カーゴニュース 2025年3月27日 第5326号
昨年は輪軸不正が発覚し、安全管理体制のあり方が大きく問われたJR貨物。他方で「2024年問題」の影響もあって輸送量は増加基調が続いており、貨物鉄道輸送への期待はかつてないレベルまで高まっている。そうした中で、総合物流事業戦略の加速や回転型不動産事業への参入など、鉄道事業へのシナジー創出に向けた新たな挑戦も始まろうとしている。犬飼社長に同社の現状や来期に向けた事業戦略、中長期的な経営の舵取りなどを聞いた。(インタビュアー/西村旦)
「組織」と「人」の2軸で安全管理体制を強化
――まずは、安全管理の体制強化に向けた取り組みからお聞きします。昨年9月に輪軸の圧入作業における不正事案が発覚し、一時的に輸送供給力が制限される事態を招きました。
犬飼 このたびの輪軸不正により、お客様や利用運送事業者など関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしたことをあらためてお詫び申し上げます。
今回の事案により、国土交通大臣より10月31日に事業改善命令を受けるとともに、4項目にわたる講ずべき措置を命じられました。これら4項目、「規程類の整備」「教育体制の改善」「作業記録の書き換え防止」「安全管理体制の点検・見直し」については、すでに1月末に3項目について報告しているところですが、今月末までに「安全管理体制の点検・見直し」を含めた最終的な報告を行います。しかし、当然ながら報告して終わりということではありません。改善事項として報告した対策をいかに現場をはじめとした全社で実践していくかが重要だと認識しており、そのための体制づくりを強く進めていきます。
私が社内で強調しているのは、安全管理体制を強化・推進していくためには、本社、支社、現場それぞれで担うべき役割があるということです。例えば「規程類の整備」や「教育体制の改善」、つまり作業手順やマニュアルの策定、研修制度の見直しなどは本社主導で実施すべきことです。今回の事態を招いてしまった背景には、簡単に言えば、本社は「しっかりやるように」と言うだけで、具体的な実際の作業の進め方を支社や現場に委ねていたところがあります。現場ごとに個別事情などがあるにせよ、まずは本社が基準値はもちろん標準的な作業手順を示していく必要があります。それを受けて、支社が個別事情などを鑑みながら手順を具体化し、現場が実際の作業を行っていく――つまり、それぞれの組織が担うべき役割をしっかり認識しなければならないということです。
そして、もうひとつの切り口は人です。本社にも担当役員や部長、支社や現場にも車両部の担当や現場長、助役といった役職があり、それぞれのポジションに応じた役割があるはずです。この「組織」と「人」という2つの軸によって改善事項の実効性を高め、同じような事案を二度と起こさないようにしていきたいと考えています。
また、人間である以上、時間の経過とともに危機意識が徐々に風化し、ともすると楽な方向に流れやすくなることもあると思います。そうした時に、たとえ部下という立場であっても「ダメなものはダメ」と言える職場風土や組織として風通しの良さが大事になります。そのような、いい意味でモノが言える職場環境づくりや心理的安全性の確保についても会社としてしっかりと整えていきますし、仮にどうしても直接的に言いにくい状況であれば、相談できる社内窓口がありますので、そうした仕組みもあらためて、周知していきたいと思っています。
今回の事案発生を受けて、社長直轄の組織である業務監査室もつくりました。もちろん、通常とは違った目線から業務内容を点検していくというアプローチも重要なのですが、その前に、日々の業務を担っている現場がいかに高い安全意識を持ち続けられるかが最も大事なポイントだと認識しています。
――「2024年問題」で貨物鉄道に強い期待が寄せられていた時期だけに、今回の事態に対して厳しい見方もあると思います。
犬飼 鉄道事業は何よりも安全が基本であり、安全が守られなければ鉄道という事業は大きく揺らぐのだということをあらためて痛感しました。JR貨物に貼られた「輪軸不正」というレッテルをいかに取り払っていけるか――。そのためには日々の積み重ねによって信頼を取り戻すしかありません。多少時間がかかるかもしれませんが、全社員一丸となって信頼回復に努めていきます。
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