カーゴニュース 2025年9月11日 第5370号
2024年5月に公布された物流改正法により、26年4月から一定規模以上(年間貨物取扱量9万t以上)の荷主企業は「特定荷主」に指定され、「CLO(物流統括管理者)」の選任が義務付けられる。一方で、該当する荷主企業では、いまだ制度への理解が進んでいない現状がある。こうした中、東京流通センター(TRC、本社・東京都大田区、有森鉄治社長)は8月1日、テナント企業の物流経営課題の解決を推進する新たな取り組みとして、「CLOサポートユニット」を発足。物流効率化ソリューションの提案や企業間のマッチング支援などを通じ、テナント企業の物流改革を包括的にサポートする。
テナント密着型の支援体制を構築
TRCは大田区平和島の一角にある約15万㎡の敷地で流通センターを運営。首都高速羽田線・湾岸線、環状7号線とのアクセス性に優れ、東京港大井ふ頭や羽田空港、JR貨物・東京貨物ターミナル駅などの重要物流インフラからも至近距離。加えて、東京モノレール「流通センター」駅から徒歩1分で、物流拠点として圧倒的な競争優位性を持つ。23年には新A棟が竣工し、今年4月に満床稼働となった。
「CLOサポートユニット」は、これまでTRCが行ってきたテナント企業に寄り添ったスタンスでの施設賃貸・運営管理をさらに進化させるために発足。14人のチームで、テナント企業やテナントの候補となる企業に対し、CLOの役割や選任の方法などの情報提供を行うほか、100社を超えるテナント企業に向け、物流施設の敷地の一角に本社を置き、オーナー・PM(プロパティマネジメント)部隊が常駐しているというTRCならではの特長を活かしたテナント密着型の支援を提供する。
同ユニットでは、テナント企業のニーズや特性を踏まえ、同社が開催するテナント交流会や夏祭りなどのイベントを通じて、最適な提携先とのマッチングや効率的な物流ネットワークの構築を支援。CLOの選任が求められる「特定荷主」以外の企業にも支援対象を広げ、物流コンサル企業やDX系のシステム開発企業などとも連携しながら、充実したサポート体制を構築する。
また、TRCが運営する物流TECHショールーム「TRC LODGE」を通じて、各種ソリューションの提案も実施。革新的な技術や知見を持つ企業を紹介し、テナント企業にマッチした業務効率化やコスト削減につながる物流ソリューションを提案する。このほか、TRCの物流施設に入居した際に利用可能となる物流に関する支援メニューを提案する。
物流拠点として新たな付加価値を提供
TRCでは希少な立地で物流拠点としての付加価値をさらに高めるため、物流業界が抱える社会課題解決に向けた取り組みを行ってきた。今年5月には「平和島自動運転協議会」を発足。現在までに計15社が参画し、TRC構内で自動運転に関する実証実験を実施している。また、レベル4自動運転トラックによる一般道走行を含めた幹線輸送の実現に向け、平和島での自動運転トラック一般道受け入れの検討もスタートした。
テナントのエンゲージメント強化にも取り組んでいる。昨年、クラウドサービス「Armadaテナントマイページ」を物流施設として初めて導入。各種申請や問い合わせ等のコミュニケーションをデジタル化し、テナント企業とPMやBM(ビルディングマネジメント)間のコミュニケーションをオンライン上で完結させることで、スムーズな情報の共有・蓄積を可能にしている。
「CLOサポートユニット」は、こうした既存の取り組みと合わせ、テナント企業やテナントの候補となる企業に新たな付加価値の提供を目指すもの。従来よりも高度かつ幅広い知識が求められるCLOを支援し、各企業の物流経営課題の解決に寄与していく方針。「一部の大企業を除き、多くの企業ではCLOの選任について、手探りな状況が続いている。まずは制度の周知や法律の解説から始め、段階的にセミナーなどを検討していく」(同ユニット)。
なお、TRCが立地する「南部流通業務団地」と定められた平和島は24時間物流拠点としての稼働が可能。立地面での競争力に加え、自社で施設を保有・管理しているため、「テナントとの長期的な関係性を重視している」(同)。「CLOサポートユニット」はこうしたTRCの強みを活かし、テナント、さらにはテナントの候補となる企業に対し各種支援を展開していく。
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