カーゴニュース 2025年10月7日 第5376号

インタビュー
物流の枠にとらわれない事業展開を
三菱商事ロジスティクス
代表取締役社長
田中 鉄 氏

ノンアセット型ならではの発想でチャレンジ

2025/10/06 17:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 インタビュー

 ――近年力を入れている「コンサルティング」では、新しいサービスをリリースされていますね。

 田中 以前から、倉庫拠点での庫内オペレーションの改善や配送ルートの改善などのコンサルティング事業を行ってきました。最近では新たなサービスとして「CLOサポート+」を開始し、CLO設置義務のある企業に対し、背景の説明や体制づくりの支援などを行っています。私個人としてもJILSの企画推進委員のひとりとして啓蒙活動を行っていますが、まだCLOの要件や意義などの周知が進んでいないように思います。そのため、商工会議所などの業界団体側の取り組みと合わせ、企業ごとのニーズに沿ったコンサルティングを行っていくことが重要になると感じています。

 「Roboコンサル」については、当社では19年から倉庫でロボットを導入していることから、失敗事例も含めたロボット導入のノウハウを提供しています。三菱商事の子会社で倉庫向けのロボットのサブスクリプションサービスを手掛けているGaussyと連携するとともに、Gaussyが取り扱っていないロボットに関しても対応が可能です。

 また、「ロジスタ」と銘打ち、貿易実務の研修動画を販売する事業も開始しました。社内で研修してきたメニューを体系化し、初級・中級・上級と分けて動画化しています。現在人材派遣会社では貿易事務を行える派遣人材が不足しているため、人材派遣会社や物流企業からの引き合いが多くありました。

自社倉庫拠点でロボットを活用

「物流で壁をなくせ」、既存の仕事から新規事業を

 

 ――物流会社が教育事業まで手掛けるというのはユニークで、ノンアセットの会社ならではの発想だと思います。最後に、会社としてありたい姿についてお聞かせください。

 

 田中 2年ほど前から「POWER OF LOGISTICS」を社内向けのスローガンとして掲げ、「物流で壁をなくせ」をテーマに活動しています。当社はノンアセット型で事業を展開しているため、ハードの制約を受けることがありません。その自由さを活かし、商社系物流会社の発想を持ちながら、物流という枠にとらわれない事業展開を行っていきたいと思います。現在はAIをはじめとする技術の発展により、新しい事業への参入ハードルが低くなっているように感じています。そのため、「面白そうならやってみよう」という精神で新しいことへのチャレンジを社員に促しています。

貿易実務を動画で解説

 そのチャレンジについては、あえて「新規事業部」という形ではなく、既存の仕事をする中で生まれた新たな発想を新規事業という形で展開していく方針です。やはり「飛び地」で新しいことを始めるのではなく、既存の「型」があった上で、そこから踏み出していくという形が成功につながるのだと思います。その成功体験から、さらなるアイデアにつながっていくことを期待しています。実際に、「ロジスタ」などは社員のアイデアから始まった企画であり、チラシやWebページなども自社で製作しました。こうした流れを止めないためにも、若手社員との交流や積極的な意見交換を行っていきます。当社は過去に、「ロジスティクスのその先へ」というスローガンを掲げていた時期がありました。現在のスローガン「物流で壁をなくせ」の次のステップとして、「ロジスティクスのその先へ」を達成できるよう、皆で考えながら成長していきたいと思っています。

 

田中 鉄(たなか・てつ)

 1971年1月11日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部を卒業後、93年4月三菱商事に入社。14年7月三菱商事ロジスティクスアパレルソリューショングループ担当役員。17年4月三菱商事物流事業部長、22年4月同社タイヤ部長を経て、24年4月三菱商事ロジスティクス常務執行役員兼経営企画部長。今年4月から現職

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