カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

日本の食を支えるインフラ クローズアップ”冷蔵倉庫

インタビュー
荷待ち問題、全体的な仕組みでアプローチを
日本冷蔵倉庫協会 理事長
土屋知省 氏

リードタイム短縮や平準化、積載率向上など

2025/11/26 16:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 コールドチェーン インタビュー 団体

価格転嫁、コスト上昇分だけでなく再投資費用も

 

 ――冷蔵倉庫業界の抱える課題についてお聞きします。人手不足、電気料金の高騰、施設の老朽化などへの対応はいかがでしょうか。

 

 土屋 人手不足に関してはフォークリフトオペレーターや輸入貨物のデバンニング作業を行う作業員が足りないと聞いています。対応策として、日本倉庫協会、全日本トラック協会と連携し、倉庫内作業について外国人特定技能への職種追加を目指しているところです。 

 

 電気料金については、2年前の高騰時に保管料に転嫁する動きが広がり、その後、政府の補助などもあり、現状は落ち着きが見られます。電気料金を抑えるため、冷蔵倉庫を新設する際に太陽光発電システムを導入するケースも増えており、今後、倉庫の壁にも取り付けられるペロブスカイト太陽光電池(極薄太陽光電池)の普及も期待されています。

 

 ――老朽化の現状と打開策、行政に望むことは。

 

 土屋 地域により整備の時期が異なり、築年数の構成も異なりますが、築年数20~50年の比率が比較的に高い状況です。スペックが現在の物流ニーズに合わなくなったものもあり、建て替えを進めていく必要があります。ただ、建て替える時に貨物をいったん別の施設に移さなければならず、その確保も課題となっています。

 建築費だけでなく、施設の解体費用も高騰しているため、かなりの投資負担になります。政府の旗振りにより、コスト上昇分の価格転嫁については荷主にお願いしやすくなっていますが、冷蔵倉庫業界全体として、再投資に必要な原資を得るまでには至っていません。今後は、再投資の費用も盛り込んだ形での価格転嫁を進めることが期待されます。冷蔵倉庫は公共的な役割を果たす物流拠点であり、行政には、とくに保管型冷蔵倉庫のための用地の確保や新設、建て替えにかかわる支援を希望します。

 

 

施設の更新が必要

約款改正、冷蔵倉庫業界が思い描いていた内容に

 

 ――日冷倉協として求めてきた、標準冷蔵倉庫約款の改正がようやく実現し、来年4月から施行されます。冷蔵倉庫から見た改正のポイントを教えてください。

 

 土屋 まず、「在庫証明書」について規定が設けられました。在庫証明書はあくまでも一定の締め日の在庫を証明するものであることが明記され、トラブルの回避につながります。冷蔵倉庫は倉庫内で名義変更が行われることが頻繁にあるのですが、これまで名義変更についての規定がありませんでした。いったん名義変更した後の取り消し依頼などがトラブルになっており、改正約款で名義変更についての規定が設けられたことでこうしたトラブルを避けられます。

 

 改正約款では附帯業務を明確化し、荷役・荷待ち時間の増大につながる緊急の入出庫オーダーには、別途料金を請求できるようになります。賠償額の限度に関する規定も追加され、逸失利益や営業機会損失も含めて膨大な賠償額が請求されるのを防ぎます。

 

 また、寄託者等の期限の利益の喪失など既存の規定で曖昧、不十分だった規定が拡充されました。寄託者への請求は「月末締め・翌月払い」がほとんどですが、寄託者の倒産が見込まれる時、あるいは支払いが滞りそうな時などに早期に請求できる条項が設けられました。日冷倉協としては20年4月の民法の改正を見据えて約款の改正の検討を開始し、改正の必要性を訴えてきましたが、ほぼ業界として思い描いていた通りの改正内容となったと思います。

 

荷待ちの原因探り、全体としてうまく回る仕組みを

 

 ――「2024年問題」が始まって1年半が経過しましたが、冷蔵倉庫業界への影響はいかがでしょうか。

 

 土屋 24年4月からのドライバーの時間外労働規制に先立ち、荷主企業、冷蔵倉庫ともに残業時間を減らしてきていました。それと連動する形でドライバーの働き方も徐々に変わってきていたのではないかと思います。「2024年問題」が始まって大きな影響は見られなかったのは、前もって対応が進められてきたからだと言えます。ただ、そうは言っても将来的にドライバーが減っていくのは確実で、長距離輸送を中心にトラックの確保が難しくなってきていると考えています。

 

 ――一部では冷蔵倉庫での「荷待ち」問題も浮上しています。業界としての対応は。

 

 土屋 荷主も冷蔵倉庫も「働き方改革」で残業を減らした結果、日中に業務が集中し、かえって荷待ちが増えているケースがあります。荷待ちの問題が発生しているのは、主に関東と関西であり、地方ではあまり問題になっていません。荷待ち対策として「トラック予約システム」の導入が考えられますが、たとえば卸に多品種小ロットで出荷している冷蔵倉庫は1日に100台ものトラックが来ますので、予約システムを入れたところで収拾がつきません。

 

 予約システムについては、希望の時間に予約が取れないとかえって非効率になったり、むしろ到着順に処理していった方が効率的ということもあります。トラックが複数の冷蔵倉庫から貨物を取りまわるケースでは、ひとつの冷蔵倉庫が予約システムを入れてもうまく馴染みません。そもそも物流は製造業のベルトコンベヤと違い、交通渋滞もあれば、別の倉庫で突発的に荷待ちが発生したりすることもありますので、すべてが計画通りには進まず、予約制の導入が難しい面があります。

 

 ではどうするか――。貨物の集中を防ぐために、入出庫オーダーの平準化や、出庫オーダー締切を1日前でなく2日前にする――といった全体的な仕組みからアプローチする必要があります。個々のトラックの荷待ちという事象にのみ着目するのではなく、荷待ちの原因を探り、全体としてうまく回るような仕組みを考えていかなければいけません。そういう意味では、今回の改正物効法において、荷主に計画的な物流改善の取り組みを求めているのは全体的な仕組みとしてのアプローチのひとつとして評価しています。

 

 ――荷待ち問題について日冷倉協として、海上コンテナとばら積みトレーラについては、荷役時間が改正物効法の目標(2時間)よりも長くならざるを得ないと物流の実態を訴えてきました。待機時間については、トラックと冷蔵倉庫側で出庫する貨物のオーダー情報の照合が完了した時点から入出庫作業までを待機時間という解釈を主張してきました。

 

 土屋 荷役等時間のさらなる短縮が難しい事情がある運行として、「海上コンテナ及びばら積みトレーラにおける手荷役荷降ろし・積み込み」を盛り込むべきと要望し、海上コンテナについては改正物流法の解説書に盛り込んでいただきました。

 

 待機時間のカウント方法については、メーカーの工場の構内を想定して考案されたものという印象で冷蔵倉庫の実態に必ずしも合っていません。冷蔵倉庫の場合、「路上にトラックを停め、ドライバーが事務所に来て受付する」というのが標準的な手続きです。このため、受付がなければ冷蔵倉庫はトラックが近くに来ていることを認識できません。冷蔵倉庫側としては、受付照合完了からトラックが積み降ろし作業開始するまでの時間を「待機時間」、作業開始からトラックがバースを離れるまでを「荷役時間」ととらえています。先ほど申し上げたように、個々のトラックの待機時間や荷役時間を減らすこと以上に、入出庫オーダーの平準化やリードタイムの延長など全体の仕組みを変えていくことが必要と考えています。

                 

 

土屋 知省(つちや・ともみ) 1959年6月16日生まれ。82年3月東京大学法学部を卒業後、同年4月運輸省(現国土交通省)入省。近畿運輸局長などを経て19年5月から現職。現在、東京海洋大学客員教授、運輸総合研究所特任研究員も務める

待機時間ならびに解決すべき領域の定義
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