カーゴニュース 2025年6月19日 第5348号
日用品卸と連携・協働、中間流通の底力を見せる
――1月には日用品卸のPALTACと物流における協働取り組みを開始すると発表しました。食品、日用品の“メガ卸”による異業種連携はどのような経緯で始まったのですか。
田村 食品業界ではメーカー同士の共同配送は古くから行われています。「食品卸同士が物流を共同化したらよいのでは」という考え方もありますが、難しい理由が2つあります。ひとつは、卸には「商物一体」もまだ残っているため、物流を共同化すると商流とのコンフリクトがどうしても起きてしまいます。また、食品卸同士は、季節波動や地域的な偏りもほぼ一緒ですので、物流を共同化しても相互補完になりにくい。それなら「食品以外の業種と協働すればよいのでは」と検討を進めてきました。PALTACと当社はドラッグストア、スーパー、コンビニなど納品先が重なっており、当社はスーパー、PALTACはドラッグストアがメインでそれぞれに強みがあります。お互いが持っているセンターを共同化・共用化できれば、リスクをシェアし、コストも抑えながら商売を伸ばしていける可能性があります。4月にキックオフし、分科会を設けて具体的な施策を検討しています。両社合わせて3兆円の商流規模となりますので、両社の融合はそれなりのインパクトがあると思います。連携・協働は2社に限定するものではなく、他の荷主とも取り組みを広げていく方針です。
――両社が連携・協働に至った最大の動機は何だったのですか。
田村 三菱食品もPALTACも一定規模を有している荷主ですので、従来は自分たちにとって理想のサプライチェーンや物流体制を追求し、「自己完結的なサプライチェーン」となっていました。ところが「2024年問題」をはじめ、全体のマーケットがシュリンクしていく中で、効率化を進めていくとなると、「オープン化」が必然になってきます。自前主義の「閉じたサプライチェーン」から他社と連携・協働する「開かれたサプライチェーン」への転換が求められます。連携・協働するにあたっては、最初は、当社と同じような問題意識を持ち、業態、ロット、規模感が似ている荷主と組んで、「準オープン化」から始めて、だんだん範囲を広げていく方が現実的だと考えました。
――それにマッチしたのがPALTACだったということですね。一方で、異業種である食品と日用品の物流の共同化において克服すべき課題はありますか。
田村 まずよく言われるのは、においの問題です。「においの強い洗剤と食品は一緒に運べない」と最初からあきらめてしまいがちですが、においの問題はおそらく技術的に解決できるものです。最初から「ノー」ではなく、どうしたら実現できるかを考えるべきです。また、荷主同士が連携・協働する時に、「同じような可視化の仕組みを持てるかどうか」が重要なポイントになります。トラックや倉庫のスペースを融通し合うにしても、両社のデータのメッシュが異なっていると、いくらマッチングしたくてもできません。
なお、最大の障害となるのは「食品と日用品業界は一緒に組めない」という思い込みです。まずは社員のメンタリティを変えなければなりません。産業セクター間に壁があるように見えても、それは私たちがそういう色分けをしているだけであって、扱っているのは食品であれ日用品であれ、トラックはトラック、倉庫は倉庫です。今回の協業に対しては小売からも期待を寄せられており、「中間流通の底力を世間の皆様に見せたい」という思いがあります。
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