カーゴニュース 2024年11月7日 第5290号
「営業倉庫」の意義に注目! オペレーションに宿る“魂”
国土交通省は1日、悪質荷主に是正指導を行う「トラックGメン」の機能と体制を拡充した。物流全体の最適化を図る趣旨から、「トラック・物流Gメン」に改称。トラック事業者だけでなく倉庫業者からも情報収集するため、発足時の162人に本省・地方運輸局などの物流担当部署から29人を増員し、各都道府県トラック協会が設置する「Gメン調査員」166人と合わせ、総勢357人体制とした。国交省は11、12月をGメンによる「集中監視月間」と位置づけ、倍増した体制で荷主・元請に対する監視を強めていく。
倉庫の寄託者=真荷主にリーチ
昨年7月の発足以来、トラックGメンは荷主・元請に対し1000件超の是正の働きかけや改善要請を行ってきた。違反原因行為のひとつである、長時間の荷待ちの発生場所は「倉庫」であることも多く、これまでトラックGメンは倉庫業者に対して荷待ち時間の改善を働きかけてきた。
一方、倉庫業者は、寄託者である発・着荷主からの指示を受けて入出荷業務を行っており、国交省が行ったヒアリングでは、寄託者(真荷主)である発・着荷主の指示の結果、違反原因行為が発生した事例も認められた。こうした倉庫側でコントロールできない荷待ちについて是正指導を受けることについて困惑の声もあがっていた。
今春成立した改正物流法には、トラックGメンの指導体制の強化を盛り込み、同法の附帯決議には「トラックGメンを物流産業全体の健全化に向けた組織とする」と明記された。これを踏まえ国交省は、倉庫で発生する荷待ちなどについて、寄託者である真荷主に是正指導を行えるようにするため、倉庫担当のGメンを設けることを決めた。
Gメン調査員と合わせ357人体制に
現行の162人に加え、地方運輸局の物流担当職員29人が倉庫担当Gメンに就任。これに全日本トラック協会(坂本克己会長)と各都道府県のトラック協会に設けられた「Gメン調査員」166人を合わせ、総勢357人体制となった。発足時の体制からは倍増した陣容で荷主対策を推進する。
倉庫担当Gメンの当面の仕事は、これまで是正指導や改善要請を受けたことのある倉庫業者に対するヒアリングだ。指導・要請を受けた事案の原因・背景を調査し、違反原因行為が倉庫業者の故意によるものでなく寄託者に起因することが判明した場合は〝真の責任者〟である寄託者に対する是正指導などを行うこととしている。
情報収集の網の目を全国に広げるため、国交省は都道府県トラック協会の「Gメン調査員」に対し、違反原因行為に関する情報を収集するよう指示した。Gメン調査員は、事業者への巡回指導を行う際に違反原因行為に関する情報を収集するとともに、運輸支局のGメンとともに荷主を訪問し、協力要請や啓発などを行う。
Gメン調査員は荷主に求められた際には身分証を提示し、法令で定められた業務であることを証明する。全ト協が実施した研修会に参加したGメン調査員からは「しっかりと情報収集を行い、運輸局が実施する荷主への是正指導をお手伝いしていく」「荷主は事業者にとっては顧客であり及び腰になりがちだが、輸送の安全確保は最も重要だ。違反原因行為を見過ごしてはならない」「国のGメンと協力しながら丁寧に荷主の協力を求めていきたい」などの声が聞こえた。
日倉協が「よろず相談室」で情報収集開始
荷主集中監視月間の開始にあわせ、国交省は倉庫の業界団体が設置した情報収集窓口とも連携する。日本倉庫協会(藤倉正夫会長)は1日から、協会HP内に設置した「2024年問題に関する相談窓口」を「トラック・物流Gメンよろず相談室」と改称。違反原因行為をしている疑いのある荷主について情報収集を強化する。
日倉協は今年3月29日に国交省に要望書を提出し、労務費などの価格転嫁に関し、標準的な運賃制度やトラックGメン制度が倉庫業には存在しないことから、実現可能な対策の検討を要望していた。今回のトラック・物流Gメンの発足は、倉庫からの荷主情報の収集を可能にした点で、日倉協の要望の一部に対応した格好だ。
ただ、トラック・物流Gメンが関与できるのは、荷待ち時間や荷役作業時間、契約にない附帯業務の指示など、倉庫で起きている「トラック事業者に関わる違反原因行為」に限られる。これらに該当しない問題行為についても、中小企業庁、公正取引委員会、厚生労働省など関係省庁が関与し、倉庫の荷主の適正取引を促していくことが求められそうだ。
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