離れていても常時監視可能に

カーゴニュース 2025年5月29日 第5342号

三井化学  
DX推進で輸送の安全確保を高度化

車両動態監視システムで安全運行を支援

2025/05/28 16:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 危険物・化学品

 「安全はすべてに優先する」という考えに基づき、無事故・無災害の実現に取り組んでいる三井化学(本社・東京都中央区、橋本修社長)。同社物流部は保安の確保に関する理念として位置付けているレスポンシブル・ケア基本方針に基づいて、輸送における安全性向上に向けた取り組みを進めている。様々な安全対策を講じている中でも、タンクローリー車の火災事故対策は重要な取り組みのひとつだ。同社は、昨年末にドライバーが運転席(キャビン)からタンク内の温度・圧力やタイヤの温度・空気圧をモニタリングできるシステムを導入した。タンクとタイヤの状態の計測値をデジタル変換し、ドライバーと運行管理者が常時監視できるようにすることで、異常の予兆検知と予防措置を行うことを可能とした。

キャビンから温度・圧力をモニタリング

 併せて、事故発生後の2次災害防止として、「緊急連絡カード(イエローカード)」情報をQRコード化し、輸送車両に貼付して運行する取り組みを実施している。これにより、事故発生時にドライバーがイエローカードを提示できなくなった場合にも、第三者から消防や警察などに必要な情報を伝達することが可能となり、迅速な処置による減災が期待できる。2024年1月に実証実験を開始し、昨年末に本格運用に踏み切った。同社は今後もデジタル技術などを活用し、さらなる安全輸送を実現していく。

 

タンク、タイヤの温度・圧力を運転席から確認

運行中でもタイヤの温度・内圧を把握

 液化ガスを輸送する際は高圧ガス保安法に基づき、移動開始時と移動終了時の圧力値と漏れなどの異常確認が義務付けられていることから、これまではドライバーがタンク上部に設置されたアナログ計器が表示する数値を目視確認する必要があった。そこでプラント監視システムの技術を応用し、ドライバーが運転席に設置されたモニターによりタンクの温度・圧力を確認できるシステムを構築。デジタル化された数値は、ドライバーと運行管理者の双方で共有できるため、ドライバー単独の心理的負担も軽減できる。

 

 デジタルトランスフォーメーション推進本部物流部長の依田馨氏は「われわれ化学メーカーは大きな社会的責任があり、グループが定めたレスポンシブル・ケア基本方針に基づき様々な安全対策を講じている。危険品輸送においてもデジタル技術を活用した安全対策を実施することで、これまで以上に高度な保安の確保を図ることができる」とし、車両監視システムの意義を強調する。

 

 デジタル化はドライバーの労働環境改善にもつながる。このシステムを活用すればドライバーがタンクの温度・圧力を確認するためのハシゴ昇降による身体的負担や高所からの墜落転落労災のリスク軽減が期待できる。依田氏は「(輸送会社には)安全輸送のための必須業務をしっかりと行っていただくが、軽減できる負担は軽減し、効率的な乗務を行っていただくことが重要だと考えている。荷主としてデジタル化を促進し、ドライバーの労働環境改善に貢献していきたい」と述べ、DXによる取り組みのメリットを強調する。

 

「TPMS」でタイヤバーストを未然に防止

 

 タンクローリーを利用して危険品の陸上輸送を実施する際は、走行中にタイヤが突然破裂するタイヤバーストの発生を防止することが非常に重要だ。三井化学はタイヤの異常を早期発見できるようにするため、リスクの高い製品輸送を行うすべてのタンクローリーのタイヤに「TPMS(タイヤ空気圧監視システム:Tire Pressure Monitoring System)」を導入し、タイヤの温度・圧力を運転席のモニターから常時監視できるようにした。物流部安全品質グループ・グループリーダーの中村淳氏は「タイヤの温度・圧力の数値が一定の閾値を超えた場合、アラーム機能でドライバーに異常を知らせる機能があり、閾値を超えていない場合も常時モニタリングできる。タイヤの温度・内圧の数値はデジタル化されており、通信機能によって運行管理者のもとに送ることができる。ドライバーと運行管理者の双方が情報共有することで、より安全な運行につながる」と利点を説明する。運行管理者もデータを把握できていることにより、ドライバーは安心感も得られる。

 

 ドライバーは乗務前と乗務後に毎回タイヤの空気圧や摩耗度などの点検を行っているが、システムを活用することで運行管理者がタイヤの状態を常に確認することが可能となり、これまで以上にタイヤバーストの発生を未然に防止できるようになる。TPMSは安全確保に有効で、海外では法令で装着を義務化している国もある。

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