カーゴニュース 2024年11月5日 第5289号
マーケティング論に「市場が衰退し、消費が落ちた場合、値下げをするか、新商品に代えるか、さもなければ撤退するか」という説がある。いろいろ事情もあるが、僕なら葉書30円、封書50円に値下げする(赤字が出るのは同じこと。どうせ固定費)。10月5日にローソンで、スマートレターを買おうとしたら180円のだけ山ほどあった。店員はびっくりした顔をしていた。いずれにしてもネットには負ける。
有名な「マーケティング・マイオーピア論」というのがある。マイオーピアは近視。1940年ごろのアメリカでこの説は生まれた。繁栄を謳歌していた旅客鉄道とハリウッドの映画産業の各社は今後、大発展するだろう航空、マイカー、テレビ産業に対して自らの商品・サービスの機能性能アップで対応しようとした。それで勝てるわけはない。目先の対応策だけを考え、市場がどうなるかに対応しなかった。近視。
一方、遠視は破綻したコダック社が例で、写真用品産業で同社は世界市場唯一の巨人だった。将来の写真市場はディジタル化されるだろうとは全ての人が考えていた。コダックは豊富な資金力でディジタル化社会に向けて他の追随を許さぬ研究開発投資を行い、独走状態。ところが過渡期である現在がお留守になった。それまで協賛していたロスオリンピックの写真について公式スポンサーを少しのお金をケチって他社に奪われ、カメラ付きフィルムでは他社が先行、ついに経営破綻、一部を残して消えて行った。先ばかり考えていて、手元がお留守になった。これをマーケティング・ファーサイト(遠視)と言う。
企業経営は近視でも遠視でもいけない。つまり、産業・企業経営の「遠近両用眼鏡」論である。翻って今の物流はどうだろうか。遠視であるなら「DX」、「AI」、「ロボット」、「ドローン」、「自動物流道路」、「自動走行トラック」、「連結トレーラー」、「貨物新幹線」エトセトラ、エトセトラ。では、近視はどうだろう。運賃の値上げと荷主との取引条件の改善くらい。ここは遠近両用眼鏡の出番だが、実際に我々が普段、遠近両用眼鏡を使ってみるとこれは実に煩わしい。使いこなすには工夫がいる。マーケティングは面白い、ただ、そのためにはコツがいる。常に市場を見ている姿勢である。
自民党総裁選をマーケティングで見ると実にわかりやすい。それは戦時内閣としてのコンセプトとターゲットが明確だからである。次の選挙と自民党のイメージ回復だけであろう。遠視は度外視。石破さんは地方では圧倒的に人気があるが、党内では人気がなく、長い間、党内で冷遇されていた。しかも、日本の過疎の代表的な山陰選出である。隣の島根県はこれまで若槻礼次郎、竹下登を輩出しているが鳥取県は初めてらしい。
今回の衆院選結果はご覧の通り。野党が連立出来ない今、自民党は比較第一党でヨシとしなければ。バラマキがしにくくなってよかったのでは(?)。与党も野党も、そして有権者もみんな近視。遠視はどこへ行った。政治屋さんは超近視、目先の選挙だけ。石破さんを見ていて僕はかつての三木武夫さんを思い出した。ロッキード問題で苦戦の中、党内少数派の三木さんを持ってきた。その後は三木降ろしがある。過去、中曽根さん、小泉さんのように大化けした例もある。遠近両用がよい(両者のつながりを作る)。それとも新たに「マーケティングの乱視理論」登場かも。乱視なら汎用性がないから「個別対応」。近視の物流業界も「自分のことは自分で考えろ」ということか。政治はもともと、乱視だった。
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