カーゴニュース 2025年9月9日 第5369号
労働安全衛生規則の改正により、2025年6月1日から職場における熱中症対策が義務化された。気象庁予報では9月以降も全国的に気温の高い状況が続き、物流現場の熱中症対策は“長期戦”となる。日本製紙グループの桜井(本社・東京都台東区、板谷和徳社長)は、トラックの荷台の天井に貼ることで遮熱効果が得られる遮熱粘着フィルム「CoolCal(クールカル)」を販売。荷台でのドライバーの作業環境を改善するアイテムとして注目されている。
短期間で施工、未施工車と約10℃の温度差
「クールカル」は熱線を効率的に反射する機能性粘着フィルム。塩ビフィルムへ均一に練り込んだ遮熱顔料が太陽光の熱線を反射し、車体の温度上昇を抑制する。遮熱塗料の場合、プライマー処理や乾燥、重ね塗り、乾燥といった工程を要するのに対し、「クールカル」は洗車から施工まで約1日と短期間で、トラックの稼働への影響が少ない。
大手低温物流会社のトラックや、大手総合物流会社グループの宅配用トラックなどで導入実績がある。従来、庫内の温度上昇を抑えることによる品質管理強化の観点で導入されるケースが多かったが、近年、酷暑が続いていることから、ドライバーの労働環境改善を目的とした導入も進んでいる。
常温トラックで、天板に「クールカル」を施工した車両と未施工の車両の温度を計測、比較したところ、晴天時には大きな遮熱効果があり、架台天板で約10℃の温度差を確認。とくに初期温度の上昇を抑制できた。冷凍冷蔵車への施工では、月に2~3回洗車機で洗車する環境で使用しても、剥がれや傷などは見られなかった。
自然の力を利用し倉庫内の温度上昇を抑制
桜井ではトラックだけでなく、倉庫や工場向けの遮熱ソリューションも提供している。「冷えルーフ」は自然の力を利用した遮熱・断熱システム。金属折板屋根に施工することで日射による室温上昇を抑えることができ、夏は遮熱、冬は保温・結露の緩和に効果を発揮。雨音の低減、屋根の保護、屋根材と熱伸縮による音鳴りの低減にも寄与する。
「冷えルーフ」で「日陰」を作り出すことによって、屋根表面に太陽光が直接当たらず、シートと屋根の間の空気層が熱伝導を抑制。風がシートの通気穴を吹き抜けていくことで空気層の熱ごもりを解消する。その結果、屋根面・天井面の温度上昇を低減し、室内に伝わる輻射熱を抑制。未施工面と施工面の温度差は屋根表面で約20℃あり、庇にも施工可能だ。
輻射熱を反射するアルミシート「冷えウォール」は、屋内に施工するため金属折板屋根やスレート屋根、陸屋根など屋根の種類を選ばず様々な建屋に対応。強い西日が当たる壁への施工にも適している。輻射熱を最大で97%カットし、不燃材認定も取得している。
厚生労働省が発表した24年の 職場における熱中症による死傷災害の発生状況は、運輸業の熱中症による死傷者数は186人(うち死亡が3人)となり、建設業、製造業、その他に次いで多い。20年~24年の累計では運輸業は14%を占める。熱中症対策の義務化も踏まえ、ドライバー、倉庫作業員の職場環境の見直しが求められている。
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