飲料5社は「社会課題対応研究会」を発足

カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号

2025新年特集
記者座談会 その②

2025/01/07 07:00
FOCUS

【改正法を受けた動きは】

荷主は協業加速、トラック業界は「更新制」導入へ

 

  物流の主導権が荷主に移ったということは、ある種のパラダイムシフトだった。その兆しはこれまでもあったが、改正物流法に荷主への規制的措置が盛り込まれたことがトリガーとなったと言えるだろう。規制的措置に対応するために、同業種または業種を超えた連携・協業に動き出した。物流の共同化がもはや〝常道〟になった1年でもあった。

 

  確かに「24年問題」をきっかけに共同配送などの個別取り組みはもとより、物流改善に向けた業界単位での協議体の発足も活発になった。食品業界だけでも、冷食だったり、加工食品だったりと食品のカテゴリーごとに荷主が連携する動きが本格化した。また、日用品、小売など様々な業種が同業者間で連携し、実証実験を進めている。異業種同士でも、たとえばHacobuの「物流ビッグデータラボ」のように、業界横断型のデータ連携を通じて共同輸配送を目指す動きが出てきた。

異業種の物流協業も加速 (写真は日清食品と伊藤園の事例)

  冒頭で述べたように、2024年は荷主が物流の主導権を握る元年だったと思う。きっかけとなったのが、言うまでもなく、改正物流法による荷主規制だ。「24年問題」への対応は、トラック事業者の労務管理の問題を超えて、トラックの運行やドライバーの働き方に影響を与える荷主を法律で規制する方向に大きく舵が切られた。大手荷主や元請け物流会社など、サプライチェーンに強い影響力を持つ「川上」から規制していくことによって、「川下」であるトラック事業者の労働環境、経営環境を改善し、物流を維持していこうというというのが、法改正の趣旨だと思う。

 

  以前、経済産業省の物流担当者が、国交省が物流の効率化に長年取り組みながら、顕著な成果を得られなかったのは「荷主の急所を押さえていなかったからだ」と指摘していたことがある。今回は荷主に本気で改善に取り組んでもらうために、昨年4月に成立した改正物流法に荷主規制を盛り込んだということだ。経産省は、省エネ法で荷主規制の枠組みをつくった実績があり、改正物流法が大手荷主に対して中長期計画の策定・報告を義務づけたあたりは、省エネ法のスキームをなぞっている。サプライチェーンの上流に位置する荷主が物流改善に取り組めば、業務を受託する物流事業者にも改善が波及する――という狙いだ。いわば「物流改善のトリクルダウン」といったところだろうか。

 

  これは「出口」か「入口」かという問題だね。実運送を担う中小トラック事業者に対する規制、すなわち「出口」の対策だけでは不十分で、サプライチェーンの源流から正さないとダメだというのが、今回の改正物流法の趣旨のひとつだ。物流の効率化を促す法律に荷主規制を盛り込み、さらにトラック事業者と直接的な契約関係にない着荷主規制にまで踏み込んだのは非常に画期的だと思う。

 

 その一方、荷主を規制する趣旨はよく理解できるが、トラック業界の中で「物流の非効率は全部荷主のせいだ」と言わんばかりの「荷主悪玉論」が大きくなりすぎていることを少し危惧している。この1年を振り返ってみて、「24年問題」に対応するため、荷主業界とトラック業界のどちらがより多くの対策を打ったかというと、明らかに荷主のほうに分がある。その背景には、このままでは自社の商品が運べなくなるという強い危機感があり、危機意識という面ではトラック事業者よりもむしろ荷主のほうが強いと感じている。

 

  改正物流法により、一定規模以上の特定荷主には物流改善に関する中長期計画の策定が義務付けられるが、具体的な計画の中に物流の共同化や拠点集約といった施策を組み込んだり、特定荷主でなくても物流効率化を経営計画のひとつに位置付けることは増えてくるだろう。そう考えると、改正物流法が荷主に与えたインパクトは、荷主の規模に関わらず大きかった。やらなければならないことが増え、責任もかつてより重くなる分、トラック業界側にも今まで以上の自助努力のあとが見えないと、荷主側が不満を溜める結果になると思う。

  確かにね。「24年問題」を契機に荷主の中で危機感が一段と高まったことは間違いないが、それに加えて、先ほどから出ている改正法によって荷主への規制的措置が具体化されたことがやはり大きいと思う。その点から昨年1年間だけを見た場合、荷主サイドの取り組みが目立ったということは言えるのかな。だからこそ、今年以降、「我々は頑張っているのだから、トラック業界も多重下請構造の是正など、業界健全化に向けて自浄作用を発揮してくれ」という荷主からの〝打ち返し〟のようなものが出てくることを危惧している…と思っていたら、年末になって大きなニュースが発表されたね。

 

  そう。昨年12月5日に全日本トラック協会の坂本克己会長がトラック事業への「事業更新制」導入に向けて、次期通常国会に議員立法による法案を提出する考えを表明した。更新制によって、法令を遵守しない事業者を市場から退場させ、適正競争を促していくという点で、まさに業界自らの自浄作用を発揮させようという取り組みだ。

  これが実現すれば画期的なことであり、更新制導入に舵を切った坂本会長の英断は高く評価されるべきだ。ただ、制度設計はそう簡単ではない。自動車分野ではすでに、軽井沢スキーバス事故を契機として貸切バス業界で事業更新制が導入されているが、貸切バスとトラックとでは事業者数のケタが違う。いかに実効性を担保した制度づくりができるか、今年の物流業界で最大の注目ポイントのひとつだ。

 

  更新制導入については、「できない理由」ばかり並べる人たちも出てくるかもしれないが、やり遂げてほしいね。

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