カーゴニュース 2025年6月17日 第5347号
国際物流のラストワンマイル ドレージ問題の解決に迫る!
国際海上コンテナ輸送のラストワンマイルを担うドレージの供給不足が徐々に顕在化してきた。ひっ迫が先行しているのが東京港。昨年度の東京都トラック協会海上コンテナ専門部会の調査によると、2024年3月時点の運行稼働台数は10年前と比較し約1600台が減少していた。海コンドレージは一般のトラックに比べ価格改定が遅れていたが、需給バランスの変化を受け、一部では値上げ交渉が進捗したとも報告されている。
埼玉、千葉など内陸の業者が撤退か
「今年に入ってから1本あたり3000円くらい値上げしてもらえた」――そう報告するのは、京浜港の海コンドレージ会社の幹部。自社ドライバーの待遇改善に加え、協力会社を確保するためにも元請けとして値上げは必至だ。近年、業界内では20ftコンテナは40ftよりも運賃が安いため、20ft専用のシャーシをあえて減らしていく傾向が強まっており、とくに20ftの運賃は値上げ環境が整ってきたという。
ドレージは商社やメーカーなどの「真荷主」の仕事を海貨業者を経由して受注しており、海コンドレージ会社にとって直接の荷主は海貨業者であることが多い。もともと受注が多層構造になっていることに加え、海貨業者はほとんどの場合、利用運送会社として複数の海コンドレージ会社を起用し、ドレージ会社からの見積もりを比較できるため、従来、運賃が上がりにくい傾向にあった。
海コン車両は、「標準的運賃」において、トレーラの4割増しという目安が示されているが、実勢運賃との乖離が大きく、標準的運賃の「届け出はしたけれども利用していない」「届け出自体もしていない」という企業も多い。しかし、東京港では、埼玉、千葉などの内陸の業者がドレージから撤退し始め、昨秋頃から、「仕事量が増えた時にドレージのひっ迫が表面化してきた」。このため、海貨業者との価格交渉も徐々に進み始めているという。
運行台数が減少、協力会社で顕著に
東京都トラック協会海上コンテナ専門部会の調査によると、東京港に出入りする24年3月時点の運行台数は3万2698台で、調査を開始した11年と比較し、約6480台が減少し、10年前の14年と比べても約1600台減少していた。自社の運行台数が増えている一方、傭車が大きく減少しているのも特徴的だ。宮治豊部会長はこうしたドレージの需給の変化について「荷主に対し、数字をきちんと示していくことが必要だ」と強調する。
同部会では24年度に部会員全体の1割に相当する10社が廃業や海コン輸送から撤退などを理由に退会したことを踏まえ、6月3日開催された総会で、簡易な方式でアンケートを実施した。それによると、総会に参加した33社のうち、「自社ドライバーが減った」企業は12社、「協力会社の数が減った」企業は18社、「協力会社のドライバーが減った」企業は8社あることがわかり、とくに傭車の輸送力縮小がうかがえた。
一方、「横浜から以西は、ドレージ会社の数がそれほど減っていない印象で、東京港に比べ値上げ交渉に苦戦している」との見方もある。「20ft、40ftの運賃統一が定着してきているのは東京港だけではないか」と阪神港のドレージ会社の幹部は指摘する。近畿トラック協会が「標準的運賃」と収受運賃との乖離状況について調べたところ、「海上コンテナ(ドレージ)」は標準的運賃よりも低いことに加え、「乖離は40%以上50%未満」と乖離度が大きかった。
海コンドレージは一般のトラック輸送に比べ、輸送原価がかかる。トラクタ1台あたりシャーシ3~4本が必要で、車両の整備費、車検費用もその分かさむ。港頭地区に車庫を確保する費用負担も大きい。工場・倉庫などに対しては請求・収受が一定程度進んでいるが、コンテナターミナルでの待機については国土交通省から「荷待ちに該当する」との見解が示されたものの、転嫁に至っていない。
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