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カーゴニュース 2025年12月9日 第5394号

FOCUS
ヤマト運輸
「近距離&スピード」切り口に宅配需要を深耕へ

「当日配送」と「同一都道府県内運賃」新設

2025/12/08 17:00
全文公開記事 FOCUS 運賃・コスト 宅配・ラストワンマイル

 ヤマト運輸(本社・東京都中央区、阿波誠一社長)は、スピードを切り口にした宅配ニーズの取り込みを強化する。11月10日から新サービス「宅急便当日配送サービス」を開始し、近距離を中心としたスピード配送需要に対応。また「同一都道府県内運賃」を新設し、コストを適正に反映した運賃により多様化する宅配需要の掘り起こしを狙う。

 

利用者ニーズの「変化を拾う」

 

 「宅急便当日配送サービス」は、午前中までにサービスを提供している全国約2300ヵ所の宅急便営業所に荷物を持ち込むと、最短で当日14時以降の指定時間帯に荷物を届けるサービス。未収契約ではなく、届出運賃を利用する個人や法人が対象となり、宅急便の規定運賃+追加料金550円(沖縄県のみ宅急便運賃+330円)で利用することができる。当日配送エリアは、荷物を受け付けるエリアごとに異なるが、例えば東京都内発の場合、関東7都県と山梨県で当日18時以降での時間帯指定配達が可能となる。

 当日配送はもともと、一部のエリアや営業所でローカルなサービスとして提供していたが、今回、全国一律のサービスとして宅急便のサービスラインアップに追加した。その狙いについて、常務執行役員(宅急便事業統括)の櫻井敏之氏は「利用者のニーズが多様化するなかで、きめ細かく『変化を拾う』ことが目的。これまではローカルレベルでの対応にとどまっていたために、利用者へのアナウンスが不十分で、ニーズを取り切れていなかった」と説明する。

 

 利用シーンとして想定しているのは、当日朝に収穫した野菜や魚などの生鮮品を店舗や個人宅に届ける、または、観光客が午前中にスーツケースを持ち込み、当日中に届けることで手ぶら観光を楽しむ――など。法人顧客の場合も、カタログ類やサンプル品を急いで届けるといった速達ニーズは少なくないという。

 新サービスを投入することで、ラストマイル配送を担うSD(セールスドライバー)への追加的な業務負荷が懸念されるが、「オペレーションに新たな負荷がかかることはない。配達側の営業所では、朝、午後、夕方に分けて配達する荷物が届くため、SDの動き方が大きく変わることはなく、オペレーションの追加コストも発生しない」(櫻井氏)という。

 

 サービス開始から1ヵ月弱が経ったが、「当初から一定のニーズがあることは見えていたが、想定通りのペースでご利用いただいている」と順調な滑り出しを見せている。

 

コストを適正に運賃に反映させていく

 

 「宅急便当日配送サービス」の開始と同じタイミングで、新たに「同一都道府県内運賃」を設定した。これまでは地帯別の運賃区分だったが、都道府県別に運賃体系を細分化し、同一の都道府県内を発着する宅急便を対象にした運賃区分を新設したもの。これにより、例えば「東京都→東京都」で60サイズの荷物を送る場合、従来940円だった運賃が790円まで安くなる。

「同一都道府県内運賃」の一例

 櫻井氏は、「値下げが目的ではなく、コストをより正確に計算した結果として、同一都道府県内については使いやすい運賃になった」と強調する。以前の地帯別運賃では、東京都内発着の運賃と東京→名古屋の運賃が同額になるなど、分かりやすい運賃体系を志向した結果、やや不整合な面も指摘されていた。「当然、輸送距離が違えば荷物1個にかかるコストにも差が出る。そうした要素をきめ細かく分析し、運賃に反映させた」と語る。

 

 ヤマト運輸では、物価上昇など外部環境の変化による影響を正確に反映させるべく、2023年から宅急便の届出運賃を年度ごとに改定している。その一環で、今年10月には、120サイズ以上の大型荷物を対象に見直しを実施。「これも考え方はまったく同じ。コストを正確に計算したことで、大型荷物については値上げをし、同一度都府県内については実質的に値下げすることでメリハリをつけた。これからも、外部環境の変化に対応した柔軟なプライシングを進めていく」と説明する。

 

 より使いやすい運賃になったことで、取扱数量の増加を見込む。宅急便などの年間取扱個数(24年度実績)は約23億個強だが、そのうちの約1割を個人利用が占め、さらに「そのうちの2ケタ%が同一都道府県内で発着する荷物であり、根強いニーズがある」。個人間での贈り物や仕送り、新米の収穫時期におけるコメのお裾分けなど、多様な利用を想定している。

 

 単価面では、この部分だけに焦点を当ててみると下がることになるが、「届出運賃が適用される個人などリテール領域は、法人領域よりも相対的に単価が高いため、利用が増えれば単価全体としての押し上げにつながる」という。

 

「宅急便50周年」、意義や使命感を再認識する機会に

 

 宅急便事業は、ECの爆発的な需要拡大や労働力不足など外部環境の変化を受け、ここ数年は配達などオペレーションの生産性向上に重きを置く施策を続けてきた。そうしたなかで、今期は「もう一度お客様としっかり向き合いながら、商品・サービス設計や営業に力を入れて荷物を増やしていく方針を打ち出している」と語る。

 

 そうした取り組みの結果、今年度上半期の主力3商品(宅急便・宅急便コンパクト・EAZY)のリテール領域(個人・小口法人)の取扱数量は前年同期比1・7%増の4億3500万個となり、着実な実績を積み上げている。

 

 また、宅急便は来年1月20日で、発売から50周年を迎える。櫻井氏は「ご利用いただいているお客様や地域社会の皆様に感謝をお伝えしたい。また、50周年を機会に、宅急便事業の意義や使命感、これまで培ってきた信頼などを若い社員にも伝えていくプログラムを検討している」と語る。

櫻井氏
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