カーゴニュース 2025年3月6日 第5321号
国土交通省と経済産業省は2月28日、「高度物流人材シンポジウム」を東京国際フォーラムで会場とオンラインの併用方式で開催した。同シンポジウムは2021年に高度物流人材に求められる能力を明らかにするとともに、物流業界の可能性を提示して幅広い人材の物流分野への参入を促すことを目的に第1回を開催。今回で5回目となる。国交省と経産省が主催者を務め、日本物流団体連合会(物流連)と日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が後援している。今回は高度物流人材とCLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー)に焦点を当て、全体最適の視点から新技術の導入や異分野との連携を企画・推進する人材の育成などについて議論を行った。
「物流の改善」=「物流による社会課題の解決」
開会に際して挨拶に立った国交省物流・自動車局長の鶴田浩久氏は、物流の「2024年問題」などにより物流への関心が社会的に高まっている現在こそが課題解決の好機だとしたうえで「物流は担い手不足やカーボンニュートラルへの対応など、様々な課題に直面しているが、課題に挑戦することは新たな付加価値を創出するチャンスになり得る」と強調。「新技術の活用や荷主・物流事業者などによる多様な連携を推進し、『物流を改善すること』を『物流で社会課題を解決すること』につなげていこう」と呼びかけた。
CLOと高度物流人材が「チーム」となる
基調講演として東大大学院工学系研究科の西成活裕教授が、荷主企業を支える高度物流人材とCLOのあるべき姿をテーマに講演した。西成教授は「物流の全体最適を1人のCLOだけで見渡すことは不可能であり、CLOと高度物流人材がチームを組んで対応していくべきだ」とし、高度物流人材には、①最新技術への理解②財務の視点③ビジネスモデルの創出力④SDGsなど社会的課題に対応できる倫理――の4要素が必要だと提案した。
続いて国交省大臣官房審議官の木村大氏が直近の物流行政の概要と、CLO候補となる人材のキャリアパスについて説明した。物流系として採用された人材だけでなく、生産・調達・営業など物流にも関連する分野に配属された人材が高度物流人材となることが重要と指摘。「そうした人材が将来的にはCLOとなることも想定される」と述べ「CLOは必ずしも物流のプロフェッショナルとしてのスキルが求められるものではなく、周辺領域や経営について広く知見を有し、企業活動全体のなかでの物流の役割やその責任を理解していることが重要だ」と強調した。
その後、伊藤忠商事海運・物資課上席コンサルタントの長谷川真一氏がフィジカルインターネットなどネットワークの重要性について、オプティマインド代表取締役社長の松下真氏がITの知見とスキルを持つ高度物流IT人材の必要性について、それぞれ講演した。
シンポジウム第2部は「異分野連携・新技術導入で活躍できる高度物流人材像とCLOのあり方」と題してパネルディスカッションを開催。国交省の木村氏、伊藤忠商事の長谷川氏、オプティマインドの松下氏、三井不動産ロジスティクス事業部長の大間知俊彦氏らがパネリストとなり、西成教授がファシリテーターを務めた。
閉会の挨拶は、経産省商務・サービスグループ商務・サービス政策統括調整官の江澤正名氏が行った。
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