カーゴニュース 2024年11月14日 第5292号

インタビュー 
課題解決には物流情報PFが不可欠・データドリブンで〝運ぶを最適化〟

Hacobu 代表取締役社長CEO 佐々木太郎 氏

2024/11/14 07:00
トラック輸送 インタビュー DX・システム・新技術

荷主を交えた「共創会議」で新サービスの開発促進

 

 ――改正物流法では、一定規模の荷主に物流統括管理者を設置する義務が課されます。こうした制度変更に対し、どのようにサービスをアプローチしていくお考えでしょうか。

 

 佐々木 当社では毎年秋に、荷主企業のCLOや物流責任者の方々をお呼びして、物流課題の解決に向けてどのような取り組みやサービスが必要なのかを議論する「未来の物流共創会議」を開催しています。物流責任者の方々の声を汲み取ることで新たなサービスにつながることもあり、そうした流れの中で生まれたのが、8月に発表した業界横断型の「物流ビッグデータラボ」です。

 

「共創会議」で荷主の意見を収集

「物流ビッグデータラボ」は企業間で物流データを共有・分析して共同輸配送を検討したり、物流効率化に向けた「データドリブン・ロジスティクス」の普及を目指すもので、当社サービスのビッグユーザーとして同じ仕組みを使い、相互に物流データを利活用しやすい複数の荷主が参加しています。第1弾として、アスクルさん、キリンビバレッジさん、スギ薬局さん、日本製紙さん、YKK APさんが参画しており、この取り組みにも各荷主のCLOに相当する方々が関わっています。

 

 協力していただける荷主はなるべく異業種であることを意識しました。同じ業界では繁閑の差もほぼ一緒なので、それよりは異業種で連携したほうが化学反応が起きるのではないかと思いました。今後も参画企業はどんどん増えていく予定で、同業種の荷主も参画してくると思いますが、まずは完全な異業種同士の連携から展開していきます。

 

 これまでの共同輸配送は、仲の良い企業同士のトップや物流担当者が、どんな情報を共有し、どの路線で、どの荷物から着手するのかということを話し合いながら決めるのが主流でした。ですが、私たちの取り組みの場合はすでに大量の物流データがあり、そこから共同化の可能性がある部分を見つけて効率的に実行までつなげていくことが可能です。

 

 こうした取り組みを汎用化して、より多くのユーザーが共同輸配送を行えるようにするのが「物流ビッグデータラボ」の目指す未来です。リリースの発表以降、ラボへの参加を希望する企業からの問い合わせを多くいただいています。

 

 

「物流ビックデータラボ」には多数の荷主が参画

――業種を超えた荷主が続々参加することで、物流におけるデータドリブンの可能性がますます広がっていきますね。最後に、今後の新しいサービス展開や目指すビジョンについて教えてください。

 

 佐々木 11月から、PSI(生産・販売・在庫)情報を共有・分析することで輸送量の平準化を実現できるサービス「MOVO PSI(ムーボ・ピーエスアイ)」の提供を開始しました。サプライチェーンマネジメントの基本要素であるPSI情報をメーカーと卸などが共有し、AI技術で輸送量をコントロールすることで物量波動の平準化や在庫・輸送車両の削減につなげるものです。とくに物量の多い荷主を対象としたサービスとなっており、キリンビバレッジさんとアサヒ飲料さんにはベータ版の段階から利用していただき、共同で実証を進めてきました。

 同サービスのように、AIを活用したソリューションの開発は、今後も積極的に行っていく方針です。こうした取り組みを通じ、〝運ぶを最適化する〟ため、解決しなければならない課題はできる限り解決していきたいと考えています。物流の効率化に物流情報PFは不可欠であり、PFを拡大していく過程で、物流にとどまらない領域の課題すらもデジタルの力で解決できるようなレベルまで成長することを目指していきます。    

 

 

佐々木 太郎(ささき・たろう)

1977年生まれ。2000年慶應義塾大学卒業。アクセンチュア、博報堂コンサルティングを経て、09年UCLA(MBA)卒業。ブーズ・アンド・カンパニー、ルイ・ヴィトンジャパンに務め、11年グロッシーボックスジャパン創業、13年FRESCA創業、15年Hacobuを創業し現職

輸送量を平準化する「ムーボ・ピーエスアイ」
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