荷主の物流組織は各社で様々

カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号

2025新年特集
記者座談会 その③

2025/01/07 07:00
FOCUS

【物流業界の再編】

大型再編の動き、規模の拡大志向が強まる

 

 昨年は物流業界の大型再編が非常に進んだ年であり、買収に絡んで投資ファンドの存在感が高まったことも印象的だった。物流という比較的注目度が低かった産業セクターに対して、「2024年問題」を契機として再編の機運が一気に高まり、その結果として投資対象先としての物流にも注目が集まったということだと思う。物流業界では規模拡大への志向がさらに強まったことで、大手企業を中心にM&Aへの意欲がさらに高まった。また、「PBR1倍割れ」に代表される株式市場からのプレッシャーが強まったこともあり、買収防衛や経営の機動性を確保する狙いから、MBOによる上場廃止を選択する事例もあった。

 

 2024年は物流関係のM&Aの件数が過去最高のペースで推移し、業界再編の動きが本格化してきた。

 

 物流業界でM&Aが増えた背景には、その「動機」と「機会」の両方が増えたことが挙げられる。まず「動機」の面で見ていくと、物流業界は成熟産業で、シェア拡大が競争優位に直結し、「規模のメリット」がより大きくなった。また、「2024年問題」への対応策として、物流拠点や車両、ドライバーなどの人材を獲得できるM&Aの有効性が高まった。上場企業では、東証からの「PBR1倍割れ」改善要請など「戦略的成長投資」への圧力が強まったこともM&Aの引き金となっている。

 

 一方、「機会」の面でみると、経営効率の観点から、非中核事業を切り離す動きが加速し、荷主企業では物流子会社の売却・譲渡が増えている。トラック運送業界では、中小の会社が後継者難や人手不足で自力での会社の将来を描きづらくなり、M&Aによって会社の存続を志向する会社が増えてきた。

 

 昨年は、物流業界でも大型のTOBやMBOによる株式非公開化の動きが話題を集めた。また、経産省が「企業買収における行動指針」を策定し、指針に沿った「同意なき買収(敵対的買収)」に〝お墨付き〟を与えたこと、それに政策保有株の縮減を求める動きも重なり、TOBはこれからも増えていくことが予想される。最近は「対抗TOB」も珍しくなくなってきており、買収合戦で価格がつり上がり、のれんの減損で経営自体に影響を及ぼすリスクも高まっている。今後は物流業界でも第2弾、第3弾の大型再編が考えられ、買う側と買われる側のどちらにもなる可能性がある。上場している会社は「緊張感」「覚悟」を持った経営がより一層求められてくるのではないか。

2024年に「話題」となったⅯ&A等再編の動き

 なるほど。物流業界で大型のM&Aが増えた背景にはファンドの動きがあり、企業価値を引き上げる最短ルートのひとつがM&Aだろうけど、生き残るための選択肢でもあるね。

 

 ファンドが物流業界に目を付けたのは、再編を通じて企業価値を磨ける余地の大きい会社があるというのが理由のひとつだ。それと、トラックや倉庫などの資産をたくさん保有しているアセットリッチな会社が多いこともあり、解散価値が高いというか、最悪の場合に解散してもお釣りがくるという身も蓋もない話もある。物流会社の中にはPBR1倍を超えるなんて到底無理だ――という会社は少なくないだろうし、株式の流動性が低ければ、わざわざ少なくない上場コストを払ってまで上場を維持する理由もないと判断する会社が増えてもおかしくはない。株式市場の厳しい要請に物流会社が晒されていると言える。

 

B ファンドの一般的な企業に対する圧力というのは、資産を持っている会社に資産売却を促し、資産を減らして資本効率を上げる――ということを目的としたケースが多いが、物流会社はもともと資産でビジネスをしている面があるから、資産を減らせば単純に企業価値が上がるとは到底思えない。もちろん、保有する資産でどれだけ稼いでいるかは問われてしかるべきだけれど。

 

 ROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)といった近年重視されている経営指標は、基本的に資産が少ないほうが改善しやすい。しかし、物流会社は一種の装置産業であり、アセットで食べているわけで、どうしてもアセットリッチになってしまう。その割に利益率が低いというのが、今のマーケットの言い分だろうけど、それはちょっと厳しいというか、物流会社という業態と投資家や株式市場が求めているものがミスマッチになっていると感じる。

 

 外資系ファンドは資本力が強く、買収で値付け競争となった際、国内の事業者ではちょっと太刀打ちできないのではないか。今後、日本の大手物流事業者が外資ファンドに買われるという事態が起きるのか、そこを危惧している。

 

 すでに目を光らせていると思う。陸運・倉庫系の物流大手の時価総額を見ると、トップのSGホールディングスが1兆円前後で、その他の大手企業でも計算上は数千億円あれば経営権を握ることができる。全国各地にネットワークを持ち、大型倉庫を数多く所有する大手物流会社をかなり安価に買うことができると思うと、ちょっと怖い感じがするね

 

B 外資系が日本の物流会社を買収する場合、業態によっては外為法の外資規制に引っかかる可能性もあるので、そんな簡単にはいかないだろうけどね。

Ⅽ&FロジをめぐるTOB
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