カーゴニュース 2025年10月7日 第5376号
東南アジア・中央アジア地域で物流網を展開
――御社では重点事業として「モビリティ(自動車関連ロジスティクス)」「サプライチェーンソリューション」「国際フォワーディング」「コンサルティング」の4つを掲げています。まず、長年実績のある「モビリティ」についてはいかがでしょうか。
田中 もともとは親会社の三菱商事が海外での自動車生産・販売事業を行うにあたり、その物流を担うところからスタートしました。タイ・インド・インドネシアの3ヵ所で事業を展開しており、昨年度は新たにフィリピンでも事業を開始しました。加えて、現在は他のASEAN地域の国でも新たに事業展開を計画しています。
国際情勢により撤退を余儀なくされましたが、以前はロシアにも拠点を置いていたため、中央アジアの物流会社と連携した物流網も有しています。中国から中央アジア、コーカサス地方、欧州までを複数の輸送モードを組み合わせた複合輸送により結ぶ「中央回廊ルート」は、複数国を跨いだ輸送となり注意点もありますが、鉄道やトラック中心の陸上輸送となるため、ロシアやスエズ運河を経由しない新しい物流ルートとして、BCPの観点からも注目を集めています。
――エンジン車からEV化の流れによって、自動車関連ロジスティクスの戦略に変化はありますか。
田中 EV車両の普及に伴い、車両本体やリチウムイオン電池の輸送も行っています。タイでは中国製のEV車両をキャリアカーで輸送するなど、三菱商事グループ以外の顧客にもサービスを展開しています。しかし、ヨーロッパをはじめ当初の想定よりEV車両の導入が進んでおらず、需要の変化を常に注視しています。
――日本の自動車産業は米国の関税政策の問題に直面していますが、物流面での影響はありますか。
田中 米国向け自動車輸送の取り扱いがないため直接的な影響はありませんでした。しかし、米国から別の地域へ向け先を変える荷主企業や、それを見越した船会社の航路変更など、物流の流れや配船は大きく変化しています。こうした影響を回避するため、細かく状況を確認し、輸送キャパシティの変化に対応しています。
“物・商一体”をテーマに支援事業を展開
――「サプライチェーンソリューション」では、モーダルシフト・DXなど持続的成長に欠かせない要素を組み合わせたソリューションを提案しています。新しいサービスも打ち出していますね。
田中 23年からフェリーを活用したモーダルシフト輸送サービスの「TODOCARRY」を開始しました。フェリー・RORO船を活用し、「トレーラーチャータープラン」と「少量貨物向け混載プラン」の2つを提供しています。国内での長距離トラック輸送に代わり、内航船を用いることで、トラックドライバーの大幅な拘束時間削減に貢献します。関東~九州間ではトラック輸送に比べてCO2排出量を約80%削減できました。現在は国内輸送に限定したサービスですが、今後は輸出入にも対象を広げ、国際海上コンテナをシャーシに乗せて、海上輸送できないかと検討しています。
物流オペレーションにかかわるソリューションについては、国内で保有している倉庫を利用して、ノウハウの蓄積や人材の育成も進めています。長らく庫内業務は作業会社に委託する形で行っていましたが、今年から一部を自前化し、人材の確保や現場オペレーションのノウハウを継承していく方針です。
商社系の物流会社として、“物・商一体”をテーマにした取り組みも進めています。近年はインバウンドの影響もあり、食品メーカーなどが海外販路を求めるケースが増加しています。そうしたメーカーに対し、現地で販売先や物流企業などを探索し、物流のみならず、商流の構築も支援しています。
――「国際フォワーディング」については、マーケットの競争が激しい中でどのような戦略を描いていますか。
田中 三菱商事グループ以外にも顧客を広げています。近年は半導体材料や半導体製造装置の物流に注目しています。半導体製造装置は輸送時における衝撃の吸収など高度な輸送技術が求められます。最先端だけでなく、旧世代の半導体製造に必要な装置の輸送も需要が旺盛です。運賃負担力のある貨物ですので、チャレンジする価値を感じています。
また、当社の国際フォワーディングは従来、海上輸送が中心で、航空輸送についてはやや弱いという面がありました。今後は多様な輸送モードに対応する中で、他企業との連携を視野に入れながら、航空輸送を強化していきたいと考えています。特に半導体関連は航空輸送のニーズも多く、対応の必要性を感じています。
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