物流拠点支援の新スキームを検討

カーゴニュース 2025年2月4日 第5313号

国交省 
「基幹物流拠点」制度を創設へ

物流施設支援で新スキームを構築

2025/02/03 17:00
FOCUS 行政 トラック輸送

 国土交通省は1月29日、「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」(座長=大島弘明・流通経済大学教授)の第3回会合を開催し、幹線輸送と地域配送の結節点機能を持つ「基幹物流拠点」を整備する政策の方向性を示した。社会インフラである物流の要となる「基幹物流拠点」の整備を促進するため、補助金交付や税制を活用した支援制度を立ち上げる方針。新制度を創設することで、物流の関係者の連携を緊密化するとともに、物流の受益者となる自治体をも巻き込んだ支援スキームを構築したい考えだ。加えて、老朽化した物流施設の建て替え支援にも取り組む。3月下旬に開催する次回会合で、方針と施策を取りまとめて公表する。

 

基幹物流拠点を認定する6つの要件を提示

 基幹物流拠点はトラック幹線輸送拠点と地域の配送拠点の役割を兼ねるとともに、ドライバーの労働環境改善や地域経済の活性化に寄与し、災害時には緊急物資の保管・供給拠点としての機能が必要との考えを示し、認定要件〈表〉として6項目掲げた。事業者や自治体などから申請のあった物流施設を、国が要件に照らして審査。基幹物流拠点として認定した施設に対し、税制優遇措置や補助金交付などにより支援を行うことになりそうだ。国はこれまで、倉庫・トラックターミナル・デベロッパーの開発した物流施設などに対する個別の支援を実施してきたが、新しいスキームでは物流事業者にとどまらず、自治体も主要な関係者として関与できる。これにより、基幹物流拠点の開発に際して、農用地区域、保安林区域、市街化調整区域などでの開発許認可取得を円滑に行えるようにする。

 

 要件となる6項目をみると、「トラック輸送の変容への対応」では、幹線輸送と地域配送の接続機能のほか、中継輸送を可能にする施設や、休憩・睡眠、コンビニなどドライバーの労働環境改善のための機能、荷捌きスペースの設置などを想定している。

 

 「物資の流通への対応」では、物流拠点の集約や合理化の受け皿となる施設で、多くの貨物を集荷できるよう倉庫の集積地に近接することや、倉庫機能とトラックターミナルの複合機能による物流の効率化などが必要だとした。また、中継輸送拠点として積み替え荷物を一定量集荷できるようマッチングシステムを導入することを示した。

 

 「地域における産業政策・地域活性化政策への対応」では、自治体が地域振興などを図る際、物流事業者と自治体が連携して整備に取り組めるようにする。自治体が関与する整備計画を策定することで、都市計画などの策定や各種許認可取得を円滑に行えるようにする。また、半導体産業など地域での新産業創出による需要にも対応できることなどを挙げた。

 

 「交通のアクセス性」では、高速道路ICにランプウェイなどで直結・近接していることを要件にした。加えて、モーダルコンビネーションの観点から、貨物鉄道との結節・中継機能を拡充することも重要であり、基幹物流拠点の近隣にある貨物駅では、構内倉庫や積み替えステーション、パレットデポなどの整備も求めた。

 

 「DX・GXへの対応」では、ダブル連結トラックや自動運転トラックの普及に合わせ、車両の規格・形態に整合することや、乗り入れを容易にするため既存インフラに接続する進入路の整備を促進することが必要とした。さらに、物流の脱炭素化に向け、水素や再生可能エネルギーの充填・充電設備の設置などが重要だとした。

 

 「不特定多数の者への開放、防災機能等」では、中小の物流事業者も含め、輸送を担う者に開放された施設であることが重要で、国や自治体など公的主体の関与の下に整備し、第三セクターなど民間が運営することも可能とすべきだとした。とくに運営に関しては、災害時の緊急物資の保管やライフラインとしての物資の安定供給の拠点としての機能が不可欠だとした。

 

 基幹物流拠点に認定されるためには、6項目をすべて備えることが求められるため、多くの物流施設には高いハードルとなりそうだ。ただし、6項目のうちの一部だけを備えた物流施設であっても支援対象とする方針。その際には、基幹物流拠点と比べ、支援内容に多少差が付くことになると想定される。

 基幹物流拠点以外の物流施設についても〝公共性の高さ〟を基準として支援対象に含め、老朽化による建て替えなど必要な整備を促進する。基幹物流拠点以外で「公共性の高い物流拠点」となるのは、港湾での通関・検疫などの輸入対応に係る物流拠点や、公共トラックターミナル、トラック協会が運営するトラックステーション、自治体が関与した物流拠点など。そのほか、国が施設の概要を把握することで、デベロッパーが開発した物流施設なども対象に含める方向。

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