カーゴニュース 2026年3月26日 第5422号
臨時列車新設の裏側にある苦労とは
「24年問題」の顕在化以降、高い積載率が続く仙台⇔大阪間でも、列車の輸送体系を再編することで輸送力の増強につなげた。これまで仙台⇔大阪間を1往復していた列車には、隅田川駅向けが10両分含まれていたために、東北~関西間の輸送需要に応え切れていないという課題を抱えていた。そこで今回の改正では、仙台⇔宇都宮間で列車を新設することで、仙台⇔大阪と仙台⇔東京の2つの輸送体系を分離。これにより、東北と関西をつなぐパイプを太くすることに成功した。「関西~東北の長距離区間はトラックドライバーが走りづらい区間のひとつ。その区間の輸送力を増やすことができて、多少なりとも期待に応える体制を整えることができた」(酒井氏)。
他方、臨時列車ながら様々な〝裏ワザ〟を使って列車新設を実現したのが新潟⇔大阪間の改編だ。新潟発大阪向けの日本海縦貫線はここ数年、米菓や紙製品などの需要に支えられ、積載率が95%に達するなど「新たな貨物をまったく載せられない状態」(酒井氏)が続いていた。しかし、折り返しとなる大阪発の積載貨物が少なく、極端な「上下差」が生じていたため、なかなか増発に踏み切れないジレンマを抱えていた。
「コストを最小化する観点から繁忙期だけに運行する臨時列車とし、〝走らせることの価値〟を最優先にした」と皆川氏。また、新潟を夜間に出発するダイヤでは機材繰りの関係で手当てがつかないことから、朝発にすることも決断。それにより、朝方に旅客列車等に同乗して発駅に戻っていた運転士を、臨時列車の本務運転士として起用することが可能となり、コストを最小限に抑えつつ列車運行を可能にするという〝両立〟をかなえることができた。
臨時列車の運転は、コメの収穫期を経て米菓の出荷繁忙期を迎える秋以降を予定する。朝に新潟を出発するため、リードタイムが1日延びるものの「現状でもコンテナが載り切らず、出荷を1日待っていただくケースがあるため、ご利用いただけるものと考えている」(酒井氏)と期待を寄せる。
前々年の12月から始まるダイヤづくり
そもそもダイヤづくりはどのようなプロセスを経て決まっていくのか――。皆川氏は「26年3月の今回の改正では、1年以上前となる24年12月にキックオフした。例年、同様の時期からのスタートとなる」と明かす。
まずは、営業部と運輸部の担当者などコアメンバー10人ほどが集まり、営業部が顧客などからヒアリングしていた情報と、輸送機材(機関車・貨車)や駅のキャパシティなどを擦り合わせながら基本的な方向を決める。さらに、その原案が会社としての全体方針に沿っているかを確認しながら、翌年3月末までに本社としての基本案を策定。その後、各支社と調整しながら詳細を決め込んでいくという流れだ。「支社を含めると直接的な担当者だけで60~70人規模となり、その先にいる現場の担当者などを含めると数百人規模に膨れ上がる」(皆川氏)という一大行事となる。
貨物列車はひとつの線路に旅客列車と〝共存〟する立場であるため、同時並行で旅客各社との調整も欠かせない。改正したい内容が旅客列車のダイヤに大きく影響する場合は、可能な限り早い時点から旅客各社との調整に入ることも少なくない。日本の鉄道会社のダイヤ編成技術は世界最高峰だと評されるが、旅客列車のダイヤを考慮しなければならないJR貨物のダイヤ編成の難易度は、そのなかでも際立っていると言えるだろう。
「決めたら変えられない」という重いプレッシャー
経営を左右しかねない〝商品づくり〟を担当するプレッシャーも大きい。「鉄道会社は一度ダイヤが決まったら1年間は走り続けなければならず、変更はきかない。重い決断を迫られることも少なくない」(酒井氏)。当然、区間ごとの積載率や収支などの詳細なデータに加え、顧客へのヒアリングなどで慎重に〝答え〟を探していくが、それでも正解が見えないことも多い。「最後は信念のようなものが試される面がある」(皆川氏)と打ち明ける。
今後については「既存アセットを可能な限り有効活用していくなかで、まだまだ工夫の余地は残されている」と両氏は口をそろえる。そのためには〝常識にとらわれないダイヤ〟への挑戦も必要。以前のダイヤ改正では、東北・北海道向けの北の玄関口は隅田川駅であるという〝常識〟を変え、東京貨物ターミナル駅から北向けの列車を設定した実績もある。「これからもあの手この手を駆使して、〝使いたくても使えない〟〝どうせワクがないだろう〟というお客様の声に積極的に応えていきたい」(酒井氏)と展望する。
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