役社長)。物流現場を知り尽くした自社エンジニアが、システム開発を完全に内製化し、物流現場に合わせたオーダーメイドの物流システムを提供する。イレギュラー対応も含めてシステムでカバーできるようにカスタマイズし、全顧客で誤出荷・未出荷ゼロを継続。従来は熟練者に依存していた物流現場を徹底的にDX化し、「週1回・1日・1時間のみ勤務可能」なスタッフでも戦力化できる仕組みを構築している。
正社員の1割超がシステムエンジニア
同社は1968年の設立。三洋電機の倉庫業務からスタートし、社名にも「三洋電機に協力する会社」との意味が込められていた。2000年代に入り、三洋電機の業績悪化で業務量が激減したことから、会社の存続に危機感を持って新たな領域として注目したのが、当時拡大し始めていた「EC」だった。
山田健太郎代表取締役専務によると、「EC物流はBtoBと異なり、スケジュールの予定が組めない。誤出荷があった場合、消費者からの直接クレームとなり、返品も頻繁に発生する」。難易度の高いEC物流で武器となるのが“IT”だ。1999年にエンジニア1人を採用し、社内のIT化、システム開発の内製化に取り組み始めた。
エンジニアの採用・育成には紆余曲折があった。物流会社への就職や「物流システムをつくりたい」と希望するエンジニアは少なく、基幹系のシステムの方が人気が高い。山田氏は、「物流の仕組みのユニークさ、物流がいかに社会にとって必要か」を口説きながら地道に採用を進め、現在、正社員55人のうちエンジニアは7人と15%を占める。
物流は上流、下流の影響を受けやすい分、システム構築は難しい。顧客の特性や扱う品物によって管理の仕方が異なり、各物流現場にはスペースや固有のルールといった“制約”もある。三協のエンジニアは物流現場を熟知しており、こうした物流現場の弱みも含めて顧客と共有しながら、システムをカスタマイズしていく。
ニーズに合わせ完全オーダーメイドを実現
パッケージ型のWMSは企業特有の物流課題や突発的なイレギュラー事象が発生した場合、その都度、人がWMSの都合に合わせたオペレーションを実行することが要求され、人的なミスが生じやすい。誤出荷、在庫の差異、未出荷をゼロにするには「WMSを徹底的にカスタマイズするしかない」――というのが三協のポリシーだ。
ベースとなるのは、独自のWMS「SANTA」。システム会社がつくったシステムではなく、物流現場に精通したエンジニアがゼロベースから開発したWMSで、多業種・多業態のカスタマイズ事例が“標準機能”として搭載されているため、顧客のニーズに合わせた完全オーダーメイドとしての運用が可能になる。
実際に、約100社の顧客に対し、100通りのWMSを運用している。一般的に、カスタマイズはコストアップになると言われるが、カスタマイズのノウハウが蓄積されていることに加え、本業は物流会社であるため、システム会社と比べ単価を抑えられ、「コストパフォーマンスの高いオーダーメイド型システム」を実現している。
「ライブコマースとも在庫を連携させたい」「ECを始めたい」「API連携したい」「プラットフォームと接続したい」――など顧客のニーズは日々変化していく。顧客の業務フローに合わせて、システムのカスタマイズを継続的に行うことによって、長期スパンで顧客のビジネスパートナーとなりうる。
各専門分野の4人がチームで課題解決
三協のユニークなビジネスモデルが、各専門分野の4人体制で物流業務フローをつくりあげていく「Logi4mation(ロジフォーメーション)」。「企画営業」(ヒアリング)、「ストレージプランナー」、「システムエンジニア」(カスタマイズ)、「現場責任者」(インストール)がプロジェクトチームを組んで、顧客の課題解決を繰り返していく。
とくに、「ストレージプランナー」は、最適なレイアウトの設計から業務フローの構築、人材育成に至るまで物流業務のトータルプロデューサーとして、倉庫の図面を引くところから業務稼働までのすべてを統括する役割を担う。従来は、物流アウトソーシングを前提としていたが、顧客の拠点でのコンサルやシステム導入のみにも対応する。
EC物流を得意とする三協だが、BtoBの物流でも実績を伸ばしている。BtoBの物流は、梱包や納品のルールが顧客によって様々であったり、荷主と物流会社の力関係により、イレギュラー対応も断りにくい。こうしたBtoB特有の事情も加味しながら、オーダーメイドのシステムを構築し、物流現場の負荷を下げる。
なお、三協がモデルとしている現場はコンビニ店舗。公金収納、宅配便の受付、弁当や飲料の販売など多様な機能がそろっているが、すべてバーコードでシステム的に処理され、店員の目視や判断をミニマム化している。コンビニ店舗と同じように、人間が行うと煩雑な処理をすべてシステムでカバーする物流現場の構築を目指している。
物流現場の人手不足により、「子育て中で1日1時間だけ働きたい人」も戦力化していく必要がある。属人化を排し、多様な人材が働ける環境を整え、生産性を最大化するためにもDX化は欠かせない。高額なハードに頼らず、ソフトにフォーカスした中小企業型の物流DXモデルで、人手不足と労働時間の制約という社会課題への対応にチャレンジする。
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