内航コンテナ船を活用

カーゴニュース 2025年12月16日 第5396号

TOYO TIRE
国内タイヤ輸送を内航コンテナ船にシフト

輸出用コンベア使い荷役作業負担を半減

2025/12/15 16:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 海運 環境・CSR

 タイヤ製造大手のTOYO TIRE(本社・兵庫県伊丹市、清水隆史社長)は、内航コンテナ船を活用したタイヤの海上モーダルシフトを推進している。三重県の工場から広島県への製品輸送の一部について、トラック輸送から内航コンテナ船を活用した海上輸送に切り替えた。

 

 これにより、全行程をトラックによって陸上輸送する場合と比べて、CO2排出量を56%削減したほか、ドライバーの荷役作業の負担も半減し、輸送の効率化とコスト削減を実現した。

 

 TOYO TIREのSCM本部物流部企画管理グループの酒井武博氏は「当初は広島県に中継倉庫を構える予定だったが、コスト面で課題があった。しかし、現地に何度も足を運ぶことで、納入代行倉庫の空き情報を入手し、スペースの確保をすることができた」と振り返る。

 

 また、内航コンテナ船を利用することでそれまでトラック1台ごとに管理してきた納品の順番が、コンテナに積載するタイミングで前後するという問題も生じた。これに対し、TOYO TIREは海上コンテナそのものに番号を振り管理する体制を整えて対策し、納品時の混乱を解消した。

モーダルシフトのスキーム

14年から継続的に海上モーダルシフトを推進

 

 TOYO TIREは「サステナビリティ経営方針」において脱炭素とサプライチェーンのサステナビリティ促進を重要課題として掲げ、モーダルシフトをはじめとする環境負荷低減の取り組みを継続している。

 

 同社では従来、基幹工場である仙台工場(宮城県岩沼市)と桑名工場(三重県東員町)から、国内各地区の倉庫まで製品をトラック輸送していた。しかし、タイヤはかさばる貨物であり物量も多いことから、2014年に宮城県および三重県から九州・北海道への一部輸送で、RORO船や長距離フェリーを用いた海上モーダルシフトを開始。17年には、三重県から全国各地の顧客拠点への輸送において、トラックから鉄道への切り替えを実施し、日本物流団体連合会が主催する第21回物流環境大賞の物流環境保全活動賞を日本通運、JR貨物と共同で受賞した。

 

 その後も継続的にモーダルシフトに取り組んできたが、RORO船や長距離フェリー、鉄道輸送の利用拡大には一定の制約があり、既存の手段による推進には限界があった。そこで、海上輸送の“第3の輸送モード”である内航コンテナ船に着目。23年から、桑名工場から広島県への製品輸送において内航コンテナ船を活用した海上輸送への切り替えを計画し、内航コンテナ船輸送の井本商運(本社・神戸市中央区、井本隆之社長)との調整を開始した。

 

 RORO船や長距離フェリーに比べると、内航コンテナ船を製品輸送に活用する事業者はまだ少ない。原因として、内航コンテナ船は、貨物の輸出入に使われる国際海上コンテナを積載する船舶として知られ、国内の輸送モードとしては馴染みが薄いことにある。TOYO TIREはもともと海外への製品輸出が多く、国際海上コンテナのオペレーション等のノウハウを有していたため、内航コンテナ船を利用することは比較的ハードルが低かった。

 

 内航コンテナ船の利用にあたっては、トラック輸送に比べリードタイムが長くなるという課題があったが、同社は在庫の管理方法を変えることで対応。具体的には、従来は桑名工場に隣接する外部倉庫に製品を保管し、オーダーに応じて広島の納入代行倉庫へジャスト・イン・タイム納品を行っていた。このスキームを変更し、桑名工場に隣接する外部倉庫の利用を取り止め、広島の納入代行倉庫の保管能力を高め、川下側で在庫を確保するスキームを採用。これにより、悪天候等を理由に海上輸送で遅延が発生した場合でも欠品が発生しない体制を整えた。

 

川下側で在庫を確保
海外輸出用コンベアを活用

空コンテナ回送便を国内輸送に活用

 

 24年からは、本格的な運用を開始。井本商運が四日市港~広島港間で運航していた空コンテナ回送便を、国内貨物の輸送に用いるもの。桑名工場でタイヤを積んだコンテナを四日市港までドレージし、内航コンテナ船に積み替えて広島港まで輸送。納入代行倉庫で荷降ろしした後、空になったコンテナを広島港に返却。当該コンテナは広島県の他の荷主に供給され、輸出に使われる。

 

 桑名工場でタイヤをコンテナに積載する際には、海外輸出に使用している専用コンベアを利用し、トラックドライバーの荷役作業の負担を半減した。さらに、内航船による海上輸送だけでなく、トラックや鉄道を用いた輸送も併用することで、輸送モードを複線化。災害等へのリスク分散を図ることで、BCPに対応した安定的な物流体制を構築している。

 

 25年からは、山口県防府市向けに同スキームの水平展開を開始。将来的には、現在、仙台工場・桑名工場から国内各地へ向けて長距離フェリーやRORO船を活用している国内アフターマーケット用の輸送でも内航コンテナ船の利用を目指す。

 

安定供給へ物流の計画化が重要に

 

 一連の取り組みは第26回物流環境大賞の「低炭素物流推進賞」を井本商運、オーシャンネットワークエクスプレスジャパン、新洋海運と共同受賞している。併せて同社はエコシップ・モーダルシフト事業実行委員会から「令和6年度エコシップマーク認定事業者」に選出され、同委員会から「海運モーダルシフト大賞」を受賞した。

 

 TOYO TIREのSCM本部物流部部長の田川慶太氏は今回の海上モーダルシフトについて、「日本には古くから海上輸送のネットワークがあり、全国各地に地方港が存在している。このインフラを活用しないのはもったいないと感じていた」と説明。製品の安定供給に関し、「これまでは欠品させないため、いかに早く納品するかということが重要視されていたが、これからは物流の計画化を進めることが重要になる」と指摘し、「内航コンテナ船を活用する事業者が増えれば、運航する船の便数も増えるのではないか。このスキームを積極的に社外へ発信し、取り組みを広げていきたい」と語った。    

田川氏(左)と酒井氏
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
  • バックナンバー

日付で探す

* 毎週火曜日・木曜日発行。(祝日は休刊)

第一倉庫株式会社 日本通運 uprのピーアール。 鉄道貨物協会 第一工業株式会社 アライプロバンス ジェイエスキューブ プロテクティブスニーカー協会 A-TRUCK 富士物流のホームページにニュースを提供中!! 日通NECロジスティクス提供 物流用語集