カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

日本の食を支えるインフラ クローズアップ”冷蔵倉庫

インタビュー
荷待ち問題、全体的な仕組みでアプローチを
日本冷蔵倉庫協会 理事長
土屋知省 氏

リードタイム短縮や平準化、積載率向上など

2025/11/26 16:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 コールドチェーン インタビュー 団体

 日本冷蔵倉庫協会(大櫛顕也会長)は、「冷蔵倉庫業界における物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」に基づき物流課題の解決への取り組みを推進。併せて、冷蔵倉庫業界の実態に即した課題解決を訴えてきた。土屋知省理事長に、冷蔵倉庫業界の現状と課題、今後の展望を聞いた。  (インタビュアー/石井麻里)

 

冷食需要で大都市圏の庫腹がタイト、地方に波及も

 

 ――足元の冷蔵倉庫の荷動きについてお聞かせください。

 

 土屋 7月は入庫量、出庫量ともに活発でした。ただ、在庫の水準は下がっておらず、大都市圏では満庫の状態です。とくに東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡はタイトな庫腹が続いています。業界では、入出庫作業に要する余裕を考えると庫腹占有率(収容可能なスペースに対する貨物の埋まり具合)が95%を超えていると「満庫」と見なします。東京、横浜などは100%を超えていますが、これは貨物が通路にもあふれているような状況を意味します。貨物が通路をふさいで作業効率が悪化し、冷蔵倉庫の運営にとって決していい状況ではありません。

 

 ――冷蔵倉庫の庫腹がひっ迫しているおもな要因は何でしょうか。

 

 土屋 冷凍食品が増えていることが最大の要因です。最近は地方の冷蔵倉庫も冷食で埋まってきていると聞いています。全国の在庫量を見ると、水産品は減少基調にあり、畜産品は横ばいです。在庫過多で出庫が在庫を減らすほどにはないという印象です。輸入品については、円安で商社が買付できなくなる不安から、従来より多めに買い付けていることも在庫が増えている要因です。

 

 ――消費全体としてはそれほど伸びていないにもかかわらず、冷食など加工調理品への支出額はたしかに伸びていますね。

 

 土屋 人口減少や高齢化により国内の食市場は量的に縮小することが見込まれています。農水省の指標を見ても、1人当たりのエネルギー消費量は減っており、消費者物価指数の上昇により食料消費支出は全体として伸びていません。1ヵ月間の食料支出は横ばい、ないし減少傾向にあります。

 

 メーカーは冷食の生産を増やしています。直近では回転率が上昇し、在庫率は若干下がっていますが、これは「重量」で見た場合です。冷食は容積勝ちの貨物ですので、庫腹占有率で見ると必ずしも在庫が下がっているのとは言えないのです。

 

冷蔵倉庫の需要、「増える」「減る」両方の要素

 

 ――冷食の伸びに着目し、物流不動産デベロッパーが賃貸用冷蔵倉庫の開発を増やしています。営業用冷蔵倉庫がそうした施設を賃貸し、庫腹を増やすことも考えられますか。

 

 土屋 物流不動産の賃貸用冷蔵倉庫の多くは賃料水準が高く、保管型の冷蔵倉庫の運営では採算が取れません。回転率の良い貨物を扱っていたり、配送料を含めて採算の合う料金を収受できている流通系や運送系の会社でないと借りても採算が合わないと思います。現状、賃貸用冷蔵倉庫は保管型の冷蔵倉庫の受け皿になっておらず、営業用冷蔵倉庫からすると使いにくいスペックだという声も聞きます。もちろん、会員の中には賃貸用冷蔵倉庫を利用する企業もありますが、「再保管先に横持ちするよりはコスト削減になる」あるいは「短期間だけ利用する」といったニーズが果たしてどこまで業界内で広がるかは不透明です。

 

 

在庫率の推移

――冷蔵倉庫の中長期的な需要についてはどのように見ていますか。

 

 土屋 需用が「増える」要素、「減る」要素の両方があります。まず、「増える」要素としては、先ほど申し上げた冷食の伸びが挙げられます。また、24年4月からドライバーの労働時間の上限規制の適用が始まり、長距離輸送が困難になりますので、地方でデポ(在庫拠点)を設ける動きがあり、需要の押し上げにつながります。

 

 一方、「減る」要素としては、現状は庫腹がいっぱいでも、中期的には荷主が在庫調整・生産調整を行う可能性があります。たった1、2%の生産調整でも冷蔵倉庫(の庫腹需要)には効いてきます。より長期的には人口の減少、高齢化で食べる量が少なくなることが冷蔵倉庫の需要に影響してきます。需要が「増える」「減る」どちらに振れるか過渡期でもあり、非常に見立てが難しいと思います。

 

 ――冷蔵倉庫の「供給」に目を向けると、建設費がこれだけ高騰すると、とくに中小の冷蔵倉庫の再投資が難しくなる可能性があり、それも需要と供給のバランスに影響してきますね。

 

 土屋 建設費の高騰により冷蔵倉庫の新設や老朽化した施設の建て替えが困難になり、設備能力の制約が出てくるかもしれません。もし、倉庫税制が廃止されることになれば、さらに新設や建て替えは難しくなり、冷蔵倉庫を建てる用地も少なくなってきています。日冷倉協会員の収容容積の推移を見ると、年約1%のペースで増えています。建設費の高騰も踏まえて各社の確かな需要予測に基づいて建設しているでしょうから、実際の需要を反映しているのではないかと思います。ただ、それ以上に物流不動産デベロッパーは賃貸用冷蔵倉庫を増やしています。

冷凍食品国内生産数量の推移(日本冷凍食品協会資料より)
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