カーゴニュース 2024年11月14日 第5292号
蓄積されたデータを開発に活かせるのが〝強み〟
――ユーザーの数が増えると、それだけ新しい機能や新しいソリューションへの要望が増えていくと思いますが、対応するための開発現場の体制はどうなっていますか。
佐々木 当社には現在は約160人の社員が在籍しており、このうち40人以上のメンバーがエンジニアとして在籍しています。「物流×デジタル」の領域でこれだけ人材リソースを割いている会社はあまりないのではないでしょうか。大手のシステム会社でも、物流システムの開発はあくまで部門のひとつであり、さらに別の開発会社へ委託するというケースが多いのが現状です。
当社では2週間に1回、システムの機能追加やアップデートを行っており、全く新しい機能の追加や使い勝手の部分で細かな修正を高い頻度で加えるなど、ユーザーからの声は随時吸い上げて機能更新に反映しています。営業サイドなどがユーザーのニーズを吸い上げ、エンジニアに伝えて開発を進めるというサイクルを確立することで、スピード感のある開発体制を構築しています。
また、当社のソリューションはクラウド上で物流データを蓄積できることを前提に作られていますから、より多くの事業者がアプリを利用するほど、幅広い情報を収集できるため、ユーザーがどのような機能を求めているかの解像度が鮮明になっていきます。そうした仕組みは他の企業にはあまりなく、当社ならではの〝強み〟となっています。ユーザーからいたいだ利用料を開発に再投資することで、さらに仕組みが強化され、より情報を収集しやすくなるという体制が構築されており、開発力で他社と差別化できていると考えています。
――情報の収集力と開発の柔軟性がサービスの強化につながっているのですね。今後のさらなるサービスの普及に向けた戦略などはありますか。
佐々木 事業者の中には、デジタル化に関してROI(投資収益率)面で懸念を抱く会社も多く、さらなるサービスの普及にはその認識をいかに変えることができるかが求められています。
従来の物流領域におけるシステム投資の考え方は、システム導入によってどれだけ人員を削減できるのかがメインとなっていました。しかし現在は、おもに法令遵守を目的としており、デジタル化によってサステナブルな物流を実現することが求められているため、人員削減自体はそれほど重要な要素ではなくなっています。まずはデジタル化への投資に対する考え方自体を変えていただく必要があり、そのためにセミナーの開催といった活動に注力しています。
デジタル化への投資をためらっているのは、中小企業に限ったことではありません。大企業の中にも、デジタル化による効率化の余地がある部分に対して、人の手でやればお金がかからない、といった考え方が根深く残っています。連絡手段が電話からメールに変わったように、生産性を考えればいつかどこかで必ずデジタル化の必要が訪れます。そのとき、どれだけ人員を削減できるかではなく、一人あたりの生産性を上げる、という部分が大きなポイントとなります。大企業の意思決定層には、そのあたりの理解がまだ進んでいない状況が散見されます。
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