カーゴニュース 2026年11月5日 第5480号
昼寝よりさめて寝ている者を見る
六林男
かつて「原価の秘密」(大門一樹)なる本が話題となった。末端価格1400円のウイスキーの原価は50円、800円のビタミン剤の原価は12円50銭とか「薬九層倍」(今でもアマゾンに60年以上前のこの本はある。46円)。つまり、メーカーにおける原価は10円でもそれをお店で買えば10倍から100倍になるという話。
この原価とは「製造における材料原価」のことでした。ウイスキーなら水とアルコール、ブラウスなら布と糸でできている。ある偉い先生が「ゴッホの絵はキャンバスと絵具と筆だけだが5億円もする」と言っておられた。某スーパーでは月に1回「原価の日」がある。すべての商品を「原価+10%のマージン」で売る。この場合の原価はこのスーパーが仕入れた値段に店の費用を1%として販売価格を決める。50円で仕入れた商品は55円で売る。これは「仕入原価」で、仕切り価格のことだが実際には10%の粗利益では経営できない。後値引き、割り戻し、報奨金、販売協力金などいわゆるリベート、アローワンスが入ってくるから、それを原価に組み込むべきです。一般的に20~30%が粗利となるのだが多分、後で入ってくるお金は雑収入で処理するのだろう。
原価にはいろいろな種類がある。材料原価、製造原価、販売原価、管理原価、仕入原価などである。しかし、一般的な理解では原価というのは「元値」と思われるから製造業では製造原価、流通業なら仕入れ原価である。それが普通の理解であろう。
では、物流業(運輸業)ならどうだろう。一般的理解による元値、つまり製造原価、仕入原価に対してトラック業では輸送原価となる。機器の減価償却費、燃料費、そしてドライバーなどの人件費と運行に直接かかる費用が原価になるのか。輸送原価はメーカーの製造原価にあたる。サービスに仕入れはないから小売業など流通業の仕入原価にあたるものはない。雑に言ってメーカーでは製造原価が50%であれば販売価格はその倍以上になる。ではトラック業では輸送にかかる原価(この場合は輸送費)の倍が運賃と考えるべきではないか。流通業のことも考えれば原価率は7、8割であるべきだろう。トラック業の(輸送)原価を売価(運賃)から差し引いたものが粗利益となる。ただ、国語辞書を見ると「原価は費用」とある。ならば、「適正費用に適正利益を足したものが運賃」と同じことだろうか。ではどうしてこの「適正費用、適正利益、適正運賃」が「原価」に変わったのだろうか。多分、経営においての費用の中には本来、将来投資や研究投資、教育投資、福利厚生費、宣伝費などがなければならないし、配当や内部留保なども必要だ。輸送の直接費用だけで2%程度の営業利益の運賃では「生かさず殺さず」ではないのか(20%の間違いではないか)。費用と言ってしまうと輸送費用だけのように思われるのであえて原価などという複雑で曖昧な言葉を持ってきたのだろう。本来「原価は秘密」なのである(のか?)。トラック新法における適正原価を考えていたのであります。
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