会計基準変更によるBSの変化

カーゴニュース 2024年10月8日 第5281号

物流不動産市場を読む!

FOCUS
リース会計基準変更、物流業界への影響は…

「持たざる経営」でビジネスモデルは変わる?

2024/10/07 16:00
全文公開記事 FOCUS 倉庫・物流施設

 「新リース会計基準」の確定版が9月13日に公表され、2027年度から原則として全てのリース契約が貸借対照表(BS)に計上され、オンバランス対象となることが決定した。物流施設の不動産契約についても借り手のBSに資産と負債を計上しなければならなくなるため、負債比率や自己資本比率、ROA(総資産利益率)、ROIC(投資資本利益率)などの経営指標への影響が考えられる。2000年代以降、物流不動産デベロッパーは「オフバランス」をうたい文句に賃貸マーケットを拡大。一方、メインユーザーである大手3PL会社は「持たざる経営」で資本効率を高めてきたが、物流施設を取り巻くビジネスモデルに変化が起きるのかが注目される。

 

 

例外除きすべてのリース取引がオンバランスに

 

 新リース会計基準が適用されるのは、①上場企業など金融商品取引法の適用を受ける企業およびその子会社・関連会社②会計監査人を設置する企業とその子会社――で、中小企業は適用対象外となる。

 

 現行のリース会計基準では、リース取引は実質ローン購入と変わらない「ファインナンスリース」と、リース期間終了後に物件を返却する「オペレーティングリース」に区分され、「オぺレーティングリース」では借り手のBSには計上されなかった。

 

 新基準では「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の区分をなくし、短期や少額リースといった一部の例外を除き、すべてのリース取引について資産と負債を認識し、BSで認識するオンバランスでの会計処理となる。

 

経営指標の低下、株価に影響の可能性

 

 なお、国際会計基準(IFRS)や米国会計基準ではすでにリース取引のバランスシートへの計上が義務付けられており、連結財務諸表でIFRSを使用している日本の企業は、すでにオンバランスリース会計基準を適用している。

 

 新リース基準の適用は、リース会計に関する日本基準と国際基準の整合性を図るのが目的で、具体的には、オペレーティングリースの対象を使用権資産、リース料をリース負債としてBSに計上し、投資家が企業の実態を正しく評価・分析しやすくする。

 

 企業にとっては資産と負債が増えるため、安全性の指標とされる負債比率や自己資本比率が低下したり、利益が変わらなければROAやROICなど効率性、収益性の指標も低下する。財務指標の悪化が株価に影響する可能性もある。

 

「荷主が直接施設を借りる」トレンドは変化?

 

 2000年代以降、荷主の物流を包括的に請け負う「3PL」と「賃貸用物流施設」の市場は連動して拡大した。3PL会社は荷主との契約期間の短期化傾向が強まる中で、施設を借りる選択によりリスクを抑えながら柔軟に物流拠点の調達が可能となった。

 

 物流不動産デベロッパーが、物流施設を賃貸するメリットのひとつとして掲げたのが「オフバランス」だ。財務状況をよくするために資産を増やしたくない――という借り手のニーズをとらえ、物流施設の「所有」と「利用」の分離が進んだ。

 

 新リース会計基準の適用により、オフバランスにできなくなり「所有」に回帰する可能性はそれほど高くない。物流施設の有力地はいまやデベロッパーにほぼ押さえられ、建築コストも上がっているため、自社で施設を建てるハードルは上がってきているためだ。

 

 物流不動産関係者によると、物流施設の賃貸借契約は長期化している。開発コストの上昇を受けデベロッパーは契約更新時に賃料を値上げするため、借り手は長期のリースを希望する傾向にあり、会計基準の変更は賃貸用物流施設の需給に大きく影響しないとも考えられる。

 

 一方、「荷主が物流施設を直接借りる」トレンドは変化する可能性がある。トータルコストを抑えるため、近年は荷主が直接施設を借り、庫内作業だけを物流会社に委託するケースが増えていたが、物流会社に施設を賃借させ寄託契約に切り替えることも考えられる。

「所有」と「利用」の分離が進んだが…
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