カーゴニュース 2025年1月7日 第5305号
【昨年を振り返る】
「24年問題」開始、物流に起きた変化は…
A まずは昨年1年間を振り返ってみよう。4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用され、ドライバー不足が懸念される「2024年問題」の〝本番〟の年を迎えた。現時点までの状況を見ると、とくに大きな混乱は起きていないようだ。「24年問題」による影響は、4月にスタートしていきなり日本の物流がストップするというものではなく、じわじわ効いてくるものだと理解している。個別に見ていけば、現場で色々な問題が起きているだろうけれど、全体としては粛々と進んでいった印象だ。昨年を振り返ってどうだったかな。
B 昨年は物流の歴史の中で転換期だったのではないか。具体的には、物流の担い手として荷主のプレゼンスがより高まった。もっと言えば、荷主が物流で主役級に躍り出るようなターニングポイントの年になったのではないか。その背景には、「24年問題」に対する危機感が荷主に広がってきたこと、改正物流法が公布されて荷主が規制の対象になったことが挙げられる。荷主の物流対策として「共同配送」や「協業」「連携」といった取り組みが、これほど多くニュースで取り上げられた年はなかった。実際、昨年「カーゴニュース」で取り上げた「荷主・物流子会社」のカテゴリーの記事は、「総合物流・3PL」の記事の件数を上回った。荷主の物流の取り組みについて外部発信が強化されたのは、荷主にとって経営課題としての物流の重要性がこれまで以上に高まったことの表れなのかなと思っている。さらに改正物流法では、今年4月から大手荷主に物流改善の中長期計画の作成と「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務付けられることになり、物流の主導権がさらに荷主に移っていく可能性がある。
荷主が物流を主導するという空気は、物流スタートアップも敏感に感じ取っているようだ。いくつかの有力スタートアップ企業では、明らかに物流会社ではなく荷主のほうを向いて仕事をしている。つまり、荷主をターゲットにし、荷主との連携を強めようとする傾向が顕著だ。荷主が物流の主導権を握り、究極の効率化を目指す現象を仮に「Amazon化」と表現するなら、日本の荷主が「Amazon化」に一歩踏み出し、コストも含めた物流の主導権を握っていく転換期となった年が2024年だったと総括できる。
A もちろん、これまでも物流を発生させている当事者という意味で、物流の主役は荷主だったわけだけど、イニシアティブがより強まったということだね。一方の物流会社にとって2024年はどんな年だっただろうか。
B 物流会社の再編が本格化した年だった。ロジスティードによるアルプス物流のTOB(株式の公開買い付け)やAZ―COM丸和ホールディングスとSGホールディングスによるC&FロジホールディングスのTOB合戦、さらにはセイノーホールディングスによる三菱電機ロジスティクスの買収、ヤマトホールディングスによるナカノ商会の買収など、これまでになかった頻度と規模で大型再編の動きがあった。また、規模という意味では、買収額の高さも注目された。近年、「24年問題」を見据えて輸送力や拠点を確保するため、運送会社を対象としたM&Aは確かに活発だったけれど、物流業界の勢力図を変えるほどの大きなうねりとまではなっていなかった。
しかし、ここへ来て、他産業ほどは国際競争に晒されていない物流業界でも、いよいよスケールメリットを意識した大型再編が始まったと感じている。それは今後主導権を握っていくであろう荷主と対等に渡り合うための〝予防線〟にもなっている気がする。
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