カーゴニュース 2025年11月11日 第5386号
自由民主党の物流倉庫振興推進議員連盟(会長=浜田靖一衆議院議員)は5日、自民党本部で総会を開き、倉庫業界に対する意見聴取を行った。業界からは日本倉庫協会(藤倉正夫会長)、日本冷蔵倉庫協会(大櫛健也会長)、全国定温倉庫協同組合(定倉協、太宰榮一理事長)の3団体が出席し、出席した国会議員に要望を伝えた。
日倉協と定倉協は連名で文書を提出し、備蓄米制度の安定的な維持を図るため、緊急出荷などにより契約期間内に在庫が大幅に減少するなどした場合の補償について、実倉庫事業者を守る制度の新設を要望した。
日倉協の藤倉会長は「備蓄米が放出され、在庫がなくなった場合、受託事業体は保管料の補償を求められない。受託事業体から末端の実倉庫事業者に至る契約においても同様だ。今回のような備蓄米の大量放出の結果、実倉庫保管事業者の経営は著しく不安定なものとなっている」と窮状を訴えた。
定倉協の太宰理事長は「政治的な判断による異例の政府米の緊急放出が実施された後、25年産の新米も流通し始めた現時点では、市場には備蓄米が十分に提供され、一時的には価格の安定化の効果をあげたと受け止めている。しかし、備蓄米の緊急放出は永年備蓄米の保管管理に心血を注いできた定温倉庫会社の犠牲の上に成り立っていることを認識願いたい」と強調。「急な政治判断により出荷されたため、定温倉庫業界は大きな売上減少、保管料の逸失を被ることとなり、その経営は危機に瀕している」と支援措置を訴えた。
また、緊急出荷を行うために発生した様々な費用増に対しても手当てがなされていないため「備蓄米の保管業務から全面撤退あるいは一部撤退した事業者も出てきている。今後も緊急放出が必要になった場合、出庫対応力が低下するリスクがある」と指摘。緊急出庫された政府米の逸失保管料に対する支援措置の実現と、緊急出庫に伴うすべての追加経費の実費精算を要望した。
〝倉庫会社の権利を守る〟制度を要望
さらに太宰理事長は「政府備蓄米制度では、災害・有事や著しい不作によるコメ不足でしか放出しないと食糧法で規定されてきたが、今般は市場価格の鎮静化のため戦後初めて70万t近い備蓄米が極めて短期間に一斉出庫された。毎年20万tを買い入れ5年間保管するという従来の前提条件が撤回されてしまった」と問題点を指摘し、早期出庫時のキャンセル料金や入庫予定倉庫の仮押さえ料金の設定など「(備蓄米制度では)下請的な色彩の濃い倉庫会社の権利を守るよう、寄託契約書の抜本的な改定を実施してほしい。その検討を行う際は、定倉協や日倉協など倉庫事業者、行政機関、関連する事業者団体が参加する場を設けてほしい」と求めた。
備蓄米関連以外では、日倉協は物流の維持・安定化に資する公共性の高い倉庫施設を適切に支援する税制改正や、環境保全に向けたGXや人手不足に対応するDXを支援する予算措置の実施、取引環境の適正化に向けた保管量水準の実態調査などを要望した。また、藤倉会長は改正物流効率化法による規制的措置に言及し「荷待ち・荷役作業時間の短縮を図るため、受発注の前倒しや出荷・納品日時の分散など荷主による取り組みを新たな商慣習として定着させるべきだ」と訴えた。
日冷倉協の大櫛会長は、税制による業界支援とともに冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化や自動化設備の導入、太陽光発電設備の導入など予算措置による支援を要望した。併せて電力の安定供給の確保と価格の安定化や、価格転嫁への支援を求めたほか、特定技能・育成就労制度への物流倉庫分野の追加による外国人材の就労支援など、冷凍冷蔵倉庫を取り巻く課題に対応した施策の実施を要望した。
議連は3団体の要望を受け、備蓄米関連では、緊急出庫により発生した逸失保管料について月額1万tあたり750万円の支援措置を講ずることや、緊急出庫に伴うすべての追加経費の実費を清算すること、保管料水準の適正化など持続的な契約のあり方を検討することなど業界支援を決議した。そのほか、業界が求める税制改正や予算措置の実現に向け、国会と政府に対し要請することを決めた。
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