カーゴニュース 2024年8月22日 第5268号

物流不動産市場を読む!

ズームアップ
海外で物流施設開発を加速

EC需要取り込み図る 日系デベロッパー

2024/08/22 15:34
全文公開記事 倉庫・物流施設 グローバル物流

 EC需要の急増などを背景に、日系不動産デベロッパーの海外における物流施設開発が拡大している。米国や欧州、経済成長が著しいASEAN地域へ相次ぎ進出。現地法人の設立や現地デベロッパーとの共同事業といったスキームで、延床面積10万㎡超の大型案件も見られるなど、旺盛な物流需要の取り込みに向けた事業拡大が加速している。

 

三井不動産と大和ハウスは東南アジアと米国で開発

 

 大手総合デベロッパーとして海外での積極的な開発を進めている三井不動産。グループ初の海外における物流施設開発として、タイ・バンパコンで2021年12月に「バンナー2ロジスティクスパーク」(延床面積約2万1954㎡)を竣工したのを皮切りに、23年8月にはマレーシアでも物流施設事業に進出。「クリムロジスティクスハブ」の第1期となる倉庫(約2万2000㎡)を同年9月に竣工しており、第2期(約1万4000㎡)を24年以降に着工する予定にある。

 

 東南アジアだけでなく、今年3月には米国でも物流施設開発事業への参画を発表。現地のデベロッパーと協働し、カリフォルニア州オレンジ郡アーヴィンに「Great Park Logistics Parcel 1(仮)」(約5万5300㎡)を26年~27年にかけて開発するほか、同州サンフランシスコ市にある既存物流倉庫の「2225Jerrold(仮)」(約8200㎡)のリニューアルを行う。さらに、7月には英国での物流施設事業への参画も発表した。欧州最大の開発実績を誇る現地デベロッパーとともに、英国の主要物流エリアであるウエストミッドランドエリアに約5万㎡の「Wilson`s Lane(仮)」を開発する計画。

 

 大和ハウス工業は23年11月、米国での物流施設開発計画を発表した。テキサス州ヒューストンに計5棟のマルチテナント型施設の開発を計画しており、延床面積は計12万4540㎡で、投資規模は用地取得も含めて数百億円となる見込み。現地デベロッパーと共同で今年3月に着工しており、25年3月の竣工を目指す。同社はこのほか、東南アジアにおいて、ベトナムで「DPLベトナムミンクアン(仮)」(約4万2330㎡)を今年12月に、マレーシアで「DPL Malaysia Ⅲ」(約15万6292㎡)を25年1月に、タイで「バンナ・トラッドプロジェクトB棟」(約2万1848㎡)「同C棟」(約2万3749㎡)を今月~25年1月にかけて順次竣工していく。

三井不動産の「クリムロジスティクスハブ」(イメージ)

物流施設のニーズ高まるASEANでの開発が活発化

 

 ASEAN地域では著しい経済成長と購買力の増加から旺盛な物流需要が生じており、先進的物流施設のニーズが高まっていることから物流施設の開発が活発化している。かねてから、タイで積極的な開発を進めているのが東急不動産だ。23年2月にはタイ・チョンブリ県で物流施設開発事業「アルファレムチャバンプロジェクト」に参画。同事業では平屋建て倉庫全6棟(約4万9000㎡)を開発し、今年10月の竣工を予定する。現地の物流デベロッパーと物流事業者による合弁会社の事業に参画するもので、これにより、東急不動産のタイにおける物流施設開発事業は計3件、事業参画は計8件となった。

 

 また、阪急阪神不動産は23年12月、三井物産やシンガポールの不動産デベロッパーと不動産ファンドへ共同出資し、同国トゥアス地区で物流施設開発事業「36 Tuas Roadプロジェクト」を実施すると発表した。約5万9800㎡で5階建ての倉庫を開発し、25年春の竣工を目指す。

 

 物流不動産デベロッパーでは、シーアールイー(CRE)が、インドネシアの子会社が進める合弁事業を通じて、現地での施設開発に注力している。23年から24年にかけてブカシ県チカラン市に約4万㎡のBTS型施設を竣工したのをはじめ、23年10 月にはジャカルタ東部チャクン地区で用地を取得し、25年夏の竣工を目指して約10万1000㎡の開発を予定。同年12月には西ジャワ州ボゴール県で開発用地の売買契約を締結しており、マルチテナント型施設の開発を計画する。さらに、阪急阪神不動産とCREはシンガポールの不動産デベロッパーと共同で、23年10月から12月にかけてベトナム中部の工業団地内に、「セムコープロジスティクスパーク(クアンガイ)」(3棟、約3万3600㎡)と「セムコープロジスティクスパーク(ゲアン)」(3棟、約3万9400㎡)の計6棟を竣工している。

阪急阪神不動産はシンガポールで開発(イメージ)

初の海外開発や日系未開拓エリアへの進出も

 

 これまで国内のみで物流施設を開発してきた大手総合デベロッパーが、次々と海外での開発事業に新規参入を表明した。野村不動産は6月、同社初となる海外での物流施設開発として、フィリピンのカビテ州に、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング向けのBTS型物流施設(約4万2000㎡)を着工した。現地の大手デベロッパーと設立した合弁会社が進めている、全体敷地面積約600haの郊外型大規模タウンシップ開発「カビテプロジェクト」の一環として行われ、26年以降の竣工を予定。同施設は「ユニクロ」事業の倉庫では東南アジア最大規模となる。

 同月には東京建物も、タイに現地法人を設立し、初の海外案件となる2件の物流施設開発事業への参画を発表した。現地の大手デベロッパーと共同でプロジェクトを進め、このうち「メトロキャットプロジェクト(仮)」ではサムットプラカーン県に全5棟計15区画の平屋建て倉庫(計約7万8252㎡)を25年1月から26年2月までで4期に分けて開発。「レムチャバンプロジェクト(仮)」では経済特区・東部経済回廊内(EEC)で25年2月から26年1月までで3期に分けて、全3棟計10区画の平屋建て倉庫(計約4万6602㎡)を開発する。

 

 このほか、日系不動産デベロッパーがまだ物流施設開発で進出していない地域を積極的に開拓しているのが三菱地所。7月に台湾・桃園市で物流施設開発事業「桃園市楊梅プロジェクト(仮)」(約6万4000㎡)への参画を発表し、25年の竣工を予定。8月にはオーストラリア・メルボルンで物流施設開発事業「Enterprise Industry Park」への参画を発表しており、全4棟で計7万㎡の開発を進める。1棟目は25年初頭の竣工と稼働を予定し、残り3棟は24年内の着工、25~26年にかけての竣工と稼働を予定する。

野村不動産のファストリ向け倉庫(イメージ)
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