荷主の物流組織は各社で様々

カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号

2025新年特集
記者座談会 その③

2025/01/07 07:00
FOCUS

【改正物流法注目の施策】

CLOに期待する役割、課題は…

 

 改正物流法は特定荷主に「物流統括管理者(CLO)」の選任を義務付けたね。「CLO」は物流業界で昨年もっとも注目されたワードのひとつだった。率直に言って、物流統括管理者のような役職を置くということは、荷主企業内における物流部門のボジションが引き上げられるという意味で、肯定的に受け取れると思う。しかし、生産部門と販売部門と緊密に連携し、時にはリードするような理想的なCLOの任務を果たせる人材がどれだけいるのかは未知数だ。〝なんちゃってCLO〟というのも出てくるのではないかという皮肉な見方もできる。

 

 CLOは物流の個別改善だけでなく、社内・社外との調整を担い、物流戦略・サプライチェーン戦略策定に責任を持つポジションと定義されている。また、経営的な視点と一定の影響力が求められることから、「役員レベル」がふさわしいとのことだ。こうしたポジションが設置されることによって、経営戦略としての物流の重要度が増し、ロジスティクス視点での発言力が強まることで、物流の改善やサプライチェーンの効率化が促進されることが期待できる。

 

 国内の上位3000社程度の大手荷主を対象に、2026年度からCLOの選任が始まるが、「物流の知見」と「経営の知見」の両方を備えた人材は現時点ではそれほど多くはないのではないか。工場が個別に物流を管理していたり、本社組織に物流部門がなかったりで、大手荷主といえども物流管理の現状は千差万別だ。組織の事情でCLOの人選に苦労する会社もあるのではないか。そもそも組織や役職の配置は個々の企業の戦略であるべきだし、「役員レベル」のポジションの配置を国が法令で強制するのはどうかという気もするけど、ここまで国が物流への関与を強めたのは、あらゆる産業を支える基盤としての維持・強化が欠かせないという判断があったからだろうと思う。

 

 26年4月以降、約3000人のCLOが誕生することになる。大手企業ではCLO人材の適材配置や育成がこれから課題となってくる。「役員レベル」ともなれば社内外に対し「適格性」を示すことも必要だ。これまでも日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「ロジスティクス経営士」という資格があったが、経営視点を持った高度なロジスティクス、サプライチェーンのスキルを客観的に評価する資格制度のニーズが高まるかもしれない。また、CLOに知見が不十分な場合、あるいはより専門性を高めるためにCLO向けのコンサルティングの活用や、CFO(最高財務責任者)やCIO(最高情報責任者)ですでにみられるようなCLOのアウトソーシング、「社外CLO」の設置なども今後は可能性として考えられるのではないか。

 

E CLOの選任義務化に乗じて、早くもビジネスチャンスとばかりにコンサルティングなどCLO関連ビジネスが増えてきた印象があるね。「社外CLO」は、CLOに関する行政側の説明をみる限り、現時点では認められないだろうね。

 

 なぜCLOが役員レベルの社員であるべきかという点について、行政側の考え方を紹介しておこう。まず、役員レベルでなければ社内外に対して責任を負えないからだ。社内で力を持っている製造や営業部門などに対しても、強い発言力を持つために、CLOは執行役員や取締役クラスのポジションであるべきとしている。また、その会社が起用しているベンダーや物流会社など社外の関係者に対し、物流改善やサプライチェーン改善について、自社を代表する立場で対応できるのは、役員レベルである必要がある――とのことだ。実際は執行役員とか取締役、SCM本部長のような立場の人が兼任する形になるのではないか。

 

 また、CLOの普及に取り組んでいるフィジカルインターネットセンター(JPIC)は、「CLOを設置するメリットは、選任が義務化される大手企業の物流改善にはとどまらない。その会社と関係するベンダーや物流会社、さらにはその下請け企業にも、CLOの意図する物流改善方針が伝わり、サプライチェーン全体で改善が進む」と期待をもって説明している。CLOが配置されている会社と取引のある会社にもCLOのカウンターパート的な担当者が置かれ、その人が自社や下請け会社の物流改善の推進役になるべきと提言していた。

フィジカルインターネットセンターが提言した「CLOに求められる要件」

E でも実際問題として、すべての特定荷主が適格なCLOを選任できるかといったら、それはなかなか難しいよ。スタートしたばかりの制度でもあることだし、CLOが業務を通じて物流への理解度を深めていくという姿があってもいいと思うよ。そこは温かく見守ろう。

 

 どうしても適切な人物がいなくて困る――となると将来は「社外CLO」制度が必要になるかもしれない。ないとは思うけど、「プロCKO経営者」のように企業を渡り歩く「プロCLO」とかね。

 

 物流体制を再編するために物流子会社を手放す荷主なども出てきており、CLOの選任義務化もあって、荷主本体に物流を統括・管理する機能を組み込んでいく事例は今後も増えていくと思う。一方で、CLOには「物流」と「経営」の両方に関する知見が求められる点からすれば、物流子会社の経営層はどちらの知見も有する希少な存在なのだから、荷主本体の役員に異動または兼任させる形でCLOに選任すればいい。物流子会社やその下請け会社との連携や意思疎通もスムーズになるから、むしろ効率的なんじゃないかな。また、物流子会社が将来のCLO候補の育成機関としての役割を兼ねるようになり、本社から人材を出向させてトップや役員層に据えるという考え方もある。

 

 会社ごとに人事制度とか子会社の位置付けに違いがあるから何とも言えないけれど、本体の執行役員兼物流子会社のトップみたいな形は今後増えるかもしれない。ただ、これまで公表されているCLOに求められる要件をみると、現時点では物流子会社のトップをCLOに選任することは認められないと思う。荷主本体の執行役員を兼務していたらOKだろうが。

 

 荷主本体で功績があった人が「ご褒美人事」としてリタイア前に物流子会社の社長に就任するということは、これまでにもよくあった。今後は物流子会社の社長が、親会社の役員としてCLOを兼ねるケースが増えてくれば、人事のあり方も大きく変わってくるかもしれないね。

 

E 物流子会社の社長職が天下り先としてではなく、キャリアプランの過程として位置付けられたら面白いと思う。例えば、本体の物流部長から物流子会社の社長に転じて、経営者の知見を養った上でCLOに就くとかね。CLO制度が創設された暁には、こうした変化が起こり得る可能性はかなりあると思うな。

JPICの「CLO協議会」の第1回会合
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