カーゴニュース 2026年8月18日 第5459号
米国トランプ政権の関税政策をはじめ、グローバルサプライチェーンの混乱が続くなか、日本企業の競争力を高めるための安定した貿易ルールとして、EPA(経済連携協定)の活用が注目されている。阪急阪神エクスプレス(本社・大阪市北区、吉本敏社長)は2019年に「通関シンクタンクプロジェクト」を始動し、通関業界の中でも先んじてEPA制度を活用した有償コンサルティングモデルを構築。荷主のEPA活用を推進するため、専門的な視点から実務的支援を行っている。今後は同社の国際物流事業との連携によりシナジーを創出していきたい考えだ。
EPA関税認定アドバイザーが5人在籍、さらに拡充
EPAとは、特定の国や地域同士での貿易を促進するために、輸出入に係る関税の撤廃・削減などを約束した協定。近年、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)、日EU・EPA、RCEP(地域的な包括的経済連携)など広域EPAの発効が進み、EPA締約国との貿易額は日本の貿易額全体の8割を占めている。
阪急阪神エクスプレスは15年からEPAの利活用を推進する活動を開始。とくに輸入顧客向けのEPA説明会を積極的に実施した。また複数の顧客を招待して、東京税関の原産地調査官を講師としたセミナーを開催するなど、輸出入事業者にEPA活用のメリットを発信してきた。19年には日EU・EPAの発効を機に、専任チームを組織して「通関シンクタンクプロジェクト」を始動。東日本通関部長の濱西裕史氏はその経緯を、「将来的に通関士の業務は審査や申告だけにとどまらず、専門的な知識に基づき助言を行うアドバイザーとなっていくはず。通関士の業務の変化を見据え、付加価値サービスの提供や新規ビジネスの獲得につなげるため、プロジェクトを開始した」と振り返る。21年には専門部署として正式に組織化し、東西2拠点体制でコンサルティング事業を開始した。
25年に日本通関業連合会が導入した「EPA関税認定アドバイザー制度」の活用も進め、現在同部署には同制度の認定を受けた通関士5人を含む11人が在籍。東西の2拠点に分散して配置し、アドバイザーによる支援体制を整えている。さらに、今年度も4人が同制度の講座を受講し、認定者をさらに拡充した。
海外現地法人と連携し、迅速に情報収集
同部署では、①日本への輸入支援②日本からの輸出支援③海外間の支援④戦略的コンサルティング――の4つの領域を中心に同社のグローバルネットワークを基軸にEPAの活用支援業務を展開している。
なかでも最も問い合わせが多いのは、日本からの輸出支援。EPA活用を検討する輸出事業者の相談に応じ、原産地規則の確認や各種判定支援など、専門性の高い事務支援を行っている。濱西氏は「国内の情報で完結する輸入と異なり、輸出事業者のEPA活用は相手国の法令や最新の規制状況の確認に加えて、HSコード(品目分類番号)については相手国の見解が優先されるため、輸出業者単独での対応は難しいのではないか」と指摘し、「通関業者がそれらの情報収集や、製品の構成部品を含めたHSコードの特定を請け負うことで、より円滑にEPAを活用できる」と強調する。
実際の相談事例について濱西氏は「輸出製品に使用されている構成部品・材料のHSコードの採番と、相手国によっては複数締結しているEPAの中から最適なEPAを提案してほしいという依頼があった」と明かし、取締役執行役員の内片孝至氏は「単純な調査に加え、活用可能なEPAが複数あった場合はよりコストを削減できる協定を紹介するなど、ただ聞かれたことに答えるのではなく、メリットのある提案を行うスキームを整えている」とする。
また、具体的な相談内容としては、HSコードの問い合わせが最多となっている。濱西氏は「HSコードの分類は専門性が高く、原産地証明の判定において輸出入者が最も苦労するプロセス」と述べ、「最近では、原産地判定や適用手続き、海外間のFTA(自由貿易協定)に関する相談も増加している」と報告する。
輸出入業者からの相談対応にあたり強みとなっているのは、同社が保有する海外現地法人との連携体制だ。とくに問い合わせが多い中国やASEAN地域に多数の海外現地法人を展開していることから、EPA制度や輸出入に関する規制状況などの情報を迅速に入手できる。内片氏は「海外間貿易におけるEPA適用のお客様との協議において、海外現地法人スタッフと連携することで、現地の税関や国内の状況を共有し、顧客支援に活用している」と強みを示す。
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