カーゴニュース 2024年11月28日 第5296号
物流施設の多用途化が進んでいる。都市部の開発物件を中心に、マテハンや物流ソリューションなど各種最新機器を実際に見学・体験できるショールームを開設したり、郊外でも研究拠点としての用途を想定した複合機能施設として開発する例もみられる。物流施設の大量供給が進む中、単なるスペース提供にとどまらず、物流DX支援の強化や、テナントの多様なニーズへの対応で差別化を図る動きが本格化してきた。
共創プログラムの検証、デモ体験も
野村不動産は2021年4月から、自動化機器の効率的な活用により、物流オペレーションの最適化を図る企業間共創プログラム「Techrum (テクラム)」を開始したのに併せて、「Landport習志野」(千葉県習志野市)の1階に、同プログラム用の導入効果検証拠点である「習志野PoC Hub」を約5300㎡の規模で開設。パートナー企業と連携し、野村不動産の物流施設ブランド「Landport」に入居する荷主や物流企業固有の課題解決を目的に、各社の技術やサービスを参画企業間で連携し、総合的なソリューション開発を進めている。
同プログラムには現在、マテハンメーカーやシステムメーカーなど100社以上のパートナー企業が参画し、各社独自の物流ソリューションを展示。24年11月にはリニューアルを行い、業種・品物・荷姿ごとに最適なソリューションの組み合せを実作業現場のフローやプロセスに沿って設置。入荷~出荷の一連工程において、30社・70種類以上の機器を実証できるようになった。「Techrum」を通じて、課題に応じた最適なソリューションを求める事業者とソリューションを開発するメーカーを効率良くマッチングできるところも強みとなっている。
先行する三井不動産は20年2月、「MFLP船橋・&GATE」(千葉県船橋市)内に、フルオートメーションの物流モデルを展示する体験型ショールーム「MFLP ICT LABO2・0」をオープンした。1階フロア(1021㎡)を最新自動化機器などの展示エリアとなっており、自動倉庫やパレタイザーロボット、ピッキングロボット、無人フォークリフトなどを展示。2階(404㎡)には各種物流機器を実際に手で触れて体験できるスペースが設けられている。
東京流通センター(TRC)が20年10月に物流ビル内で開設したコワーキングショールーム「TRC LODGE」は、「物流テック展示ゾーン」と会員限定の「セミナー&コワーキングスペース」、「実験用タイムシェア倉庫」の3ゾーンで構成。「物流テック展示ゾーン」は物流業界全体の効率化・高度化につながる物流テックを持つ企業9社の商品を常設展示。「実験用タイムシェア倉庫」は1時間単位で物流テックを実証やデモ利用できる空間となっている。
ESRの「ESR市川ディストリビューションセンター」(千葉県市川市)では22年9月、ソフトバンクロボティクスが物流自動化ソリューション体験拠点「Softbank Robotics Logistics Innovation Lab(ソフトバンクロボティクス・ロジスティクス・イノベーション・ラボ)」を開設。AutoStore社の高密度自動倉庫システム「Autostore(オートストア)」をはじめ、世界中のパートナー企業による多くの物流自動化機器のデモンストレーションを体験できる。
複合用途、マルチユースコンセプトの開発も
倉庫としての機能だけでなく、あらかじめ多彩な用途を想定した設備を併設して開発するケースも増えている。三井不動産は複合用途を想定した物流施設ブランド「MFIP(三井不動産インダストリアルパーク)」シリーズを展開。19年6月に竣工した「MFIP羽田」(東京都大田区)は、オフィスやラボ、ショールーム、データセンター、工場など、様々なワークシーンに対応できる構造を施し、大型複合拠点として活用する。現在はフジテックの研修センターなどが入居している。今後は「MFIP海老名」(神奈川県海老名市)を26年6月に竣工予定。建物全体の約半分がオフィスや研究施設などのマルチユーススペースで構成された新産業創造拠点として開発する。
プロロジスが開発する都市型物流施設「プロロジスアーバン」シリーズも、多用途利用が可能な区画を設けているのが特徴だ。直近では、23年3月にマルチテナント型の都市型物流施設「プロロジスアーバン東京太田1」(東京都大田区)を竣工。多機能ビジネス拠点として全フロアでオフィスと物流拠点の機能を併せ持つ設計を採用し、医療機器・業務用印刷機など重量物などに対応したショールーム利用に加え、試作品の開発拠点やモデルルーム利用も可能とした。さらに、今後は東京都江東区に、「プロロジスアーバン」として7棟目となる「プロロジスアーバン東京錦糸町1」を25年6月に竣工予定。1階はラストワンマイル配送拠点としての利用を想定した専用区間だが、2~5階はオフィスやR&D拠点、ショールームなどマルチユースに対応した設計となっている。
TRCが23年8月に竣工した「物流ビル新A棟」(東京都大田区)は、倉庫だけではなく、オフィスやショールーム、流通加工場、メンテナンスセンターなどの利用も想定。用途に応じて利用する区画の広さが選べるよう、フロアによって大規模・中規模・小規模区画を整備した。
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