24年の荷主・物流業界のトレンド

カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号

2025新年特集
記者座談会 その①

2025/01/06 17:00
FOCUS

トラック不足、今年から本格化する可能性?

貨物輸送量は前年レベルを維持?(帝国データバンク)

  物流会社の大型再編劇は「24年問題」がトリガーになったことは間違いないだろうね。ところで、輸送現場の混乱は本当に何も起きていなかったのかな。

 

  NX総合研究所の試算によると、何も対策を講じなかった場合、24年度に輸送力が14%足りなくなると予測されていた。しかし、お盆前や年末の繁忙期を除けば、「トラックが足りなくて運べない」という深刻な状況には陥らなかったのではないか。経過を振り返ると、4月からの労働時間規制スタートを控えた1~3月はあえて生産量を落として様子を見ていたメーカーもあったようだ。その後、「大丈夫そうだ」と確認して通常稼働に戻しており、全体として経済活動の制約となるようなトラック不足は起きなかった。先般、一般紙で「トラックの輸送力落ちず」という記事が掲載され〝波紋〟を呼んだことも記憶に新しい。また、帝国データバンクも、24年4~7月は前年を上回る輸送量を維持しているという分析結果を発表していた。もちろん、納期が1日遅れたり、スポット輸送でトラックが確保しにくくなった――などミクロで見れば随所で影響はあったにしても、全体としてどこもかしこもモノが届かないという深刻な事態には至らなかった。

 

  トラックが足りているのか、足りていないのか――については色々な見方があって、確証のある分析結果はまだない。また、「足りていない」という状態も幾分か主観的な側面もある。もちろん、業種や企業によっても事情は異なる。ひとつ言えるのは、昨年は景気が回復しておらず、荷動き自体があまりよくなかったということもトラック不足が顕在化しなかった一因だと思う。あるいは、時間外労働の上限規制は始まったものの、実際にはドライバーの働き方が従来からさほど変わっていない、つまり、トラック事業者側の運行が従来と比べて大きく変化していない――という可能性はないだろうか。

 

  私もそこが少し引っかかっている。「運べない現象」が起きなかったのは、共同配送や車両の大型化によって物流の改善が進んだという風に素直に捉えてよいものか――そう捉えるのはちょっと楽観的ではないかと思っている。

 

 少し話を整理してみると、「24年問題」はそもそも、トラックドライバーの労務管理上の問題で、いわばトラック事業者に対する「規制」だ。しかし、この1年間でトラック事業者の労働時間違反に対する取り締まりを強化したという話はほとんど聞いていない。つまり、行政がトラック事業者の労働時間の違反を厳密かつ本格的に取り締まるようになったら、トラックの輸送力はもう1段、2段ぐらい減る可能性があるのではないかと思っている。

 

  厚労省も最初の1年はトラック事業者側の〝準備〟のための猶予期間と捉えているのではないだろうか。ドライバー労働時間の取り締まりについて、何かつかんでいる情報はある?

 

  労働基準監督署では毎年、長時間労働が疑われる事業場に対し監督指導を行っているけれど、昨年後半になっても目立って監督指導は増えておらず、運輸局のほうでも労働時間関係での行政処分は増えていないらしいね。「新たな改善基準告示が施行された初年度だからこそ事業者もコンプライアンス違反にならないよう慎重になっている」と見る行政関係者もいる。事業者にしてみれば、自社が一罰百戒の〝標的・見せしめ〟になりたくないという気持ちなのかな。ただ「慎重になっている」のは、むしろ行政側のような気もするけれど…。

 

  とりあえず1年間は〝様子見〟ということなんだろうね。行政としても、トラック事業者が自主的に規制に対応してくれるなら、ちょっと待ってみようというところは多分にあると思う。逆に言えば、労基署も今年から事業者に対する取り締まりの本気度というかギアを一段上げてくるということが容易に想像できる。

 

  ところで「24年問題」の影響は年後半から徐々に出てくるという見方が多かったが、実際には輸送力不足はさほど顕在化しなかった。その背景として、トラック輸送に関する需給バランスが挙げられるのではないか。たしかに、「24年問題」に対応できないことによる廃業や事業撤退などにより、事業者の絶対数は減少傾向にある。しかし、荷動き自体がそもそもよくない状況なので、荷量の減少と事業者の減少のバランスがまだうまく取れている状況なのかもしれない。

 

 ただ、必ずしも楽観視はできない。時間外労働の上限である「年間960時間」の使い方を、運送事業者がまだ慣れていないということもあって、とりあえず残業時間を〝先食い〟してしまった可能性があるためだ。したがって、これから年度末の3月にかけて需給がひっ迫してくる懸念はかなり濃厚なのではないかと思っている。

24年は輸送力が14%不足するといわれたが…(国交省)

  現時点でトラック不足が起きていないことをもって「24年問題」は大したことないと考えるのは早計な見方だね。24年はあくまで〝始まりの年〟であって、ドライバー不足が容易には解消せず、高齢化も進んでいることを鑑みると、今後数年間は年を追うごとに状況が悪化していくことは避けられないと思う。

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