本社・大井営業所はワインなどを保管

カーゴニュース 2024年11月28日 第5296号

物流業界でM&Aが活発化 成長戦略の有力な選択肢に

新興海陸運輸
食品卸会社を経営統合、“川上”の事業に参入

“受け身”の姿勢脱却、営業開発を強化

2024/11/28 07:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 グローバル物流

 新興海陸運輸(本社・東京都品川区、西川聡社長)は、2017年6月に食品卸のフィールドの株式を100%取得し、経営統合した。新興海陸運輸として“川上”の事業に参入するとともに、物流面でのシナジーを創出。フィールドは同じ企業グループ内で輸入通関から出荷販売までのプロセスを一貫して行えるようになり、食品卸としての競争力の強化につながっている。

 

品質管理で独自のマネジメントシステム構築

 

 同社は1949年に東京都江東区で創業し、今年75周年を迎えた。化学肥料原料のはしけ輸送からスタートし、倉庫、通関、運送と業容を拡大。現在、東京(大井)、川崎、横浜、千葉に8ヵ所の事業拠点を置く。

 

 定温倉庫でのワイン、ビールなどの酒類の取り扱い実績が豊富で、煩雑な酒類の通関のノウハウを蓄積。穀物、輸入加工食品の通関、保管、配送のほか、千葉港では、はしけ6隻を運航し、メーカーの配合飼料や小麦の輸送を請け負っている。

 

 業務品質管理体制は、AEO制度における「特定保税承認者」「認定通関業者」を取得したのを機に、従来より取得済みのISOとAEOの考え方を統合した独自のマネジメントシステム「ISAQ2010(Integrated System AEO&Quality2010)」を構築している。

千葉港でははしけを運航

「顧客」である食品関連の業種を社内に取り込む

 

 2005年に異業種から社長に就任した西川氏は、物流業の重要性を認識したうえで、「荷主に対して“受け身”、“待ち”のスタンスで、当時はまだ下請け的な側面が強かった。いつか“川上”の仕事を手掛けてみたいという思いがあった」と振り返る。

 

 具体的には、同社にとって「顧客」である食品関連の業種を社内に取り込み、通関、保管、配送を機能として提供する構想を模索し、M&A仲介会社を通じ、17年6月に食品卸のフィールドを子会社化し、西川氏が同社の社長に就任した。

 

 なお、海上コンテナドレージの手配が困難になった時期には、ドレージ会社など同業者のM&Aも選択肢にあったが、車両など資産を有するため買収価格が高額に及ぶこと、運送事業を管理する人材に懸念があり、M&Aの方向性は他業種に向かった。

 

中国生産地と太いパイプ、品質管理にも定評

 

 フィールドは1996年の創業で、中国産ホワイトニンニクを日本で初めて輸入し、「ニンニクのフィールド」として高い知名度を持つ。その後、生鮮野菜、冷凍野菜、加工野菜の分野でも取引量を拡大してきた。

ムキニンニク

 創業当時から中国との関わりが深く、中国の商社や生産者と太いパイプを持つことにより、品質管理にも定評がある。事業承継や経営の安定化を図るため、安定した企業グループの傘下に入ることを希望しており、新興海陸運輸との経営統合に両社で合意した。

 

 物流体制では、新興海陸運輸の定温倉庫は生鮮野菜全般の保管温度帯と異なるため、通関と倉庫を一括して専門性の高い同業者に委託。ムキタマネギなど一部の直送品については、新興海陸運輸が通関と配送を一貫して担う。

中国産地とのパイプが太く、現地で農場の視察も行う

国産品の輸出、中国以外の産地からの調達も拡大

 

 中国からの輸入品の取り扱いが主力だが、カントリーリスクを考慮し、今後は中国以外の産地からの調達も拡大する。このほか同業他社が扱っていない生鮮・加工野菜等を発掘し、「簡単に調理できる」食材として各種需要を取り込みたい考えだ。

 

 コロナ禍での業務用食品の需要減少に続き、昨今の円安も輸入品を扱う食品卸には逆風だ。今後、フィールドでは輸入品の取り扱いだけでなく、日本の国産野菜の海外への輸出にも挑戦する。

 

 新興海陸運輸の取り扱っている常温・定温の食品をフィールドがラインナップに加えるといったシナジーも期待できる。人事交流も促進し、「フィールドでは“飛び込み営業”や“休眠顧客開拓”は当たり前で、当社の営業担当も刺激を受けている」という。

 

 新興海陸運輸では4月、各部門の管理職以上をメンバーとした横ぐし組織として「営業開発チーム」を新設。営業支援アプリを使って通関、倉庫、配送の各部門の新規案件情報やタリフ、倉庫の空き状況、商談の日程などを一元管理する体制を整え、“川下”の物流営業も強化している。

西川社長
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