改正物流法のトラック関連のポイント

カーゴニュース 2025年2月18日 第5316号

FOCUS/改正物流法
運送取引に関する規制が4月スタート

「実運送体制管理簿」と「健全化措置」の注意点は

2025/02/18 07:00
FOCUS 行政 トラック輸送

 改正物流法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案)のうち、運送取引に関する規制が4月からスタートする。とくに注目されているのが、元請けトラック事業者に義務付けられる「実運送体制管理簿」の作成と、下請けを2次までに抑える「健全化措置」だ。国土交通省はこのほど「改正貨物自動車運送事業法Q&A」を作成し、地方運輸局を通じ周知を図っていく考え。新たな規制のポイントを検証した。

 

 

実運送体制の把握、「誰が」「どこまで」?

 

 改正貨物自動車運送事業法の要点は、①運送契約に関する書面交付②「実運送体制管理簿」の作成③「健全化措置」の実施――の3つを義務化したこと。①~③の義務違反に対しては行政処分が科せられるとともに、「健全化措置の実施」の一部については、違反したトラック事業者には罰則(行政罰)を科す事項が含まれている。このため、運送取引の中で「誰が義務主体となるか」をきちんと把握することが重要となる。

 

 「実運送体制管理簿」の作成は「元請けトラック事業者」に義務付けられる。真荷主(メーカー、商社など)から引き受けた「1・5t以上」の貨物の運送依頼において、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用した際は、1案件の運送ごとに作成し、①実運送事業者の商号または名称②実運送事業者が実運送を行う貨物の内容と区間③実運送事業者の請負階層(1次~n次)――の3点を必ず記載する。

 

 ここで注意したいのが「路線便」の扱いだ。元請けトラック事業者が路線便に出す荷物の重量は「1・5t以上」になるケースがあり、この場合は「実運送体制管理簿」を作成しなければならない。また、特積み会社Aがある地域の特積み会社Bと提携し、地域の運送会社を使ってエンドユーザーに運ぶ「連絡輸送」についても記載対象となる。

 

 なお、自社トラックを所有しない、つまり実運送機能を持たない利用運送事業者は、「元請け事業者」との位置づけにはなく、「実運送体制管理簿」の作成義務はない。ただ、トラック事業者との運送契約の書面交付は義務であり、場合によっては元請に対して輸送実態を問い合わせることが求められるという。

 

 また、物流子会社が「利用運送業者」として輸送を委託する場合は、同社は“荷主”の位置づけで作成する義務はない。一方、自社でトラックを保有する物流子会社が親会社等から「実運送会社」として運送業務の委託を受け、一部を他のトラック事業者に委託するケースは物流子会社が「元請け」にあたり「実運送体制管理簿」の作成義務者となる。

 

「健全化措置」、委託、受託側双方に努力義務

 

 「健全化措置」には、すべての実運送会社・利用運送事業者を対象とした「取引の適正化」と、大手トラック事業者を対象とした「運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任」がある。いずれの規制的措置も実運送を行うトラック事業者が収受する運賃・料金を引き上げることを目的としている。

 

 「取引の適正化」のポイントは第一に、運送を委託する側と受託する側の双方に対する規制であることだ。委託する側が運送コストを把握して利用運送の申し込み(発注)を行い、一方の受託する側は、提示された運賃・料金がコストを下回る場合に運賃・料金引き上げの交渉を申し出ることが努力義務とされる。

 

 さらに、委託を受けた事業者(1次)が、さらに下請(2次)を利用する場合、2次事業者が3次以下の事業者に委託しないよう制限を付すことも努力義務に定めた。ただ、国交省によれば、繁忙期などに「3次」以下に委託する場合、3次以下の事業者が十分な運賃・料金を収受ができていれば、健全化措置違反にはならないという。

 

 なお、この「健全化措置」はあくまでも努力義務であるため、この措置を怠った場合の行政処分や罰則の規定はない。しかし、運賃・料金の水準を不当に据え置くなどトラック事業者の健全性を阻害する疑いがある場合については、トラック・物流Gメンが是正指導を行い、改善がみられない場合、要請・勧告などの重い処分を科す。

 

「運送利用管理規程・管理者」違反には罰金百万円

 

 「運送利用管理規程の作成」と「運送利用管理者の選任」は大手のトラック事業者を対象とした規制的措置。前年度に行った利用運送に係る貨物取扱量が100万t以上の場合、「運送利用管理規程」を作成するとともに「運送利用管理者」を選任する義務がある。なお、あくまでもトラック事業者を対象とした措置であることから、実運送を行っていない利用運送業者にはこの義務は課せられない。

 

 「利用運送管理規程」には、健全化措置の方針と取り組み内容、実施のための管理体制、選任した運送利用管理者などを記載する。運送利用管理者は「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」と定められ、取締役や執行役員などを想定。選任された管理者は責任をもって健全化措置を推進するとともに、実運送体制管理簿の作成事務を監督する。

 

 なお、「運送利用管理規程」の作成と「運送利用管理者」の選任を怠った場合は行政処分の対象となる。加えて、届け出た運送利用管理規程によらず事業を行ったケースや、運送利用管理者の届出をせず、または虚偽申告をしたケースには、百万円以下の罰金が科せられるため注意が必要だ。    

「実運送体制管理簿」作成義務は運送事業者/利用運送業者の違いによる
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